浜辺を彷徨ってジロべーさんに会う
大学を卒業して、実家の『種麹屋』を継ぐことになり、全国のお取引先様に「後を継ぐことになりました」とご挨拶にまわっているところだったのだが・・・
確か… 佐渡の醤油屋さんに向かっている途中で海から何かが飛んで突っ込んできて…
『あっ、ぶつかる! てか、こりゃヤバい! ご臨終レベルだ!』
と、飛んでくる何かのカゲが頭上に迫って来るところ、ギュッと目をつぶって身をすくめた。
目をつぶったまま、じっと身をすくめていると、
身をすくめていると、
何も起こらない。
飛んできた何かがぶつかることもない。
特に大きな音がなることもない。
『あれ? どうなった?』
俺はそっと目を開けてまわりを見た。
何も起こってない…?
ぃゃ、景色がまったく変わっている!?
特に浜辺に打ち上げられたとか、山中で倒れていたとかではなく、俺はただすっかりコンクリートがなくなってしまった浜辺にポツンと突っ立っていた。
『どこだ、ここは?』
確かに浜辺を歩いていた。
が、こんな浜辺ではなかった。
『佐渡ではあるのかな?』
それすらもわからない。
浜辺を彷徨っていると、まぁまぁ早めに第一村人を発見した。
「はじめまして、私、種麹屋の後を継いで挨拶まわりをしている菱田翔吾と申します。すみません、少々迷ってしまいまして、ここはどこら辺になりますでしょうか?」
と、さっそく見つけた第一村人さんに名刺を渡しながら話しかける。
「あれまぁ、こりゃまた変わった格好しちょろうちゃね… なんね、この薄い板は? えらい上等そうな板じゃね」
近づいて気がついたが、第一村人さんはちょっと今の日本ではなかなか見かけない(要するにみすぼらしい)格好をしておられた。
ちなみに俺の格好は、挨拶まわりでもあったのでノーネクタイではあるが、バッチリリクルートスタイルだ。
でもって、手にはスーツケース(コロコロ付きだけどここじゃコロコロできない)、背中にはスーツケースとセットのリュックサックというイデタチだ。
『ハハ^^; これはひょっとして、特に真っ白な空間とか行ってないけど、女神さまとか会ってないけど… タイムスリップとか異世界転生とかのラノベ展開なのか…』
そんな思いが頭によぎる中、俺は第一村人さんとの会話を続ける。
「ご主人、お名前は?」
「ご主人って、あんた、誰のことじゃ? わしかえ? わしは次郎兵衛ちゅうもんだ」
「おお、ジロべーさん、ジロべーさんは漁師さんですか?」
「ほう、ほれ、そこの船、それをみんなでこさえてな、網もみんなでこさえて漁ばしちょっとよ」
まぁ、これまた今日びの代物ではない船と網だ。
『タイムスリップパターンかな? ここはやっぱりきいてみるべきだなぁ…』
「えっと、ジロべーさん、今って何年ですか?」
「何年か? 何年…か? 何年じゃったかな? 芳吉なら知っちょるかもね」
『じゃあ、この質問だ』
「この辺のご領主様はどなたですか?」
と、ジロべーさんから返ってきた答えが、、、
「この辺はみんな本間様じゃ。ここも、あっちも、こっちも本間のお殿様じゃ。ほんで本間様どおしでちょこちょこ小戦ばぁしちゃるもんで、そのたんびに誰ぞやが怪我したり、誰ぞやが死んだりしちょるもんでいかん」
だった。
「だども、今は藍原のお殿様がようしてくれるよって、干上がるほどはむしりとられとりゃせんで」
だそうだ。
『ハハハハハ^^;^^; いつ頃なのかはよくわからないが逆行転移確定だね、これ』
その後、俺はジロべーさんにお願いして、今が何年か知ってそうだと言う芳吉さんの家に連れて行ってもらった。
挨拶まわりで行こうとしていたところは相川の金山奉行所とかがある所ら辺だけど、逆行転移した所はどうやらもう少し北の方のようです。




