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演劇少女は、新妻(ジュンヌ・マリエ)の人生を紡ぐ  作者: 渡里あずま


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主張が大渋滞

 いつもはアーロンが一人で移動するので、王宮までは馬を使っている。

 しかし今回、身重のエレーヌも同行するので馬車で移動することになった。それ故、今日のエレーヌは薄化粧をしてドレスを纏い、馬車の中以外はアーロンに手を引かれてエスコートされている。そして王城へと入り、宴の会場へと到着したのだが。


(……来たばっかりだけど、帰りたい)


 そう思ったのは、視線の先にいる王女・ブランシェのせいだ。

 絹糸のように艶やかな金の髪。輝くような白い肌。髪と同じ色の長いまつ毛が、大きな水色の瞳を縁取っている。

 エレーヌより一、二歳年下だろうか? 同じ窄衣型のドレスではなく、コタルディ(五分から七分丈の袖と大きく深めな襟ぐり。スカート部分は、腰を細く見せる為に裾広がりに広がっているドレス)を着ていた。そのドレスの鮮やかな赤色と同じく赤い口紅が、彼女の白い肌を引き立てている。華やかな美少女なので、もっと未来に流行るフリルドレスも似合いそうだ。


(現実逃避しちゃった……美少女だけど、微笑んでるけど、目が笑ってないってことは謝りたいっていうのは多分、嘘よね)


 それはアーロンも感じたのか、エレーヌの手を握っている手に力が入るのが解る。

 大丈夫だと、そっと手を握り返すことで応えたところで──ブランシェから謝罪どころか、喧嘩を売られてしまった。


「ごきげんよう。私は、ブランシェ……そちらの名乗りは、必要ないわ。あなたはただ、身の程を弁えてくれれば良いの」

「えっ……」

「平民と結婚していても、アーロン様の為にはならないでしょう? 私と結婚すれば、互いの国の友好の証となるわ! アーロン様も! その平民は、あなたの役には立たないでしょう!?」


 ごもっとも、と内心で言うしかなかった。しかし、口に出したら無礼だと叱られそうなので何とか耐えた。

 貴族や国王がいるこの世界では、身分の低い者が高い者へと話しかけることは出来ない。それを解っていて、ブランシェは言いたい放題言っているのだろう。


(アーロン様や陛下は、断ったらしいけど……まあ、目の前のお姫さまの言う通りではあるのよね)


 そう思っていたら、アーロンが思わぬ行動に出た。何と、ブランシェに発言の許しを請わず力説を始めたのだ。


「殿下! 役に立たないのはむしろ、私の方です! 伯爵家の嫡子でありながら口下手で、剣を振るうことしか能がありませんっ……自分なんかより、妻にはもっと相応しい男がいると解ってます。ですが、妻が私を選んでくれたのなら……離婚なんて、冗談じゃない! これからは、私が妻を支えたいのです!」


 誰だよ、コイツ。

 申し訳ないが、それがアーロンの言い分を聞いた時のエレーヌの素直な感想だった。

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