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ポーション作り

 王子たちがこの町に来訪してから数日が過ぎた。

 あまり関わり合うことはないだろうと思っていたのだが、意外なことにシィルのそばにはマリナがよく寄ってきていた。



「僕のところに来てていいの?」



 王族ともなれば色々と責務があるのじゃないかと思ったのだが、マリナはにっこりと微笑んでくる。



「えぇ、大丈夫ですよ」



 本当にいいのかなと思いながら街の外へ行き薬草を採取していく。

 そこで意外なことにマリナもただの草と薬草の区別がつくようでいくつも採ってきてくれる。


 ただ普通のポーションに使う薬草ならこれでいいのだが、シィルにとっての『普通のポーション』に使用するのはかなり特殊なものだ。

 シィルはこれだと使い物にはならないかなと思いつつも、わざわざマリナが採ってきてくれたものだからとカバンの中にしまっておいた。



「あの……、私もポーションの作り方を教えていただけませんか?」



 期待のこもった眼差しを向けてくるマリナ。

 別に隠すようなことではないし、教えてもいいかな?

 わざわざこんなところに来て見てるだけというのもかわいそうだし、作るのに危険もない。……魔力暴発をさせなければ。

 それだけは一応聞いておかないといけないよね。



「マリナ様って普通に魔力を扱うことができますか?」



 するとマリナは口を尖らせて言ってくる。



「これでも王族なんですよ。魔力の扱いも完璧……とまではいかないですが、そこそこな自信はありますよ」



 自信たっぷりに胸を張るマリナ。

 そこまでいうなら大丈夫だろう。シィルは少しだけ考え、苦笑しながらいう。



「わかりました。では僕のいう通りに作ってくださいね」



 マリナが頷くのを確認してゆっくりと教えていく。




 ◇◇◇




 まずはどういった薬草がいいのかを説明する。

 しかし、マリナが持ってきた薬草はポーションに向かないものであったので、そこをさりげなく修正する。



「薬草はなるべく臭いのキツイものがいいよ」

「そうなのですね。例えばこれとかですか?」



 マリナが持ってきたのは強烈な腐った臭いのする草であった。



「そ、それは少し違うよ……」

「難しいのですね、ポーション作りって」



 そこで諦めてくれるかと思ったが、意外なことにマリナは楽しそうに薬草探しへと移っていった。



「これはどうですか?」

「うーん、それも少し臭いが違うね」



 そして、それなりに時間を掛けてようやくマリナはポーションに最適な薬草を見つけ出すことが出来た。ただし、時間はすでに昼前……。

 さすがにそろそろポーションを売りに行かないとダメな時間だ。


 シィルは嬉しそうに喜ぶマリナを見て、少し辛くなりながらも言わないといけないことなので口を開く。



「すみません、そろそろ僕はポーションを販売しに行かないといけませんので今日はこれくらいでいいですか?」



 相手は王女様……。嫌がってくるかも知れないと少し身構える。しかし、マリナの反応は意外とあっさりしたものであった。



「わかりました。今日のところはこれだけ持ち帰らせてもらいますね。また明日もここにきてもよろしいですか?」



 少し顔を伏せ、怯えながら聞いて来るマリナ。

 ただ。断る理由もないかなとシィルは小さく頷く。

 するとマリナは目を大きく見開き、本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。



「や、約束ですよ? また、今日会った時間に来ますからね?」



 何度も何度も確認した上でマリナは嬉しそうに町の方へと歩いていった。

 さて、僕もポーション売りを頑張ろう!




 ◇◇◇



 町の方へと戻って来ると珍しくギルド前には誰もいなかった。

 ま、まぁリエットもずっと店の前を掃除してるわけじゃないんだしこういうこともあるよね。

 なんか腑に落ちないながらもギルドの中に入っていく。



「お、お待たせしましたー!」

「遅いぞ。次はこっちのメニュー全てもってこい!」

「は、はいっ!」



 中には大柄の男たちが数人いた。椅子に座り、出て来る料理を食べている。

 ただ、問題はその量だ。

 テーブルの上には山のように積まれた料理。床にはたくさんの空き皿。

 料理長とマナだけでは人が足りず、ギルドの受付も手伝っているようだった。当然その中にはリエットの姿も――。



「あっ、シィル君! ごめんね、少し忙しいからあとでポーション売りに来てくれる?」



 リエットはそれだけ言うとシィルの返事も聞かずに去っていった。



「おう、お前はポーション屋か?」



 たまにシィルたちポーション売りのことをそう呼ぶ人がいる。

 しかし、そういった人は大抵田舎から出て来た人とかそう言う人たちで、町に住んでいる人は使う言葉ではなかった。



「は、はい、そうですけど……」



 少し強面顔で髭面の男たちに声をかけられ、少し上ずった返事をしてしまう。

 しかし、男たちは何が気に入ったのか、シィルの肩を叩き、大声を上げて笑っていた。



「そうかそうか、これからも頑張ってくれよ」

「は、はぁ……」



 もしかしたら知り合いにポーション売りの人がいるのかもしれない。

 ただ、そんなに悪い人じゃないようだ。

 シィルは少し頭を下げるとそのまま冒険者ギルドを出ていった。

総合評価15,000になりました。たくさんの応援ありがとうございます。

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