ハーモ1号は速い
さて、一旦松ヶ崎に帰って、王仁吉に「鯨波に行って小太郎と仲良くしてきてね〜」とお願いしておいて、我々(俺、高信様、林殿、久万吉)は一路南へ。
南へと言っても西に進むんだけど…
輪島に向かう途中、右手に島が見えたので、
「あの島は?」と俺がきくと、
「猫島だっちゃ」と久万吉が答えた。
「人は住んでますか?」と俺。
「ああ、アワビやらサザエやら獲っとるっちゃ」と久万吉。
「どこの領地ですか」と俺がきくと、
「領地、領地か…」と高信様。
「あの島はどこにも属してないかと…」と林殿。
「そうなんですか? なら、城を建ててうちの領地にしましょう」と俺。
「城を建ててまで、あの島がいるか?」と高信様。
「そうですね。城と言うか寄港のための拠点ですね。これから年に何度もこの海域は通るので、誰も領有していなくて、戦なしで領有できるなら、しておいた方がいいでしょう。でも、佐渡を整備する方が先ですから、そのうち余裕ができたらにしましょう」と俺。
そして、その猫島(舳倉島)を右手に見ながら輪島に向かうが、風も良くて、ほとんど漕がずにスイスイ進んでおり、予定よりかなり早く着けた。
『加賀か小松くらいまで行けたんじゃないかな?』
翌日も天気も風も良く、輪島から一気に三国まで進んだ。
三国港の宿で、高信様が持ってきた地図(以前に書き写したものをさらに書き写した)を見ながら、
「おいらは、まぁ、敦賀か小浜くらいまでしか行かんち、こん先はわからんちゃ」と久万吉。
「地図で見ると、ここの先っぽらへんを目指すんが良さそうだな」と高信様が経ヶ岬を指さした。
「そこだと、えっと… 丹波じゃなくて、丹後の国になるのかな?」と俺。
「丹後ですか。一色ですな」と林殿。
「ああぁ、その辺だち、若狭の辺とおんなじ海賊が締めとっちゃ」と久万吉。
「ならば、直接行かずに組屋さんに顔を出して、なじみの船乗り衆を紹介してもらいましょう」と俺。
そうして俺たちは、三国から小浜まで、スススイっとやって来て組屋さんのお店にやって来た。
〜 〜 〜 ※ 〜 〜 〜 ※ 〜 〜 〜
「店主は菱田様からお話をいただいてから、ほとんど店に寄りつかずに佐渡に石見にと飛びまわっておりますれば…」
そう言って組屋の番頭の大吉さんが俺たちを迎え入れてくれた。
「それはご迷惑をおかけしてまして…」と俺。
「いやいや、菱田様の銀のおかげで、上方でえらい大きな顔して商いさせてもらってます」と大吉さん。
「今日は若狭丹後の海を仕切っている船乗り衆に伝手があればつないでいただきたくて参りました」と俺。
「ならば港に奈佐様の丹後水軍衆が居りますので紹介しましょう」と大吉さん。
大吉さんに連れられて小浜の港に行く。
「余部どん、ちょっといいかの?」と大吉さん。
「ほや、大吉っつぁん、どなたね?」と余部どんと呼ばれた人が返事をした。
「こちらは今度、組屋がでっかい商いを始めた佐渡の菱田様とお連れさん方じゃ」と大吉さん。
「あの、かわった船で来られた方かいね?」と余部どん。
「そうです。俺は佐渡の河原田藍原蔵人様の家来で菱田翔吾。こちらは羽茂本間家のご嫡男、三河守様と配下の林主計様、それに佐渡松ヶ崎の久万吉殿です。来年の春から、蝦夷から博多まで船で行き来するつもりでして、間の水軍衆に事前にご挨拶でまわっています」と俺。
「ほうね、小浜はええで、宮津に行くとええ」と余部どん。
「余部どん、一緒に行って紹介しちゃっとーね」と大吉さん。
「ほうほう、ほな、一緒に行っちゃるで、わしもあの船乗せてくれ」と余部どん。
そうして俺たちは余部どんと一緒に丹後の宮津港へと向かうことになった。
「奈佐様が居られたらええんじゃけどの…」と余部どん。
「奈佐様ですか?」と俺。
「ほや、この辺はみんな奈佐様の海じゃ」と余部どん。
余部どんは余部新八と言うらしい。
組屋の番頭の大吉さんは、ただの大吉さんらしい。




