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03 保険医の眠れない夜

  ネズミでも夢を見るらしい。

 花の蜜をすすっていたり、仲間がネズミ取りで胴体を半分に切られたりしたという光景を追体験させられ、気持ちが悪くなって目が覚めた。

 どこかでネズミが寝ているのか?

 げっ歯類には夜行性の奴が多いと聞いたことがあるが、何が悲しくてこんなものを見なけりゃならなかったんだ、俺は。

 朝になったら必ず駆除し……それこそ、一匹残らず駆逐してやる!

「ほんと……最悪」

 特に起き上がることも無く、額に腕を当てて目を閉じながら呟く。

 つい最近までハイソなマンションに住んでいたけれど、あそこはセキュリティはしっかりしているのに、住人のプライベートはうるさかった。特に夜中。

 うるさいと言うのは、聴覚からの騒音的な意味ではなく、精神的な騒音が酷かったのだ。例えば、唐突に悲しくなった奴が鬱々と作業的に自傷を行ったり、をぎとぎとした不倫中の情事や、監禁する側の病的な思想、抵抗から屈服する監禁される側の心理状態が見えたり……。

 ちっともリラックス出来ないし、通報こそしなかったけど監禁は犯罪だし、入居して半年とたたずに引っ越しを決意した。

 そして俺は今、人里から離れた古い一軒家に住んでいる。

 補足しておくが、引っ越しはこれが初めてではなくて、通勤が可能な範囲で住む所をちょくちょく変えていて、まぁ、なんだ、この前だったかに不動産屋にまたお前かと言われた。お互いに複雑な表情を浮かべていたのをよく覚えている。

「ああ、すっかり目が覚めちまった」

 ネズミのせいで起こされ、さらに余計なことを思い出していたのが原因だ。

 思考を違う方向に切り替えて、そうだ、例えば自分の能力の可能性についてでも考えていれば眠たくなるだろう。

 起きる原因にもなった精神感応については、動物(虫以外の)ならなんでも読めること、範囲的にはビルの一階から十階くらいの高さと、平面だったら結構広いところにいても感じ取れる。

 もう一つの、空間転移能力については……試すとしたら移動範囲の限界か、どこまでいけるんだ、俺は。小旅行のようなことも出来るかもしれないな。

 布団に潜り込んでまた眠気を起こして目を閉じる。

 次に見た夢はこれまたカオスなものだった。

「メイド要素が足りません!!」

 何故か秘書であるアンナが出て来て、相変わらず元気に唐突に脈絡の無いことを夢の中で叫んでいる。

「というわけで!色々な方々にメイド服を着ていただきました!!どうでしょう!アンナさんすごいでしょう、カリスマを持っているんです!」

 効果音をつけるとしたら、いや、漫画によくある表現の仕方で、アンナの頭の上にはバーンという文字が浮かび上がったかと思うと、俺の学園の女子生徒達がメイド服を着ていた。

「これは……迷惑なカリスマだな」

 また目が覚める。

 天井からネズミの足音が聞こえて、こいつらを駆逐することにした。

 そうだ、何のための思考盗撮と空間転移だ!

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