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演劇少女は、新妻(ジュンヌ・マリエ)の人生を紡ぐ  作者: 渡里あずま


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協力者を手に入れた

「……あなた、誰?」

「っ!?」

「その反応。やっぱり、エレーヌじゃないわ……って、ごめんなさい! いきなり訊かれたら、怖いわよね!?」


 図星を指されたのに、さっと血の気が引いた。実際、表情にも出たのか、途端にシルリーに謝られた。

 とりあえず寝台に腰掛けるよう促され、そんなエレーヌの前に椅子を持ってきて腰掛けると、シルリーは種明かしをしてくれた。


「私が知っているエレーヌは父親が生きている時も、亡くなって新しい侍医の助手になった時も……伯爵家に、そして若様に恩返しするんだってそればっかりで。確かに頭は良いんだろうけど全然、周りを見る余裕がなくて表情に乏しくて。それなのにあなたは、笑うし焦るし……あ、安心して? 私は今のあなたの方が、面白いと思うし。他の使用人達は結婚式だし、伯爵夫人になることの重圧で、逆に人間味が出たんだろうって思ってるから」

「そ、そうですか……あの、私は『エレーヌ』なんですけど。実は結婚式直前に、前世の記憶に目覚めまして」


 何だか気になる単語があったが、脅すつもりなら先程のように謝りはしないだろう。

 そんな訳で、エレーヌはここが物語の世界だということは隠し、単に別の世界からこの世界に転生したことをシルリーに話した。


(自分が物語の世界の住人だって、人によっては複雑だろうから……わざわざ、言う必要はないわよね?)


 そう思い、話を締め括ったエレーヌにシルリーが言う。


「そんなことって、あるのねぇ。それで前世とやらでは、あなたは私や『エレーヌ』より年下なのね。それで結婚とか、出産とか……あ、敬語禁止! 中身はどうでも、私は侍女であなたは主人なんだし。出来る限り、助けるから……って、私こそ敬語の方がいい?」

「ううん。二人の時は、素で話してほしい……あと、シルリーに聞きたいことがあるの」

「何?」

「……私、妊娠してるの?」


 エレーヌの質問に、シルリーは笑顔のまましばし固まり――やがてエレーヌの手を両手で包むように握ると、首を縦に一回振った。


(そっかぁ……授かり婚からの、セカンドライフかぁ)


 思わず遠い目になるが、お腹の子供に罪はない。幸い、シルリーという協力者も出来たし、気を取り直してエレーヌを演じよう。

 裏方の時もやっていたが久美は調べたことを書き出し、そこに更に自分なりの解釈を加えていって小道具や衣装を作っていた。

 だからエレーヌになりきる為、シルリーにはエレーヌの話を聞かせて貰うのと、役作りについて部屋で紙に書き出すのを(一応、日本語にした)黙認するよう頼んだ。


『この時代でも、医者になるには学校に行くのね。ただ、まあ、女の身じゃ学校に行くのは無理か。だから、父親や新しく出来た上司に、仕事を手伝いがてら色々聞いたのね』

『てか、大体は父親とか上司に聞いてだけど、あとは伯爵家の伝手で手に入れた本を読ませて貰って、自分で試したりもしてたのか……だからこそ、他の医者が匙を投げた国王の病気を治せたのね』


 こうして、エレーヌは部屋で安心して役作りを――部屋で一人、思いつくままにブツブツと、書き込みを増やしていったのだった。

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