紙飛行機 -airplane is in the dark-
紙飛行機は簡単に折れますけれど、鶴はなぜだか今になっても折れません
「いつだってそう。持つものは持たざる者を蹂躙するもの」
「……どうして?」
泥と汚臭にまみれたテントの中で、二つの影が寄り添う。
「だって、持ってるものをとられたくはないでしょう?」
「そうだね、ほかの人にとられるのは嫌だ。でもね、僕たちは取ろうとしたりなんかしないよ」
「そうね、でも人のことはわからないじゃない?」
「そっか、僕もあの人怖いもん」
そういって指さした先には大きな肉の塊が……否、四肢をもがれた人の姿があった。
「腕も脚もとったのに?」
「でもさ、まだ頭があるんだよ?噛まれたら痛いよ」
「そうね……じゃあ頭もとっちゃおうか」
「いいの?」
「いいわよ、いい子だもの」
「やったぁ!じゃあ取っちゃうね」
そう言って小さな影が近寄る。
「ぃぎぃいぃぃぃぃっ!!!くるなぁぁぁあっ」
肉の塊と化した男は悲鳴を上げた。
四肢をもがれているが縫合がされていまだに生かされいるのだ。
「おじちゃん、うるさい」
「いやだぁぁぁいやだぁぁぁっ!」
泣き叫ぶ男を見下ろしながら手近にあった棒を持って男の腹に振り落とす。
「ぅぎぃぃぃぃいぃっ!!!」
「うるさいっ、うるさいっ」
バシン、バシンと男に棒が打ち付けられる
「はぁっ……はぁっ」
「あとは首をとっちゃうだけね、頑張って」
「……うん、頑張るよっ」
小さな影は棒を放り捨てると、男の顎を蹴り上げた。
男は、白目をむいて昏倒するが、小さな影は首に足を落とす。
ドスッ、ドスッ、と何度も足を落としていくと、男の首の骨がメキッと音を立てて砕けた。
もう一人の影は、頭をつかむと一気に引き抜いた。
名状しがたい音がして、首と胴は離れた。
「ありがとう。僕の力じゃ取れなかった」
「いいのよ、勝手にとってごめんね」
「ううん」
二人は微笑むとまた先ほどのように寄り添って隅に座る。
そしていつしか微睡んだ。
鶴はなぜだか今になっても折れません、紙飛行機は簡単に折れますけれど。