蝦夷留学(閑話)
「北見殿、此度はよろしく願いもうす」と坊ケ浦本間主膳。
「これはこれは坊ケ浦様、お久しゅう存じます」と北見茂三郎。
この日は蝦夷への第二弾出航にあたっての打ち合わせだ。
羽茂城には、羽茂高季、高信、河原田貞兼、藍原蔵人と蝦夷行きの遠山丸と大岡丸に乗り込む坊ケ浦本間主膳と北見茂三郎が来ていた。
それと、
「そちらから、順番に名前と歳を言ってください」と俺。
「ゴサクです。二十一歳です」
「オレはハチだ。十七くらいだ」
「トミです。十九です」
「ナツです。二十三です。この子はタカです。五歳です」
「マサです。三十です。小一郎と平二郎です。十二と十になります」
「ありがとうございます。皆さんには蝦夷に行ってもらいます。蝦夷での仕事はアイヌの言葉を覚えて会話ができるようになることです。ここよりもずっと寒いところですが、頑張ってください」と俺。
「はい」とみんな。
「あちらに根付いて、家庭でも持ってもらえたら大いに支援をします」と俺。
「この中で所帯をもつのか?」とハチ。
「この中でもいいし、むこうで見つけてもいいです。むこうにいる和人でもいいし、一番はアイヌの方と所帯を持ってもらえたらいいですね」と俺。
「アイヌの男と結婚して、むこうで暮らすのか?」とトミさん。
「もちろん結婚までしなくても、アイヌの村に受け入れてもらって、ご近所で生活できればいいです。なので子連れでも行ってもらいます。これから何度も蝦夷には行くので、食い扶持は必ず支援しますので、こちらから行った時にむこうで我々を迎えてくれるようになってください」と俺。
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「ここが蝦夷です。まずはここに船をつけます」
俺はシュゼンとシゲサブローの前に日本地図を広げて、北海道を指さし、次に北海道の地図を広げて松前を指さした。
「前回行った所ですな」とシュゼン。
「そうです。で、今回は可能であれば、ここ、ここが小樽です。そして、ここが利尻島でここが礼文島です。ここらまで行って、彼らを現地のアイヌの人に預けて来てください。今回、交易用とは別に、米三十俵と麦三十俵を積んで行きます。彼らの食い扶持です」と俺。
「結構な量じゃの」とシゲサブロー。
「それだけ持っていれば受け入れてくれる先も見つけられるでしょう。ただ、奪われて殺されたりしたら困るので、あくまでも可能であればですが…」と俺。
「ダメならば連れて帰ってくるのか?」とシゲサブロー。
「いえ、現地のアイヌに預けられそうになければ、松前の蠣崎氏を頼って、蠣崎氏にその米麦を渡して、彼らを働かせながらアイヌの言葉を覚えさせてくれと頼んでください」と俺。
「なるほどの」とシゲサブロー。
「心得た」とシュゼン。
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松前港到着
「やぁ、来られましたなあ、佐渡のお方ですな」と松前の商場を取り仕切る今泉と言う商人だか武士だかわからない男が声をかけてきた。
「佐渡の者とわかりますか」とシュゼン。
「帆のかたちが独特で、すぐにわかりました。ああしは前回お越しのときにもお相手させていただきました、今泉と申します」と今泉。
「昆布が云々」
「身欠き鰊つくったかんぬん」
「石炭は云々」
「塩も欲しいかんぬん」
「と、取り引きもそうなのじゃが、今泉殿、こことか、この島とかこの島はどんな具合じゃ?」とシュゼン。
「これは、蝦夷の地図ですか? これは、また… あ、いや、正直なところその辺のことまではよくわかっておりませんなぁ」と今泉。
「今回連れて来た数人をこの辺に住まわせてアイヌの言葉を覚えさせようと思っておるのだが、どうじゃろう」とシゲサブロー。
「いやいや、いきなりそんなところに言っても言葉が通じませんぞ。この商場ならば何とかお互いの言いたいことがわかるようになっておりますが…」と今泉。
「さようですか」とシゲサブロー。
ちょっと巻き戻って、第二弾蝦夷行きの時のお話です。




