仲間集め
一部誤字を修正させていただきました。
シィル君が勝てばマナのギルド入り……→マナが勝てばマナのギルド入り……
「そうよ、あなたよ! あなたでも冒険者になれるのなら私でもなれるわよ!」
少女はバシッとシィルに指さしながら言ってくる。
第一、自分は冒険者じゃないのに……。
シィルがそのことを伝えようとした時にギルドの中からライヘンが出てくる。
これでこの場は収まるだろう。
ホッとしたため息をつくシィル。しかし、それはライヘンの言葉で吹き飛んでしまった。
「勝負!? いいね、それ。ただ、冒険者らしくルールを決めるべきだね。その辺りは私に任せてくれ」
胸のあたりをどんと叩くライヘン。その後、シィルにグーのポーズを取ってくるが何がいいのかわからない。
シィルはただただ唖然としてその様子を眺めていた。
◇◇◇
それから少し悩んだ後、ライヘンが決めたルールはこれだった。
まず、冒険者らしくパーティを組むこと!
これは確かに頷けることであった。基本冒険者は個人では動かない。何人かでまとまってパーティで動くことがほとんどだった。
そう考えると個人戦よりパーティによる戦いになるのはなんら不思議なことではなかった。
次に、目標物は依頼で決めるらしい。
同じ依頼を請け負って先にこなした方が勝ち……。
わかりやすいと同時にこれならシィルにも勝ち目があるとホッとしていた。
「ルールはこんな感じでいいか? そして、マナが勝てばマナのギルド入りを認める。逆にマナが負ければギルド入りは諦めてもらう」
それを聞いてマナと呼ばれた少女は小さく頷いた。
「ふん、マナが負けるはずないでしょ!」
どこまでも強気でいるようだ。ただ、こんな少女相手に難しい依頼は選ばないよね?
シィルはなるべく簡単な依頼で……という気持ちを込めた視線をライヘンに送る。すると、ライヘンもわかったようで一度頷いた。
「それでは依頼は明日に発表するとしてそれまでにパーティメンバーを決めてくれ。一応人数は四人までだ。あとシィル君は少しだけ残ってくれるか?」
「わかりました」
そして、マナは急いでメンバーを探しに街へと向かっていった。
◇◇◇
「すまなかった……、あの子に規定の歳まで冒険者を諦めてもらおうとしたらあれ以外に手はなかったんだ……」
シィルとライヘンだけになるとすぐにライヘンは頭を下げてきた。
「あれ以外って僕はそもそも冒険者じゃないんですよ? ただのポーション売りにそんな依頼がこなせると思ってるのですか?」
ここになら自分以上に頼りになる冒険者たちがたくさんいる。彼らの力を借りればなんとかすることくらい簡単ではないのだろうか?
「いや、勝負を確実なものにしておきたかったんだ。君ならこの町の最高の冒険者である彼を誘えるだろう?」
最高の冒険者と言われ、シィルが思いつくのは一人しかいなかった。
『赤い星』のアラン。Sランクの彼が力を貸してくれるのなら何もいうことはない。
問題があるとすれば誰がその力を借りるか……と言うところだが、ここ最近彼と親しいのは間違いなくシィルであった。
「わかりました。アランさんに声をかければいいのですね」
「頼む。報酬の方はギルドの方で支払うと伝えてくれればいい」
たった一人の少女のためにどうしてそこまでするのだろうと疑問に思ったが、ライヘンはもう話は終わったと言わんばかりに何も答えてくれなくなる。
「わかりました。では僕も行きますね」
ライヘンに一礼だけするとシィルも町へ出ていった。
◇◇◇
さて、アランを誘うと言ったけどどこにいるんだろうな?
シィルから会いに行ってるわけではなく、いつもアランの方からやってきていた。なのでアランがどこに住んでいるかとかも一切知らなかった。
時間があるならそのうち向こうから会いにきてくれるだろうけど、今回はあまり時間がないからなぁ。
「どうしたんだい? 何か思い悩んでるみたいだね。僕でよければ相談に乗るよ?」
「そうですね、実はアランさんが……って、アランさん!? ど、どうしたのですか?」
どうやって会うか悩んでいる間に突然現れるアラン。
それには流石のシィルも驚きを隠しきれなかった。
「いや、どうしたってシィル君が悩んでるみたいだったからね」
確かにそれもそうか……。
シィルは大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着けると当初の目的を果たすことにする。
「実はアランさんにお願いがあるのですよ……」
「よし、引き受けよう!」
即答するアラン。
「いえいえ、内容を聞いてから判断してくださいよ?」
「そ、それもそうだな……」
少し早まった返事に少し驚いてしまう。
そして、シィルはアランに先ほどあったことを説明する。
「なるほどな」
「どうして冒険者でない……ただのポーション売りの僕に言ってきたのかはわかりませんが」
「その理由は簡単だな。多分ギルド長は冒険者でないものに負けるようならさすがに冒険者にすることはできない……という方向へ話を持っていこうとしてるんだろうね。そこで冒険者でなく、かつ、信頼できる君に頼んだということだね」
信頼できる……は言い過ぎかもしれないが考えてみるとそうかもしれない。ただのポーション売りに負けた……となると諦めがつくか。
シィルは腕を組みうんうんと頷いた。
「それで力を貸してくれますか?」
「あぁ、お安い御用だよ。それにこの件はどちらかといえばギルド長の依頼みたいなものだな。それならあと二人も僕の仲間に聞いてみようか」
「お願いできますか?」
Sランクの彼らが手を貸してくれたならまず負けることはないだろう。
しかも残り二人にも話を聞いていてくれるならこれでパーティを集める必要もなくなる。
少し安心したシィルは何度もお礼を言う。
「いや、気にしなくていいよ。僕と君の仲じゃないか」
片手をあげて去って行くアラン。
あと二人の勧誘については彼に任せて、シィルは一人ポーション売りに戻っていった。




