3話ー遺跡
朝の食事を取ったあと、俺は武器屋へ行った。昨日の晩のように、自分のステータスを上げるための武具を買うためだ。
「強奪」のいい点、それは、武具を持ち歩く必要がない点だ。俺が、現実世界にいた頃にしていたゲームでは、道具や武器がどこかへ収納されるということが起こっていた、が、もちろんこの世界でそんなことはない。まぁ、辞書によると、空間魔法の一種でそういうのがあるらしいが、現段階の俺には、関係のないことだろう。
武器屋では、いくつかの武器、防具を見繕った。その次俺は宝具屋へ向かった。「宝具」はステータス上昇の付与効果持っているアクセサリーのことだ。
俺が買った宝具、それはほぼ、運上昇に関係するものだ。何個かは体力に関係するものだけど。「強奪」を活かすには何よりも運は必須なのだ。
その間俺は、店の店主から情報収集もおこなっていた。俺が分かったことはこんなところだ。
一つに、この町の名前は「クロンドアース」。
二つに、この町の一番可愛い女の子は、道具屋の娘。
三つに、この町の近くには、地下遺跡、並びに森等の、低級魔物の住処がある。
四つに、この町にギルド支部等はない。ギルドは、この町から数十キロ離れた町に、支部がある。
五つに、鍛冶屋の店主が遺跡に行ったきり、帰ってきていない。行ったのは3日前とのこと。
六つに、1ヶ月後、収穫祭があるとのこと。
ふむ、どうでもいいのも混じっているが、中には重要なのもあるではないか。(二つ目とかw)。まぁ、冗談は置いておいて、俺に取っての重要案件はないな。鍛冶屋の店主は、心配っちゃ心配だが、隣町のギルド支部までもうすでに連絡入れているらしいし。大丈夫だろう。
ということで、俺は宿屋へ帰った。察しの通り、今から強奪祭りだ。
全て強奪し終えたのは、4日後のことだった。初めの剣が30分ほどだったのに対し、他のは平均3〜4時間かかった。途中マジで何度もやめたくなった。最初のは、ビギナーズラックというものだったのだろう…。
そして俺のステータスはこうなった。
御堂 つるぎ 17歳 経験値あと50
職業.村男
Lv.3
体力.100/100(+0)
魔力.10/10(+0)
攻撃力.250(+0)
防御力.250(+0)
素早さ.320(+0)
運.600(+0)
固有スキル.強奪、鑑定
まあまあだな。村男の平均ぐらいかな。運は別格だが。魔法は一つも覚えていないので、魔力はどうでもいいだろう。
というわけで、俺は実戦に出ることにした。向かうのは、地下遺跡だ。
その前に、道具屋による。回復薬や松明、ロープなどの品を買う。用心するに越したことはない。その時、カウンターの横に折れた剣が一本あることに気づいた。不思議に思い聞いてみる。
「これどしたの?」
「娘のよ。あの子、冒険者になりたいんじゃないかしら。」
女将が言うには、今日もどこかに向かったらしい。
俺は道具屋を後にし、町を出た。
宿を出た時から、胸に引っかかっているものがある。どうしてこう思ったのか、それすらわからない。でも、一つだけ言えることがある。今日、あまりいいことは起こらないだろう。
地下遺跡に着くまでに、3匹のスライムを倒した。ステータスが上がっているせいか、難なく倒すことができた。
地下遺跡に入る。ちらほらみえるヒカリゴケのせいか中はほの明るく、松明がなくても、歩くことができそうだった。でも、用心のため松明に火をつけておく。
遺跡に入って1時間ほどが経過した。階段を2つ降りて、地下3階にきた。どういうわけか、未だ魔物と遭遇していない。そのことが、より一層、俺をもやもやとさせる。
そんなことを考えながら、歩いたせいで、警戒がおくれた。小さな蜘蛛型の魔物が襲いかかってきた。
まずい、そう思った時には、もう遅かった。左腕に噛み付かれる。
「うっ。」
痛い、現実世界じゃ味わうことのなかった痛み。いたさを通り越して熱くなってくる。
蜘蛛はそのまま腕に噛み付いたまま離れない。
俺は余っている右腕で、半狂乱になりながら蜘蛛を殴る。そのせいで、松明は地面に落ち明かりが消える。殴ったお陰か蜘蛛は腕から離れ距離を取る。そしてそのまま闇に隠れた。
暗さがより一層俺を恐怖させる。どこから襲われるかわからない。やばい、まずい、そんな感情が押し寄せてくる。
「くそっ。」
声に反応したのか、蜘蛛がまた襲いかかってきた。壁づたいに走ってき、飛びかかってくる。俺は、集中していたおかげで反応できた。
「おらぁー。」
飛びかかってくる蜘蛛に対し、カウンターでパンチが当たる。
グシャ、と嫌な音を立て、蜘蛛は潰れた。そして起き上がってくることはなかった。
はぁ。緊張が解き放たれてため息が出る。
俺は回復薬(小)を飲みながら考える。辞書によると、この遺跡「ボッカス遺跡」で出る魔物は、蝙蝠型、ネズミ型、虫型だと書いていた。しかし、今出てきたのは蜘蛛型。本来出るはずのない相手。少しずつ俺の中でパズルのピースが組み合わさっていくような気がした。
死んだ蜘蛛に手を当て「強奪」を行う。
1時間ほどだった時、蜘蛛の防御力が手に入った。プレートを見ると、元より200プラスされていた。
そして、そのまま「強奪」を続けようとしたその時だった。
「キャーーー!」という悲鳴が聞こえてきた。俺は急いで立ち上がり、その声の聞こえた方へと向かって走り出した。
俺は、胸につっかえていたものの正体がわかった。
遺跡で行方不明になった鍛冶屋、道具屋の娘の折れた剣、そして、遺跡内部に魔物が少なく、本来出るはずのない魔物がでたこと。これらの原因が、遺跡に強い魔物が新しく住み着いたからだとしたら…。
突き当たりおれは、大きな部屋に出た。
倒れている少女、その隣にいる大きな蜘蛛型の魔物
それらは、おれの予想が正しいことを示していた。
「まじいな。」
声が漏れる。明らかにおれより強い魔物。そして、その傍らには、おれがさっき苦労して倒した蜘蛛型の魔物が何匹もいた。
少女がおれに気づき、叫んだ。
「逃げて!」
ふっ、そうしたいところだが、それは無理な相談だ。ここで逃げたら男がすたる。
おれは雄叫びをあげ、蜘蛛の群れへ突っ込んでいった。
「おおぉーーー!!」