蝦夷ホームステイ(閑話)
「となると、蠣崎様にお願いにあがる必要がありますな」とシゲサブロー。
「蠣崎様の家臣は皆、勝山や大館や箱館の方におります」と今泉。
「今泉殿、今泉殿は蠣崎様の家臣ではないのですか?」とシュゼン。
「いや、それはですなぁ、少々言いよどむところではありますなぁ…」と今泉。
「と、申されますと?」とシゲサブロー。
「うーむ…」と今泉。
「佐渡は今のところ、どことも敵対するつもりはないので、何も気にすることはないですぞ」とシュゼン。
「佐渡の船の行手を塞ぐものは蹴散らすがの」とシゲサブロー。
「さようですか。いえ、言いよどみましたのは、商場はアイヌとの交易のための場として開いており、アイヌの民が各地からきます。しかしアイヌの民と蠣崎様は基本的にずっと戦争状態なんです。わーしの家のものも何人も蠣崎様方と思われて、アイヌとの戦に巻きこまれて死んでますので、商場では蠣崎様の家臣だとはあまり大きな声では言わない方がいいのです」と今泉。
「おお、これは失礼した。いや、どちらかと言うと安東氏と南部氏と蠣崎氏との間で何かイザコザがあるのかと思おておった」とシュゼン。
「それはどちらにもいい顔をされておられます。今回のように佐渡から来られてもいい顔をしますし」と今泉。
「ハハハ、さもありなん」とシゲサブロー。
「ときに今泉殿、商場の蔵とは別に、今泉殿自身の蔵はお持ちか?」とシュゼン。
「デカいだけでろくに何にも入っていない蔵ならございますが」と今泉。
「それはお誂え向きだ」とシュゼン。
「おお、いいですな」シゲサブロー。
「彼の者たちは三拾俵の米と三拾俵の麦を背たろうてきております」とシュゼン。
「背たろうて?」と今泉。
「彼の者らの一年分の食い扶持です」とシゲサブロー。
「それは豪勢な」と今泉。
「それを今泉殿にお預けいたしますので、彼らをここで働かせてアイヌの言葉を覚えさせてもらえませんか?」とシュゼン。
「おおおお、六十俵は入らんかもしれません… あ、いや、わーしでよろしいんで?」と今泉。
「米と麦をちゃんと彼らのために使っていただけて、彼らにアイヌの言葉を覚えさせてくれる方がいいのですが、どなたか他に心あたりはありますか?」とシュゼン。
「そ、そう言われますと… そうですね… ちなみに、あの男二人はどう言う立場で?」と今泉。
「えー、北見殿、聞いておられますか?」とシュゼン。
「いや、詳しくは… 戦奴隷としか…」とシゲサブロー。
「本人たちに聞いてみましょう」とシュゼン。
「あ、そこまでは結構です。暴れたりはしませんよね?」と今泉。
「暴れたら食わせなければいいです」とシゲサブロー。
「なるほど、なるほど、ちょっと待ってくださいね、えっと、米麦六十俵もらえて、あの者たちをここで働かせることができて、住まわせんといかんしの、えーっと、あの、おなごの方は、その…」と今泉。
「今泉殿、独り身か?」とシゲサブロー。
「わーしは妻子持ちじゃが」と今泉。
「手を出すなら面倒みることありきじゃぞ」とシュゼン。
「子持ちのナツとマサは子まで面倒みてもらわんといかんぞ」とシゲサブロー。
「マサの子はもう働かせられるじゃろうが」とシュゼン。
「あ、いや、わかった。あい、や、理解した。いろいろあたろう」と今泉。
「おお、お任せしてよろしいですか」とシュゼン。
「あい、任されよ。 ………で、六十俵は一年分ですか?」と今泉。
「おお、以降のことは、また次に来るものが指示を出すことになろう」とシュゼン。
こうして蝦夷ホームステイ組第一陣は、松前港の今泉殿に丸投げされた。
蝦夷では南の方が上で北の方が下なんですね…
て言うか、お上がいる場所基準だから、この頃って北が下って普通なのか…
上総・下総とかもそうか…
あ、上越・中越・下越もそうじゃん(;´∀`)




