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文字の墓場  作者: mesotes
9/10

宇宙超ロボット的な小話-1

 宇宙のある空域。そこでその戦闘は行われていた。




 ――カルト機大破!


 ――違う、そっちだ!


 ――バカ、何してる!


 ――こちらハス。両腕をやられた! 戦闘不能につき離脱する!


 ――こんな………こんなやつにいいようにやられてたまっかよぉ!


 ――チ、一人で突っ込むな!

   ああフォウ、そっちの穴を埋めろ、ヤツが向かって……


 ――ちくしょう、だめだっ! 止められない!


 ――お頭! すいません、突破されました! そちらに………!


 次々と通信から入ってくる情報。それら全てが驚愕と愕然の叫びだった。

「っち、わあってるよ」

 潰したタバコをコックピットに持ち込んだ灰皿に投げ入れる。

(しかし………何者だ? 俺達に一機で挑んでくるヤツは)

 宇宙海賊。それが彼らの日常だった。

 計8機の人型武装マシン機を有し、頭は13機撃破というスコアをもつ。そして今日、一艘の貨物船を狙い手下達5機をやったところ、3機の護衛が出てきた。

 2機は撃墜、そして残る一機………

「――――来たな」

 徐々に大きくなる点。

「さあて、そのツラじっくり拝ませてもらおうか」

(なにしろ、1機で5機を相手どったやつだ。さぞかしすさまじい――――)

 そして、彼は見た。

「…………は?」


 宇宙を駆ける――――オンボロ。


「あいつが…そうなのか?」

 思わず確認をとる…………間違いない。

「ちょっとマテ。マジか?」

 半信半疑のまま、相手が射程距離内に入る。

(向こうの砲は見たところTHシリーズ。射程距離はこちらの2/3。一体いつの時代の武装だ)

 そして、撃った。

 一条の光は尾を引いて、

(………かわした? いや、外した?)

 もう一度。今度は本気で。

(これで……あいつの価値を決める)

 もう一度、光が疾る。

 その結果は――――

(にゃろう…………本物か!)

 再び銃を撃つ。見事なまでに全弾かわしてくれた。

 パウ!

 相手も射程距離に入り、撃ちながら距離を詰めてくる。

(冗談じゃねえぞ。あのオンボロでこの動き……! 間違いない)

 そして、互いに炎の剣(フレアソード)を抜いて白兵戦へと勝負は移り――――

「おおおおおお!」


 一瞬の交差。


「……………………にゃろう」

 そのまま例の機体は宇宙の闇へと消えていった。

(機体の動力性能、パワーは間違いなくこちらが格段に上。だが、ヤツはあんな機体ではありえない程の運動性を引き出していやがる。それでこの戦い……純粋にパイロットの腕の差ってわけか)

「おもしれえ……やつだ」

 バキン!

 左腕の盾が、音を立てて割れた。






「はい、お疲れさん」

「う~い」

ドックで出迎えた女性に、気だるそうに手を振ってぞんざいに答える青年。

「とりあえず、依頼の目的は果たしたわ。囮の貨物船で海賊の足止め・かく乱。依頼人も感激してたわよ。よっぽどアンタのこと信用してなかったみたいね」

 まあ、それもしょうがないか。あんなお古じゃあね、と付け加える。

「ちゅーか、死ぬかと思ったぞ! マジで! 特に最後の一機!」

 ぶちぶちとグチを漏らしている青年カズに女性ケイが歩み寄ってにこやかに笑った。

「ああ、そうそう。あんたの機体、滅茶苦茶な操縦のおかげであちこちガタがきてるわね」

「…………はい?」

「で、これが修理費」

 ポンと手渡された一枚の紙、明細書。そして、修理費見積もり――

「って、報酬の7割じゃねーか!!」

「そうね。まあ最後見事に砲身も真っ二つになったんだし、仕方ないんじゃない?」

「詐欺だ! ぜってぇ詐欺だ!!」

「じゃあ他のところに行けば? 言っとくけど、相場は最低これの2割増しよ」

「……ああああああぁぁ」

「いいかげんオンボロもいいとこだけど……中古でも買い換えるとなると値段の桁が違うし…………ま、当分はこれで頑張るしかないんじゃない?」

「しくしくしくしく」

(しっかし、よくこんな機体であんな戦果を挙げられるもんだわ)

 その点については、ケイも舌を巻いている。むしろ恐ろしいとも感じる。

 ハッキリ言って、目の前のこれは最低ランクの量産型の機体だ。しかも5年以上は使いつづけているという。時代遅れもいいところ。

 現在普通に出回っている機体と一対一の場合、良くて普通は相打ちだろう。

 それでも……カズは今までの戦いを乗り切っている。

(まったくとんでもないわ、コイツ)

 当のカズはというと…泣く泣く書類にサインをしていた。

「ああ、それとそろそろ細部点検した方がいいから、それもプラスしとくわね」

 と、追加項目を書き加えるケイに、カズはその後しばらく拗ねていたそうな。


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