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いつもとは違う一日

 騎士であるアーロンは朝、馬で国王の住む城にある騎士団へと出勤し夜、エレーヌ達が住む伯爵城へと帰ってくる。王城で暮らしている者もいるが、大抵の貴族や騎士は王城の外に領地を貰い、そこからアーロンのように通っている。

 そんなアーロンをエレーヌも朝、見送り、昼は針仕事をしたり医務室(侍医が常駐している部屋)に顔を出したり夜、出迎える。

 余談だが、エレーヌの父の後を引き継いだ侍医は、前世の記憶が甦る前のエレーヌと接点があったので、バレるかと緊張したが――若い頃に(今は父より少し下の四十代前半である)ハニートラップで当時の職場を追い出されて以来、若い女性が苦手なのだと言う。流石に患者としては対応出来るが、エレーヌとは普段から距離があるし、会話も最低限しかない。だからバレないし、医学書も借りることが出来るので重宝している。


(んっ……?)


 今宵も、エレーヌは日課通り、帰城したアーロンを出迎えた。

 しかし、何かいつもと雰囲気が違う。アーロンの目が据わっていて、口角が下がっている。無表情だから、不機嫌に『見える』ではない。完全に怒っている。

 王城か騎士団で、何かあったのだろうか? 怖かったが、居合わせた侍女や使用人たちも萎縮していたので、指摘というより我に返って欲しくてエレーヌは声をかけた。


「あの……何か、ございましたか?」

「…………」

「アーロン」

「……食事の時に、話します」


 エレーヌの問いかけには答えなかったが、伯爵夫人からの呼びかけには渋々とだが返事をした。給仕や侍女であるシルリーがいるが、食堂だったら人数は最低限だ。それに、エレーヌも一緒である。

 だからその場ではそれ以上聞かず、食堂でアーロンが話すのを待った。やがて、肉料理を食べ終えたタイミングで、アーロンが話し始めた。


「初めに言っておきますが、もう終わった話です……バルト国から、ブランシェ王女と私との縁談の話が参りました」

「えっ?」


 驚いて、思わず声が出てしまう。元々、アーロンはエレーヌとの婚姻を望んでいなかった。そこに王族からの話とくれば、渡りに船とばかりに飛びつくのではないだろうか?


「アーロン? まさかあなた、エレーヌと離縁して再婚するなんて言わないわよね?」

「当然です! と言うか、そういう話は来ましたが断りましたし、私に話す前に実は陛下も断っていたのです。ただ当事者なので、他の者から聞くよりはと……だから私も今、母上とエレーヌに話しました」

「それこそ当然です。我が家の嫁は、エレーヌだけですからね」


 アーロンの説明と、伯爵夫人の言葉にエレーヌは追い出されずに済んだとホッとした。アーロンからは「いつの間に母と仲良くなったのか」という目で見られたが、それこそいつの間にかなので、言葉にせず笑って流すことにした。


 ……話は、そこで終わったと思った。

 しかし一週間後、直接、エレーヌに謝りたいとブランシェ王女が訪れるとのことで、急遽、王宮の宴に呼ばれることになる。

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