06 那由多百々の夢
眠っている途中で目が覚めて、ぼんやりと天井を見る。身体は熱いけれど、毛布を掛けていても寒気がして、あちこちが痛くて起きることが出来ない。
──このまま寝ていても、今の状態が改善されることがは無いことは、よくわかっている。
那由多百々は荒い息を吐いて、諦めたように目を閉じた。
──また、どこか遠くに行く夢が始まる。
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桜色の雲が出て来たばかりの白い月を覆った。
その直後に、有ってなかったような足下が崩れて水底の中に沈む。
頭の上を魚が泳いでいて、真っ黒な水の中かと思ったら、空からの月の光で照らされると紫色が濃くなっているみたいだった。
海藻のように沢山の彼岸花が咲いていて、変な世界──
帰り道はわからないけれど、ここから帰らなければと考えたときに、誰かがこちらを見ているような気がして立ち止まるけれど、その誰かは、自分が見渡せる範囲にはどこにもいないから、遠くにいるのだろう。
思えば道らしい道も見当たらなくて、ここは歩いて進むべき所ではないのかもしれなかった。
寝転がって、空を泳ぐ魚とおぼろげな月を見る。
このまま砂のようなものに埋もれていきそうで……。
遠くから音が聞こえた。
なんの音かはすぐにわからなかったけど、誰かの声だと気付く。
「……?」
でも、起き上がった視線の先には誰もいなくて、冷たい雫が頬を伝い、慌てて服の袖で拭う。
涙が、こんなに冷たいものだとは思わなかった。
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不意に涙を流して、その後に目を覚ます。
起き上がると何故か濡れたタオルがいつの間にか額の上にあって、首をかしげる。頭の中はぼんやりとしていて、深く思考出来ず、まだ眠りは必要なようだった。