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初級魔法だけ使えなかった大魔法使い ―人類に嫌われた最強の魔法使いは、何がために魔族と戦うか―  作者: もかの


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第8話 発見

「クラレスさん、いつもなんの本を読んでるんですか?」


「なぜお前は平然と俺の家にいる?」


 あれからもうすぐ半年が経とうとしている頃。

 ルインはまたクラレスの家を訪れていた。


「恩人に感謝を伝えにくるのはおかしなことですか?」


「それは立派なことだが不法侵入はおかしなことだぞ」


「でもこの家、扱いとしては『たまたま山の中にある家をクラレスさんが勝手に使っている』になるのでしょう? 王国外なのですから」


「……いらん知識ばっかつけやがって」


「クラレスさんの教えの賜物です」


 あの後のことについて、クラレスはカールからいくつか聞いていた。


 まず、ルインが家出した理由は進路に関しての面が大きかったらしい。

 十五歳になる年度から三年間、どこかしらの学校に在籍することがこの国では義務付けられている。

 教育関連においては全額無償で行われており、すべてが国の経費として賄われている。

 この制度は国王がサフェル王になってから制定されたもので、クラレスからの学びをもとに取り決めたことだった。


 ルインは王立学院に通い、魔法科を専攻しているらしい。

 もしかしたら、最初は別のことをしたかったのかもしれない。

 しかし最後にはルインが「魔法を勉強したい!」と言っていたようだ。クラレスに連れられて、広い世界を眺めた上で、クラレスと同じ道に進みたいと願ったらしい。


「もう俺は何も助けんぞ」


「まだ何も言ってないじゃないですか」


「じゃあ帰れ」


「魔法教えてくれませんか?」


「ほら来た。だから俺はもう何もしないって。忙しいんだ」


「とても忙しそうに見えませんが……というか、本読んでていいんですか? サフェル王からの依頼のこと忘れて――」


「ない。今読んでるのは魔導書だ」


 人間が魔法を使うには『魔導書』を媒介とする。

 過去の偉人たちが魔族の使う魔法を見て盗み、使い方を記した書物――魔導書。

 その中からさらに規則性を見つけ出し、人類のために作られたのが初級魔法である。


 そして、今クラレスが読んでいるものこそ――


「初級魔法、やっぱり覚えられないんですか?」


「誰がそのことを……って、どうせカールが口を滑らせたのか」


 初級魔法だけ使えないことは言わないと決めていたのに知っていたルインに、クラレスはすぐに一人の男が思い当たる。


「なんというか、本当に使えないんですね」


「悪かったな」


「ふふ。今の私たち、正反対です」


「お前、初級魔法使えるのか?」


 クラレスは目を丸くしながら顔を上げる。


「はい。と言っても中級以上が一向に使えなくてこうしてクラレスさんを訪ねてきたんですけど……。ほら、この通り……はっ」


 可愛らしい声とともに、彼女の右手からサッカーボール程度の大きさの火が浮かび上がる。

 初級魔法|《火球》であった。


「えっへん。どうですか」


「まだ学校に通い始めて半年足らずだろ? もう無詠唱までできるのか」


 魔法は詠唱を唱えることが基本である、というのは有名な話だ。

 詠唱を唱えることで自然現象から力を借り、それを具現化することで魔法として使うことができる。魔法を使えない者でも知っている当たり前の知識。

 それを頭の中でやってのける無詠唱魔法は、相手に手の内を明かさず、それでいて高速で魔法を使えるという利点がありつつ、当然難易度も跳ね上がる。


「やっぱり珍しいことなんですか……? クラレスさん、ずっと無詠唱魔法だったから、ほんとに詠唱っているのかなーって思って試しにやってみたら簡単にできたので、今もそのことを疑っているんですけど」


 こてん、と首を傾げるルイン。

 クラレスは立ち上がり、ルインの頭に手を乗せる。

 ルインの魔法適正を調べてみることにした。


「へっ? ちょ、ちょっと何するんですか……っ! ひゃっ……」


「お前を調べるだけだ。少し待ってろ」


「んっ……あ……」


「変な声を出すなバカタレ」


 クラレスの魔力をルインに流し込む。

 自分のとは違う魔力に、全身を這うようなぞくぞくとした感覚に襲われたルインは人がいれば勘違いをされそうな甘い声をもらしながらも、クラレスの鑑定は終了する。


「ほお……」


「はぁ、はぁ……ん。何が分かったのですか?」


「お前、魔法使いの適正まぁまぁあるな」


「まぁまぁ……なんですか? それは喜んでもいいやつなんですか?」


「存分に喜べ。俺には届かんがな」


「やったーっ!!」


 喜べと言われ本気で喜ぶルイン。

 自分で言ったものの素直に従うルインが馬鹿らしく吹き出してしまう。


 そして、これほど魔法適正があるのなら教え甲斐があると判断したクラレスは、指を鳴らして亜空間に行く。


「教えてくださるのですか!?」


「俺が勝手に魔法の試し撃ちをするだけだ。まぁ、特別に見学料はタダにしておいてやる」


「……教えてくれるなら素直にそう言ってくれていいんですよ?」


「なんのことだろう――なっ!」


 炎の魔力を練り上げ、クラレスなりの初級魔法|《火球》を放った。

 ルインの何倍もデカいそれは、地面に当たると爆発してクレーター状に抉った。


「ほら、クラレスさんも無詠唱じゃないですか」


「歴が違うんだよ、歴が。俺だって魔法使いたての頃は詠唱ありじゃないと使えなかったんだから」


「へ? そうなのですか?」


「俺をなんだと思ってんだ。魔術師にも魔道士にもなれなかった魔法使いなんだぞ」


「なら大魔法使いってのはなんなんですか……まぁ教えてくれないんでしょう?」


「無駄なことはわざわざ言わない主義なんだよ。とはいえ……機会が来たら教えてやる」


「え!?」


 これまで一貫して「詮索するな」の方針を取ってきたクラレスの心変わりにルインは驚く。

 たった一日。あの日以来一切連絡をくれなかったからルインもどうすればよいか分からなかった。

 しかし、クラレスの中でも自分の存在が大きなものになったと思うと──、ルインはどうしようもなく嬉しかった。


「ちなみに、ルインから見てあれは何の魔法だと思った?」


「何の……うーん、中級にしては強すぎるし上級にしてはちょっと弱いな、って感じの変な魔法でしたかね!」


「変な魔法だったのか」


「はいっ」


 散々な言い草にこたえるクラレス。

 しかしやはりルインとの違いが分からなかった。


「よーしっ! 次は私の番です!」


「分かっ──ん?」


「いきます……中級まほ──」


「ちょっと待て」


「へぶっ!」


 集中力を高めている最中にチョップを食らうルイン。

 何するんですか! と顔を上げると、クラレスの作り出した空間から森の家に帰ってきていた。


「ど、どうしたんですか……?」


 いつになく真剣な表情を浮かべるクラレス。

 手に魔力を集め右目に覆い被せる。手をどけるとそこには普段の漆黒の瞳から蒼天のように青く染まった瞳が現れていた。


「──……見つけた」


「み、見つけた……って、何を」


 クラレスは家のある一点を見つめているように見える。

 しかしクラレスには、遥か遠方──数百キロ離れた地の光景がその目に映し出されていた。

 そこには、アスティール王国のある方向に進軍をしている魔族の姿があった。


「せっかくだ。お前も来るか?」


「だから何が──」


 ルインの許可を得る前にクラレスは空間魔法を使用し、魔族のいる地の上空にテレポートした。

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