2話ー強奪
貰った麻袋の中には、辞書のような本、地図、怪しい液体、金貨が入っていた。この世界の物価の相場は知らないが、この袋の中には、十分な量の金貨が入っていた。
そして、辞書のような本。これは、ガイドブックだった。俺のため、と言うよりは、むしろ、あの女のため、と言ったほうがしっくりくるものだった。
書かれている内容は、彼女が俺に説明すべき内容、その手順、あとは、この世界の基本的事柄だった。きっと、彼女は仕事を放棄したため、申し訳程度に置いていったのだろう。特にありがたかったのは、この世界における魔物の情報、スキル等の解説だった。ちなみに、袋に入っていた液体は、回復薬(小)だった。
そしてある1つの事実が判明した。この世界における、初心者冒険者の各種の平均ステータス、それはなんと、500〜600といったところで、村男でさえ、250〜350近くはあるということだった。俺はかなり雑魚い。
しかし、俺の唯一のスキル、「強奪」のことについては、なにも分からなかった。まぁ、初めから全てがわかるというのは味気ないので、特段ショックというわけではない。
嬉しい誤算、それは、地図が魔法の地図だったことだ。現在地が示されるほか、拡大、縮小が可能だった。今いる場所から、ほんの数キロの場所に町があるのも、いいニュースのうちの1つだろう。
ここにいても特にすることもないので、町に向かって、歩き出す。
町に到着する頃には、日は暮れかかっていた。途中であった魔物ーまぁ、主にスライムだがーにてこずったからだ。ちなみにレベルは1つ上がって、3になった。
俺の地図は本当に優秀で、町の中すらマッピングされていた。なので、俺ははじめに宿屋に向かうことにした。
宿屋に着いて、部屋を取り、荷物を置いて、俺はある場所へ向かった。それは、道具屋だった。辞書によると、この世界には、物やスキルを鑑定する魔法があるらしく、宿屋の店主に使える人を聞くと、それが道具屋の女将だったというわけだ。
歩くこと2分。俺は道具屋についた。中に入る。そこは薄暗く、左右の棚には色々なものが置いてあった。部屋はさほど広くなく、だいたい6畳といったところだ。奥のカウンターには女が1人いた。
「いらっしゃい。何か用かい?」
「あぁ、宿屋の店主に聞いたんだが、あんたが鑑定してくれるって。」
「金はあんのかい?銀貨10枚でどうだい?」
「金貨一枚で銀貨何枚なんだ?」
「100枚だよ。」
おお!予想以上に俺は金持ちだったようだ。町に入って、なんとなくだが物価がわかった。だいたい部屋一泊食事付きで30枚の銀貨、食料は一食分がだいたい銀貨5枚といったところか。そして俺は今、30枚の金貨を持っている。
「あぁ、足りるよ。スキルの鑑定を頼む。」
「わかったよ。」
そういって女将は俺の頭に手を当てる。少ししたら、手を離した。ん?もう終わったのか?さすが魔法だぜ。などと思いを巡らす。
そして女将が言うには
ユニークスキル「強奪」…対象から物、スキル、ステータスをごく稀に奪う。対象は生物、または、効果付与の道具に限る。手で直接触れることで効果発動。
と言うものだった。えっ、これ強くない。スキル、ステータスを奪えるってやばくない。などと思っていると、
「あんたすごいじゃないの。いいスキルを持ったね。長くこの商売やってるけど、こんなの初めて見たよ。」
と女将が声をかけてくる。やはり、こちらの人から見ても、「強奪」はいいスキルらしい。しかし、それに負けず劣らず「鑑定」も欲しい。
と言うわけで、女将に聞く。
「「鑑定」のスキルどうやったらおぼえれんの?」
「はーはっはっ!ついてるね、あんた。今ちょうど、「鑑定」のスキルの書があんだよ。そうだね…金貨5枚でうってあげるよ。」
「スキルの書ってなんだ?」
「一度だけ使用可能の巻物さ!これを使うとね、その巻物固有のスキルを覚えることができるのさ!」
金貨5枚、決して安い額ではない。でも、「鑑定」が手に入るなら、必要な投資というものだろう。
「おーけい、買おう!」
「まいどありぃ。お代は金貨5枚に銀貨10枚だよ。」
それを払って道具屋を後にする。そして宿屋に帰る。
部屋に入ると、プレートを出して、溜まっているスキルポイントを割り振ることにした。100ポイント溜まっていたので、その内訳は、体力40、運60とすることにした。
というわけで、俺のステータスは
御堂 つるぎ 17歳 経験値あと50
職業.村男
Lv.3
体力.50/50(+0)
魔力.10/10(+0)
攻撃力.15(+20)
防御力.15(+0)
素早さ.10(+0)
運.160(+0)
固有スキル.強奪、鑑定
となった。ちなみに、運だけで見ると、初心者冒険者の平均値は100〜120である。まぁ、そりゃ運にはポイント振らないわな。なんて思いながら、剣を取り出す。そして、手で触れ、
「強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪、強奪…」
と、ひたすら繰り返す。そして、30分くらい続けていた時、体に違和感があった。慌ててプレートを見てみると、攻撃力の部分が、35(+0)、となっていた。そして、武器を鑑定すると、
使えない木の剣…攻撃力.+0
となっていた。
「やったぜー!やっほーい!」
スキル「強奪」に成功したのだ!
そうして俺はその日、ぐっすりと眠りについた。いつかは、最強になってやる。そして、魔王を倒す。そう心に誓って…。