表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/86

報告

誤字修正しました。

 エリーの家がある貴族街へとやってきた。

 ここには一体何部屋あるのか考えもつかないような豪邸がいくつも建ち並んでいる。街道も街灯と綺麗に並べられたタイルが敷き詰められ、高級感あふれる佇まいであった。

 その中でも特に大きな屋敷、そこがエリーの家であった。



「さすがにここは気が休まらないなぁ」



 少し早足でまっすぐエリーの家へと向かう。

 そして、たどり着くとノッカーを叩き人を呼ぶ。



「はい、どちら様でございますか?」



 中からは執事のリングリッドが出て来る。



「おや、シィル様でございましたか。こちらにどうぞ。すぐに旦那様をお呼びしてまいりますので」



 そういうとそのまま応接間へと案内される。

 柔らかなソファーと高級そうなテーブル、そして、壁には男の人の肖像画が何枚も掛けられていた。

 そこでくつろいでいるとメイドさんが飲み物とお菓子を持って来る。

 飲み物の方は冷えたレモン水。お菓子はクッキーだった。

 初めは緊張して手もつけられなかったそれだが、慣れて来ると何枚も食べてしまう。



「よくきてくれたね。今日もポーションを売りにきてくれたのかい?」



 手を広げ歓迎してくれるミグドランド。



「いえ、それもありますが今回はギルド長に頼まれて別用件もあります」

「ふむ、王子様たちがくることかな?」



 やはり事前に知らせてあるようだ。



「はい、そうです。念のために伝えておいて欲しいと」

「あいわかった。ただ、王子様たちがその……少し……なんというか……国王様は聡明な方なのだがな」



 王子たちについては言葉を濁すミグドランド。

 さすがに会ったことのないシィルは濁されてしまうとどんな人物かも想像できない。そもそも会うこともないけどね。



「とりあえずお伝えいたしました。あと、これがポーションです」



 カバンからポーションを一つ取り出す。すると先ほどまでの深刻な顔から一転、嬉しそうな表情を浮かべてくる。



「それでは僕は失礼しますね」



 ミグドランドから銀貨一枚を受け取ったシィルは館を出ていった。




 ◇◇◇




「次はアランさんたちだけど……、どこにいるかわからないな」



 いつも唐突に現れる。多分今回も名前を口にしたら出てきてくれるのじゃないかという期待がシィルの中にあった。しかし、今日は誰も現れなかった。



「あれっ、おかしいなぁ? いつもならここでアランさんが出てくるのに?」



 まぁ彼らもSランク冒険者だ。忙しくしてる方が普通だよねと納得することにした。


 あとは……ポーションを大量に作らないといけないのか。それには瓶が足りないな。

 シィルはまず瓶を扱っているガラス屋へ向かうことにした。




 ◇◇◇




 町の中央から少し北に行った先……、大通りに面しているところにガラス屋はあった。

 店内には色とりどりの美しい瓶などが置かれている。

 ただ、入れるものは一番安いポーション……ということもあってシィルが購入するのは安価で中身がはっきりと見えない透明ではない瓶ばかりだった。



「すみません、いつもの瓶を百本ほど欲しいのですけど」



 お店に入るとカウンターに座るおじさんに言う。しかし、店内にはそれほどの量の瓶は置かれていなかった。



「百本となるとすぐには無理だ。時間をいただくことになると思うがそれでもいいか?」



 おじさんは聞いてくるが、さすがにそれほどの時間もあるわけでもない。

 シィルは少し思い悩む。

 多少高くなるが、どんな瓶でもいいから百本揃えてもらうか、それとも時間がかかるけど、いつもの瓶をまつか……。


 最終的にシィルが出した結論は瓶ができるのをまつ……だった。別に明日に出さないといけないわけじゃないし、他の素材も取りに行かないといけない。

 そう考えると今すぐにもらったとしても荷物になるだけだ。



「わかりました。残りはできたらもらいに来ますので、先にあるだけもらえますか?」

「あぁ、なら三十本で銀貨三枚だ。でも、これだけの量を持てるのか?」



 確かに買ったはいいけど、瓶三十本となるとかなりの量だ。今のカバンにはせいぜい十数本くらいしか入らない。



「ごめんなさい。一度半分の瓶を宿に置いて来ますので取り置きしてもらってもいいですか?」



 どうすることもできず、シィルはガラス屋と宿の往復を繰り返すのだった。




 ◇◇◇




 瓶を運び終えたシィルは今度は薬草と水を採りに来ていた。ついでに作れる数だけここで作っていこうと素材を広げてポーションを作る。



「あれっ、それはポーションですか?」



 作っている最中に声をかけられて一瞬手元が狂いそうになる。しかし、なんとかポーションを作るとシィルは声をかけて来た人物を見る。

 少し髪の先端が癖っ毛になっている薄い茶色の髪の少女がそこにいた。

 服装はこんな場所に似つかわしくないドレス服で、その胸元が強調された服はシィルにとっては刺激が強すぎた。

 しっかりと出た胸とは裏腹に顔は童顔でおそらくシィルと同じくらいの年だろうと想像できる。


 ただ、今まで見たことのない少女だ。

 少なくともシィルがこの町で見かけたことはなかった。



「えぇ、今ポーションを作ってるんですよ」

「あっ、ごめんさない……。作成中に声をかけるのはマナー違反ですよね」



 すぐに謝ってくる少女。しかし、そのあとは目を輝かせながらシィルのポーションを眺めていた。そして聞いてくる。



「他の……、他の薬は作られないのですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ