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初級魔法だけ使えなかった大魔法使い ―人類に嫌われた最強の魔法使いは、何がために魔族と戦うか―  作者: もかの


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第14話 模擬戦

「──……さん、クラレスさん。クラレスさん!」


「ぅんあ……?」


 ルインの大声が聞こえてきてクラレスは目を覚ます。どうやら眠ってしまっていたようだ。


 この日もルインはアスティール大森林を訪れていた。週末とはいえ学院の何かがあるのではとクラレスは思うが、成績優秀のルインのことだ。ある程度の自由は許されているのかもしれない。


「最近眠そうですね。遊びすぎなんじゃないですか?」


「それはルインの方だろ」


「ここ来るの一週間ぶりじゃないですかっ」


「別に俺んちに来るのを『遊び』とは言ってないんだが」


「は、はめましたね!?」


「お前が勝手に墓穴掘っただけなんだわ」


 ルインは白銀のショートヘアをさらさらと揺らしながら、椅子に座って作業するクラレスの肩をぽこぽこ殴る。


 また、クラレスは返事しつつ、実際は一週間ぶりでは無いことを知っていた。

 作業――魔法の制作に集中するため、森に侵入してきた万物の座標を操作する結界を展開していたからだ。クラレスの家に近づけない以外はランダムにするくらいであれば、クラレスの魔力総量であれば簡単である。

 そして、その結界に毎日同じ人が引っかかっていたことも知っていた。


「クラレスさんは何をしているのですか?」


「書を記している」


「それは見れば分かりますよ……何を書いているのかと聞いているんです」


「それは秘密。だけど、ちょっと実験台になってくれないか?」


「実験台とか言わないでくださいよ……っ! 何をすれば良いんですかっ」


 嫌ってことじゃないのかよ、とツッコみつつ、いつもの亜空間に行く。


「それで、何をすればいいんですか?」


 ルインの目の前にいるクラレスに話しかける。

 すると、答えるよりも先に右手をルインに向かって突き出したクラレス。そして、火球が飛んできた。

 まさかの行動に一瞬狼狽えるが、しかしすぐに粗い魔法であることを見抜く。

 その想像通り、常時展開の障壁魔法にぶつかると霧散した。


「何するんですか!」


「言っただろ? 実験台になってくれって。俺と模擬戦しろ」


「えええええええええ!? むむ無理ですよ!」


「無論、俺は手加減する。ルインは殺す気でかかってきてもらって構わない。あと、お前がいくら渋っても俺の攻撃は止まないから、早くに判断することだな」


 鬼畜にもそう言って、無数の中級程度の水球を空に浮かべる。

 今度は高密度に練られた魔法だ。ルインの障壁魔法では、クラレスの魔法の前に何の意味も為さないだろう。


「……分かりました。やりますよ、やってやりますよ! これでも中級魔法はかなり使えるようになったんですからね!」


 ルインは詠唱を丁寧に発音しながら唱える。

 そうして最後に結句を言うと、ルインから大量の空気の斬撃が飛んでいき、水球を一つ残らず切り裂く。

 滝のように降り注ぐ水を一瞥したクラレスは、炎の魔力を纏った右手で振り払った。


「私から目を離さないでくださいね!」


 魔法の質で勝てないことなど一番分かっているルインは、補助魔法で強化した身体能力でクラレスとの距離を一息に詰める。

 そして、氷で生成した剣と空気で生成した剣の二刀流でクラレスに襲いかかる。


「少々無鉄砲すぎないか?」


 しかし、クラレスが何かすることもなく、障壁にぶつかるだけで二本の剣は粉々に砕け散って霧散した。

 クッと自分の無力を自覚しつつ、ルインは生身で殴りかかる。

 こればかりは障壁でも防げないので、クラレスはルインの拳を作り、二人の身体の間に風の玉を生成する。


「まず――」


「バースト」


 ルインの手を離したクラレスは風魔法を起爆し、ルインを吹き飛ばす。

 しかし、なんとか魔法の展開が間に合ったルインは、飛ばされる寸前にクラレスの足元にあった草を操り、自分の足とクラレスの足をつなげる。

 そしてルインは自分に風魔法を発動し地面に押さえつける。すると――


「これはどうですかッ!」


 クラレスの風魔法によって飛ばされた力が、今度はルインが起点となってクラレスに伝わる。

 魔法によって伸ばされ強化された草は千切れることなく、簡単にクラレスを持ち上げ、半回転したあと地面に叩きつけられた。

 土埃が舞う。


「どう、でしょうか……」


「九十点だな」


「へぶっ」


 クラレスの落下地点を見つめていたルインの後ろから、クラレスはチョップを入れる。


「く、クラレスさん!? なんでここに!?」


「なるほど。実験は成功だな」


 まったく答えになっていない回答をして、勝手に納得するクラレス。

 いつも通り何も教えてくれないクラレスに、ルインは頬を膨らませながら、


「あと十点はどこなんですか?」


「あれが本物の人間だったら成功率が低すぎる。ただ、魔法で勝てない相手にそれ以外で挑みに行こうと判断するのは素晴らしいものだった。策が一つ失敗したかと思えばすぐに次の策へ移行する……その臨機応変な戦い方はゆめゆめ忘れるな」


 思ったよりも多く褒めてもらいむず痒くなるが、それよりも気になることをクラレスは言っていた。


「本物って……え?」


「うん、やはり実験は完璧だな。幻影に意思を持たせて行動させるという実験は」


 そう――――


 クラレスはイメージ力だけで、魔法で生成した幻影に意思を持たせ、本物の人間のように自律的に行動させるということに成功したのだ。

 完成まで僅か一週間。何に使うかルインはまだ知らない。

 しかしこれぞまさに魔法の真髄。クラレスが大魔法使いたる所以であるのかもしれないと悟った。

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