宇宙超ロボット的な小話-2
命令で戦線から撤退した時は俺を含め5機。正規軍は壊滅状態で散り散りとなり、もはや連絡不能。
雇い主はわずかな数を率いて脱出を決行したが、結局そのルートも漏れていた。
襲撃された時は俺は別の所を索敵しており、戻ってきた時は……もはや満足に稼動しているのは俺の一機のみとなった。
さらに、雇い主は致命傷をうけ、なんとか落ち延びた所をも包囲されてしまった。
「頼む………これを、ハフマン陛下に届けてくれ……」
その絶望した目が気に食わなかった。
「報酬は、必ずや陛下から希望の額を受け取れる……だから、頼む。この【箱】を……」
その最期の言葉がリフレインする。
ワラにも縋る。そんな気持ちで彼女は俺にその【箱】を託したんだろう。まぁしゃーないか。何しろ俺の機体ときたら中古の型古いオンボロ。そんな機体でこの孤立無援の状況、 トドメはオレがとんでもない若造だという事。
「…………」
既に雇い主は沈黙していた。それなりに気のいい女性だった。
彼女に限らず、一機で精鋭の包囲網を突破できるなどとは到底思えないだろう。それが常識。当たり前の事だ。
だからこそ、気に食わない。
俺が、気に食わない。
「届けてやるよ」
手の中で転がしていた【箱】をそっと仕舞う。
これに一体何の価値があるのかは知らない。けれど、彼女は命をかけてまでこれを守っていた。
「しがない傭兵だが……こんな俺にしか託せないんだ。こんな俺にですら託さざるを得なかったんだ。届けてやる」
あの絶対包囲網を抜ける、と。そう彼は宣言した。
「まったく、キッツイ仕事になっちまったな」
ハフマン陛下………これまた随分と遠い星だな。
「OK.いっちょやってやろうか。頼むぜ、オンボロ」
改めて、次々にプログラムを起動。オールチェック。
モニターに文字が荒れ狂い、モーターは盛大に異音をあげる。
「あー、ったく。こんなモン駆ってるのどこ見てもオレだけじゃねーか。いくらなんでも古すぎるだろ。骨董品もんだな。博物館が欲しがるぞ」
とはいえ、こんなもん二束三文にしかならないだろう。ジャンク屋だって買い取ってくれないに違いない。この機体に使われている各部パーツは旧時代の代物。というか、これを駆ってる事自体正気を疑われてしまう。
「さて、いきますか。1対1個中隊。わーお、絶望的~」
エンジン起動。鈍い四肢を一度チェック。よし、いつも通りのオンボロ具合だ。
「………ざっと見たところ、あっちの基本動力性能は3~5倍か。
―――――上等ォっ!!」
スペックが違うのもいつもの事。ならば後は俺の腕でカバーすればいい。
これも、いつもの事。
そうして、親父も兄貴も――――俺もこいつを駆ってきたんだ。
「カズ・ベルドゥーク。往くっ!」
長年死線を供にしてきた機体が目を覚ました。




