とっとと新生活
さてさて、逆行転移生活が始まったわけだが、
◯俺がやったこと其一
持っていた(スーツケースに入っていた)サバイバルナイフで山から竹を切り出す。
元肝煎の後家さん、おはまさんとおていさんの家は裏がもう、すぐに山だ。
俺は山に入り、「ご自由にお持ち帰りください」と言うかのごとく生えている竹を次々と切り出していった。
笹の細いとこらへんは刃の方でスカーンスカーンと斬って、根本の太いとこらへんは背中のギザギザがノコギリになるので、そっちの方でギコギコと切る。
竹はイロイロ使えるからねぇ。
海辺では流下式塩田モドキを組んだり、家の端の方では山からとってきた山芋(自然薯かな…)のなんちゃってパイプ栽培もやってみた。
俺が何かを始めると、村中のみんなが物珍しそうに集まってくる。
そしてみんなで作業を手伝ってくれ始める。
「こうしとくと掘るときに楽なんですよ」
と山芋のなんちゃってパイプ栽培の説明をすると、村中のみんなが真似してやり始めた。
「これは何を作っちょらっしゃるね?」
流下式塩田モドキを作り始めた時にそう声をかけてきたのは、おはまさんとおていさんの元旦那さんの後を受けて村の肝煎のような立場になっている余市さんだ。
「笹をこう、壁のように立てて、そこに海水をかけて、そうすると滴っているうちに陽の光でちょっと塩っぱい海水になるんです」と俺が説明する。
「ほうほう」といつの間にか集まってきたみんながうなずく。
「それで滴った塩っぱい海水をまたこっちの竹で受けて、こっちの受け竹を流れる間にも陽の光でもっと塩っぱい海水になるんです」と説明する俺。
なんでこんなこと知ってるかって?
もいちど言うよ、俺がラノベ読者だからだ(o( ̄^ ̄)oエッヘン)
「へえへえ」とさらに集まってきたみんな。
「で、塩っぱくなった海水を、またこっちにかけて、もっともっと塩っぱくするんです。十分塩っぱくなった濃縮海水を最後に煮詰めたら塩が結晶化します。残った水分もニガリと言って、イロイロ使い道があるのでとっておきます」と言う俺の説明をきいたみんなは、
「これはどうすればいい?」
「こっちはどうするんだ?」
と、手伝い始めてくれる。
ありがたいことだ。
竹を結わえている紐は、越後の特産でお馴染みの苧麻の繊維を結ったものだ。
苧麻は佐渡のあちこちでも採れて、「やまそ」と呼ばれていてよく使われている。
漁で使っている網もやまその繊維で編んだものだ。
マイ箸とか食器諸々、他にもイロイロ作ったけど、やっぱり竹槍も作っといた方がいいよね。
なんせ物騒な世の中だろうし。
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◯俺がやったこと其二
逆行転移のド定番! 塩水選。
村にはわずかながら田んぼがある。
俺がここに転移してきたのは春先なので、田植えに向けて村中の種籾を塩水選した。
まずは取り置かれていた村中の全部の種籾を海水につけて、スッカスカのもみ殻みたいな軽い種籾が浮いてきたのを除ける。
次に流下式塩田モドキで作ったそこそこ濃いめの海水につけて浮いた種籾を除けて、さらにもっと濃いめの海水につけて浮いた種籾を除けて、最後に残った種籾を温水洗浄してから苗代へ。
「なぁ、翔吾さん、ずいぶん種籾が減ってしまったっちゃ、こりゃぁ田植え分に足りねぇっちゃよ」
村のみんながヤキモキ思っていることをヨイチさんが言ってきた。
「除けた種籾は植えても育ちが悪い種籾ですし、それに病気の可能性もある種籾なので、今年はこの残った分だけ植えてください。来年は収穫した時に選別して残しましょう」
と、俺。
続けて、
「田植えの時に、苗は3本か4本くらいの束で、例年より苗と苗との間をあけて、なるべくまっすぐに植えてください。間の雑草がとりやすくなります。少ない苗でも、例年とかわりない収穫があると思います。それでもまだ土地があるのなら、そこには今年は大豆を植えてください」
と、みんなにお願いした。
塩水選で除けた種籾は、詰まりは悪いけど悪いなりにお米なので、蒸して…
・そのまま放置
・少し灰をまぶして放置
・結構な灰をまぶして放置
密かに米麹を培養し始めた。




