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僕の故郷はおかしな村でしたぁ! 〜生贄?、因習村?、そんなの聞いてない!〜  作者: 柚亜紫翼


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003 - ねこちゃんだ! -(挿絵あり)

003 - ねこちゃんだ! -


「こちらになります、本当にお二人同じお部屋でよろしいのですか?、それぞれ個別にご用意できますが・・・」


「えぇ大丈夫よ、素敵なお屋敷だけどこんなに広いお部屋に一人はちょっと怖いわ」


「僕も大丈夫です・・・」


「ではこちらでお着替え下さいませ、私はこの屋敷に仕えるメイドで戸内どないと申します、御用の際はこの鈴を鳴らして頂ければ参りますので何なりとお申し付けを」


「分かったわ」


「うん、よろしくね」


かたっ・・・


僕は今、実家である牛鬼うしおに家のお屋敷に居る、ここに来るまでに丸2日・・・本当に遠かった。


「さて早く着替えましょう、風邪をひいてしまうわ」


「あ、はい・・・」


誠君のバンドのマネージャーだと紹介された斗織とおりさんが言う通り、雨に濡れて少し寒い・・・僕は旅行鞄を開けて替えのショートソックスとTシャツ、黒地に白いラインの入ったレギンスを取り出した。


「あら、同じような服ね、もしかしてスカートが苦手な人?」


「いえ、僕は目が悪いのでスカートだと派手に転んだ時に見えそうだし、レギンスやジャージの方が動きやすいから・・・」


「そんな理由があるのね・・・」


斗織とおりさんは初対面の時、距離感が近くて僕の苦手なタイプの人という印象だったけれど今は普通に会話が出来ている。


「充電しようと思ったのにコンセントが1個も無いわ・・・携帯の電波が圏外ってどれだけ田舎なのよ信じられない!」


携帯が使えなくて斗織とおりさんがキレてる、でもお部屋の中は明るいから電気は通ってる・・・筈だよね?。


斗織とおりさん、僕はよく見えないんだけど天井の照明って蛍光灯ですよね」


「え・・・あぁ、そうみたいね、丸い蛍光灯が二重になってる和室によくあるタイプだわ」


「照明はあるのにコンセントが無いって変じゃないです?」


「確かにそうね」


斗織とおりさんは隣のお部屋に続いている襖を開けて探していたけれど結局コンセントは見つからなかった・・・お掃除どうやってるんだろう?。


「湿気が身体に纏わり付く感じが嫌だなぁ・・・」


所々で感じるちょっとした違和感が気持ち悪い・・・正直とても居心地が悪いお屋敷だ。





そわそわ・・・


ちりんちりんっ!・・・


僕はお部屋に置いてある鈴を鳴らして先ほどのメイドさんを呼んだ、2人ともお手洗いに行きたくなったからだ。


ここに来る途中に建っていた蔦の絡まる休憩所にあったのが最後だからもうすでに四時間近く行っていない、ちなみにそこに併設されていたお手洗いは殆ど利用されていないのか蜘蛛の巣だらけで思わず叫んだ。


かたっ・・・


「失礼します、お呼びでしょうか」


障子を開けて戸内どないさんがお部屋に入ってきた、僕はよく見えないのだけど斗織とおりさんの話だと立ち居振る舞いが綺麗で真面目そうな人なのだとか。


「僕達お手洗いに行きたいんだけど」


「ご案内致します、厠はお屋敷の外にある離れになっております」


お手洗いは外だった!。


「田舎の古いお屋敷によくある話だわー」


斗織とおりさんが少し不機嫌そうだ、雨でまた濡れるのを心配して思わず態度に出てしまったのだろう。


長い廊下を歩くとお手洗いに続く渡り廊下に出たようで、斗織とおりさんは良かった屋根があると呟いている。


「お嬢様、お足元にご注意くださいませ」


「お・・・お嬢様?」


戸内どないさんが僕をお嬢様と呼び跪いてサンダルを履かせてくれた。


「はい、牛鬼家の正統な後継でいらっしゃいますのでお嬢様です!」


「あはは、昴ちゃん凄いねー、大金持ちのお嬢様だ!」


笑いながら僕を揶揄う斗織とおりさんを放ってお手洗いに急ぐ、実は結構限界だったのだ。


ぎぃ・・・ばたんっ・・・。


・・・


・・・


「ぼっとんだったわね」


「うん、和式のぼっとんだった」


「和式なんて最後にいつ使ったのかも覚えてないわ・・・」


お手洗いは公衆トイレほどの大きさのようだ、男性用と女性用で分かれていて個室も5つほど並んでいたと斗織とおりさんが言っていた。


でも汲み取り式のぼっとんだから怖いと訴える斗織とおりさん・・・。


「下から手が出てきそうで怖いじゃない!」


気が強そうな感じの人なのに意外と怖がりのようだ・・・。


「こちらの厠の他には旦那様が空いているお部屋を改装して作られた簡易水洗の洋式が離れにあるのですが・・・お屋敷を縦断して8分ほど歩いて頂く必要が・・・」


「うわぁ・・・迷わずに戻って来られる自信がないからここでいいわ・・・あれ、猫ちゃんだ!」


斗織とおりさんが猫を見つけたようだ、猫好きなのかと思ったけどそのまま無言になった。


・・・


・・・


「もうすぐ夕食ですのでお時間となりましたら改めてお迎えに参ります、では失礼致します」


「あ、ちょっと待って!」


お部屋に戻った後、斗織とおりさんが電源コンセントの場所を聞いている、しばらくして戸内どないさんが持って来たのはポータブル電源だった。


どすっ!


「申し訳ありませんがお部屋にコンセントはありません、かわりにこちらをお使いくださいませ」


「無いんだ・・・」


「はい、電気工事をするとなると土壁を壊す必要がありますので」


そう言って戸内どないさんはお部屋を出て行った。


「見た感じまだ新しいわ、掃除器やドライヤーも大丈夫なやつね」


戸内どないさんのフルネームは戸内哲華どないてつかで、もう一人のメイドさんは秋間遍奈あきまへんなと言うらしい、冗談みたいな名前だけど本名なのだとか。


身寄りの無い孤児だった2人を牛鬼家が引き取り、成長した今は当主様に恩を返そうと頑張って働いているそうだ。


「ねぇ・・・」


深刻そうな声で斗織とおりさんが僕に話しかけてきた。


「はい?」


「さっき猫が居たでしょ」


「僕は見えないですけど、斗織とおりさんが猫ちゃんだって言ってるのは聞きました」


「大きな黒猫なんだけど気味が悪いのよ・・・雨が降ってるのに庭石の上に座ってこっちをじっと見ていたわ、まるで私達を睨んでるみたいに・・・」


「そうなんです?」


「えぇ、次にお手洗い行く時にも居たら怖いから一緒に行ってくれない?」


お手洗いの度に戸内どないさんを呼ぶのは申し訳ないので僕は頷いた。


「はい、いいですよ」








食事の準備が出来たと言って戸内どないさんがお部屋に来たので僕達は当主様の待っている広間に向かった、長い廊下を歩いてお部屋の前に立つと障子の向こうから人の気配がする。


かたっ・・・


「お嬢様をお連れしました」


戸内どないさんに手を引かれて座布団のところまで来た、おそらく向こうが上座、そこに1人、僕より2つ下座寄りには誠君かな?、それから僕の隣には一緒に来た斗織とおりさんが立っている。


「私、ここに座っていいの?」


「いいんじゃねぇか」


斗織とおりさんが誠君に座っていいか聞いてる、僕達と向かい合うようにして2人・・・人の気配がするのだけど誰だろう?。


「僕の正面に誰がいるの?(ぼそっ)」


僕は隣に座っている斗織とおりさんに小声で聞いた。


「あんたの目の前に座ってるのは押翼おしよくさん、もう1人は知らない女性だわ(ぼそっ)」


かたっ・・・


障子が開いて誰か入って来た、僕達の目の前に来て夕食のお膳を準備しているようだ、とてもいい匂いがする。


「昴・・・我が牛鬼家によく戻って来てくれた、客人2人も歓迎しよう、遠いところ疲れたであろう?」


重く響くような声が聞こえた、この人が当主様・・・僕のお父さん?。


「お招きいただきありがとうございます?」


何か言わないといけないと思って咄嗟にお礼を言う。


「目が見えぬと聞いたが?」


「いえ、全く見えない訳じゃなくて、光は感じますし顔を近付ければ文字も読めます」


「そうか・・・苦労したであろうな」


「・・・」


「・・・」


お部屋に沈黙が流れる・・・気まずいから誰か喋ってよ!。


「こほん・・・旦那様、自己紹介がまだでございますよ」


この声は押翼おしよくさんだ。


「そうであったな、儂は牛鬼家当主、牛鬼源一郎うしおにげんいちろうである・・・そしてお前の父親だ」


姿はよく見えないけれど僕の父親だと名乗る当主様は威圧感がある、その迫力に斗織とおりさんと誠君は無言だ。


「紹介しよう、まずは昴を迎えに行った圭司けいじ、こいつは元警察官で訳あって退職した後は我が屋敷で働いている、執事でもあり儂の片腕・・・ビジネスパートナーだ」


「ご紹介に預かりました押翼圭司おしよくけいじと申します、今後ともよろしくお願い致しますお嬢様」


「隣に居るのは屋敷のメイドを取り纏めている他、会計や税務の一切を任せておる桜陵おうりょう君だ」


桜陵慶莉おうりょうけいりと申します、よろしくですお嬢様っ!」


何でこのお屋敷は冗談のような名前の人ばかりなのだろう、もしかしてこれは手の込んだドッキリかもしれない、カメラで僕が戸惑う様子を撮影して全国のお茶の間に晒すのが目的?。


そんな事を考えていると当主様が重々しい口調で言った。


「山の中にある寒村故、大したものは出せぬが我が家の料理人が作った料理を楽しんでくれ」


どうやら目の前の料理を食べてもいいらしい、よく見えないのでお膳に顔を少し近付ける。


押し寿司や巻き寿司の入った重箱、お魚の塩焼きと小皿に乗せられたお刺身、下から固形燃料で温められている味噌風味の小鍋、その横には漬物かな?・・・旅館並みの豪華な料理が並んでいた。


もっ・・・もっ・・・


「あ、美味しい」


ゆずの香りがする押し寿司を頬張る僕の隣で斗織とおりさんが呟いている、確かにとても美味しい。


「・・・昴よ、都会暮らしは楽しいか?」


当主様に突然声をかけられた、楽しい・・・かと言われると・・・。


「今は訳あって学校を休んでいます、叔父さんはアメリカでお仕事をしていて一緒に住んでいないのですが僕の事は気にかけてくれているので・・・辛くはないです」


「そうか・・・」


相変わらず会話が続かなくて気まずい・・・。


「あのっ・・・このお屋敷に黒猫が居ますよね、さっき大雨の中でずぶ濡れになっていたのですが」


先ほどの事が気になるのか、斗織とおりさんが猫について尋ねている。


「黒猫ならジョセフィーヌでしょうか?、旦那様の猫ですよ」


僕の斜め向かいで桜陵おうりょうさんが答えた、ジョセフィーヌ・・・この純和風な家に似合わない洋風の名前だ。


「でもおかしいですね、今日はお客様がいらっしゃるからお部屋に入れておくように言ってあったのですが・・・」


「ジョセフィーヌなら儂がここに来る前に猫タワーの上で寝ておったぞ」


猫タワーまで置いてあるんだ・・・。


「いえ、少し前にお手洗いの所に居たのですが」


「・・・どこかの野良猫かもしれぬな」


当主様が答えるのを聞きながら僕はお刺身に箸をつけた。


「あれ・・・」


「どうしたの?」


思わず声を出した僕に斗織とおりさんが話しかける。


「いや、さっきから僕の目がやけによく見える気がして・・・」


そう、このお部屋に来た時から感じていたのだけど眼鏡をかけていても曇りガラスを通したような僕の視界が少しだけ鮮明に見えているのだ、今だってお膳の上にあるお料理の場所が分かる。


「それは・・・この土地をお守り下さっている邪魔神やまがみ様が昴の帰郷を祝福しておるのかもしれぬな」


当主様が胡散臭い・・・いや、スピリチュアルな事を言い始めた・・・邪魔神やまがみ様ってなんだよ。


「雨が小降りになれば屋敷の裏山にあるやしろに挨拶して来るといい、今より更に見えるようになるかもしれぬぞ」


「あ・・・はい・・・」





挿絵(By みてみん)

神威崎昴かむいざきすばるさん


挿絵(By みてみん)

神威崎昴かむいざきすばるさん(眼鏡)


挿絵(By みてみん)

神威崎昴かむいざきすばるさん(帽子)

読んでいただきありがとうございます。


趣味で空いた時間に書いている小説なので不定期投稿です、続きが気になる人はブックマークして気長にお待ちください。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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