予言「為景様は死にます」
晴景様には高信様から伝わるが、せっかく来てくれたので俺から御一行様へも予言をしておくことにした。
「まずは高梨様がいらしてくださいましたので申し上げます。甲斐から武田信玄が信濃に攻めて来ます」と俺。
「武田… 信玄だと?」と高梨政頼。
「ああ、えっと、武田晴信かな? 今の武田家の嫡男が父親を追い出して家督を奪ってから信濃に攻めてきます。高梨様は今のうちから砦なり城なり作って、迎え撃つ準備をした方がいいと存じます」と俺。
「ほう、その通りになれば、まさに予言師じゃのお」とタメカゲ。
「いつ頃じゃ?」とサダミツ。
「ウ~ン、十年以内ですね」と俺。
「まだ、先じゃのお」とサダミツ。
「はい、でも今のうちから、例えば諏訪に武田が攻めて来るぞと流言を流したりしておけば、いろいろ準備もできるでしょう。まずは諏訪に来ますから」と俺。
「まぁ、頭にいれておこう」と直江景綱。
「関東は北条氏が攻め上がって来ます。こちらから出張って行って、その時に勝っても何度も来るので、関東から頼まれても、できるだけ助けに行かないほうがいいです」と俺。
「関東からわしらに援軍を依頼してくるのか?」と安田景元。
「北条が公方をたてて、えっと、河越城だったかな? そこを夜襲されて負けてから、扇谷上杉も山内上杉も追い立てられて、山内上杉が越後に逃げてきて、上杉謙信が、あっ、景虎様のことですが、関東管領になって北条を追い返します」と俺。
「待て待て、景虎様とは誰じゃ?」とサダミツ。
「ハハ^^; えっと、最近為景様にお子様がお生まれになりましたでしょう?」と俺。
「おお、虎千代のことか」とタメカゲ。
「はい、その虎千代様が山内上杉の家督を譲られて上杉謙信になり、関東管領になります」と俺。
「それは、また大層な予言じゃの」と山吉政久。
「万々歳じゃないか」とサダミツ。
「謙信公はなんと言いましょうか… 軍神とも毘沙門天の化身とも言われて、連戦連勝なんですが…」と俺。
「いいじゃないか」とサダミツ。
「それが、戦、戦、戦続きで、勝っても勝っても越後は疲弊するばかりなのです」と俺。
「勝ち続けても領地は増えんのか?」とカゲツナ。
「増えません。国人領主の応援で北条から領地を取り返すだけなので。仮に領地が増えても戦地は越後以上に疲弊していて、復興が大変です。復興させても、また北条に取り返されて、また取り返してを繰り返すだけですし」と俺。
「しかし、上杉を継いで関東管領になるのは僥倖じゃのう」とサダミツ。
「わしはどうしておるのじゃ? それに六郎(晴景)は?」とタメカゲ。
「あ、為景様は死にます」と俺。
「何?! いつじゃ? 戦でか?」とタメカゲ。
「詳しく覚えてませんが…」と俺。
「おい、そこは大事なところじゃろう」とタメカゲ。
「それがですね、諸説ありまして、上条の乱のあと家督を晴景様に譲って隠居してすぐ死んだ説とか、逆に死んだフリをして、実は景虎様が家督を継ぐまでカゲで越後を牛耳っていた説とか、そんなのがあったと思います」と俺。
「カゲで牛耳っていた説がいいのお」とタメカゲ。
「でも、そもそも今回、晴景様に家督を譲られたのも史実より早まってると思われますし、晴景様は病弱だと伝えられておりましたが、実際はお元気そうですし…」と俺。
「うむ、弥六郎様はきわめて壮健です。ただ、戦場には不向きなご気性ですが…」とカゲツナ。
「なので、景虎様に家督を譲らなくても、晴景様がそのまま続けられて、内政に力を入れられる方が越後の国としてはいいと思います」と俺。
「しかし、越後は乏しいぞ」とカゲモト。
「私がいた時代では、越後は日本一の米どころになっていましたよ」と俺。
「なんと!?」カゲツナ。
「越後がか?」カゲモト。
「はい、越後は日本一の米どころ、魚沼産のコシヒカリは日本一の米と評されていました」と俺。
「にわかには信じがたいの」とマサヒサ。
「内政に力を入れれば、そうなれるのか?」とタメカゲ。
「暴れ川の治水です」と俺。
「それは…」とサダミツ。
「できるのか?」とタメカゲ。
「大事業ですので、えらい時間も労力もかかります。しかし、戦で無駄に時間と労力を使うより、そちらに使ったほうが絶対に越後のためになります」と俺。
廃藩置県のとき、新潟県って東京府より人口多かったんだってね…




