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お断りだ

俺は、言われてしまった。この世界を救ってくれと。

君が、最後の希望だ!君なら絶対に英雄に!世界を救えると……。

しかし、俺は思った。どこにそんな根拠があり、どこぞの馬の骨に世界の命運を任せることかできる。

この世界の住人は自分勝手だ。いや、元の世界も同じようなものだった。最後は、自分のことを考えることしかできない。自分勝手な人ばかりだ。俺も、その中の一人だろう。

だから、王様っぽい人にこう言ってやった。

「お断りだ」

俺は、言われてしまった。この世界を救ってくれと。

君が、最後の希望だ!君なら絶対に英雄に!世界を救えると……。

しかし、俺は思った。どこにそんな根拠があり、どこぞの馬の骨に世界の命運を任せることかできる。

この世界の住人は自分勝手だ。いや、元の世界も同じようなものだった。最後は、自分のことを考えることしかできない。自分勝手な人ばかりだ。俺も、その中の一人だろう。

だから、王様っぽい人にこう言ってやった。

「お断りだ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

俺は加藤かとう すぐるいわゆる社畜だ。常に上司の機嫌を伺い。会社のためにデスクワークをこなす。

何かあればそれは自己責任。それは当たり前のことだ。今の学生でも知っていること。しかし、学生と社会人の大きな違いは自分の失敗や行いを平気で他人に押し付けることができるという点だ。すべては自分の評価のため。そのためなら手段を選ばない奴もいる。そんな社会の裏を、大人の裏を知ってしまった。

上に上がらなくていい。このままで、のんびり、争いの起こらない最下層が最も安全で平和である。

そんな、いつもの平日仕事終わりの夜。公園で一人、コンビニで買った缶ビールを片手にベンチに腰を下ろした。ふと、空を見上げる。町中の人工的な光が空に輝く何億光年も離れた星の輝きを薄くしていた。

実家ならもっと綺麗に星が見えるのだろうと。数年前の学生だった頃の記憶を掘り替えす。

丁度良く心地よいぐらいに酔いが回ったところでいつもの帰路に歩みを進めた。

いつもは騒がしい通りがやけに静かに感じる。まるで、俺以外の人がいないように。いや、人以外の生物もいないように感じた。

ふと、目の前の街灯を見る。街灯の光が激しく点滅した。

その瞬間、目の前に人影のようなものが現れた。

「お前は選ばれた」

そう、男の声が聞こえた瞬間、視界が暗転し、先ほどとは全くと言っていいほど景色が変わっていた。

「どこだここは・・・」

目の前には中世風の格好をしている王様らしき人物とその周りにいる騎士の格好をしている人達がいた。

王様は口を開いてこう言った。

「この世界を救ってくれ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

静寂が謁見の間に広がる。

皆が驚きのあまり開いた口がふさがらない様子だった。

慌てて、大神官らしき人物が概要を話始めた。

話が長ったらしかったので自分なりにまとめてみた。

この国は聖王国アガルシア、対魔王用に作られた王国らしく、この国を囲う城壁には常に聖魔法がかけられており並みの魔族なら触れるだけでその身を塵にするほどの力があるとのことだ。

そのため、人々からは人類最後の砦として崇められているらしい。

そして、この目の前にいる髭ずらのおっさんがこの国の王様で”アガルシア・アルン・ディード王”というらしい。

そして、今魔王が、世界を支配しようとしているとのこと。

しかし、俺からすればそんなこと知ったことか。突然連れてこられた挙句、世界を救ってくれときた。

そんなことして、俺になんのメリットがある。

世界最強の名声がもらえる?世界中の女からモテる?莫大な資産が手に入る?

いるか、そんなもん。

俺はただ平和で安全なところでのんびり暮らしたい。ただそれだけ。

あの世界でもそうしてきた。それ以上は何も望まなかった。

だから言ってやったんだよ。

「お断りだ」ってな。

だが、相手もまだあきらめていない様子だった。

今日のところは勇者の召喚に成功したことを祝うから一度落ち着いてと言われた。

俺の頭は至って冷静かつ迅速に動いている。

なぜなら、俺は・・・。

オタクじゃないぞ。

こんなことなら、ライトノベル、漫画、アニメをもっとよく嗜んでおくべきだった。

あーこんな時のテンプレってなんだ。

俺にはそんな知識は豊富にない。

親友に一人、異世界召喚、転生マニュアルなんてものを作っている奴もいた。

くそー。そいつのマニュアルを読んでおけばよかった。

今更後悔しても遅いがな。

とりあえず、宴を楽しむしかないか。世界は違えど人間は人間。元の世界とあまり変わらない。

お酒を飲めば陽気になり騒がしくなる宴とはいえ、みんな楽しそうだ。

社畜だった俺からすれば酒場なんてものは上司の顔色を伺いながご機嫌取りをする退屈な場所だ。

俺もこんなふうに楽しく飲んでたのはいつだっただろうか。

思い出せないほど昔なのか、はたまた俺の脳が酒場=退屈で消去したか。

まぁそんなことはどうでもいい。

速く一人になりたい。ただそう思っていた。

近場にいたメイドに俺は尋ねた。

「召喚の儀式のせいか、少し疲れが出たみたいだ。早く休みたいのだが自室はあるのか」

ただ宴を抜けると伝えると止められそうだがこういえば止められることはないだろう。

「では、ご案内いたします」

そう言ってメイドは俺を自室へと案内を始めた。

「私は勇者様専属メイドのヘルシアでございます。これより勇者様の身の回りからすべてお世話させて頂きます」

ヘルシアと名乗るこの人物はなぜだか他の者たちとは違う”何か”を感じた。

白と黒で交互に並べられ自分が鏡のように反射するほどきれいに磨かれた大理石で出来た長い廊下に赤いカーペット。

たくさんの扉に螺旋階段。見れば見るほど異世界だ。こんなもの地球では見たことがない。

外を見れば中庭にしては広すぎる園庭。

きれいに整えられた植木。生き生きと咲く花壇に植えられた花たち。

「こちらになります」

そうしているうちにどうやらついたようだ。

数分歩いたところだろうかどうやらここが俺の部屋らしい。

扉を開けると真っ暗な部屋とご対面だ。

「”光よ来たれ”ライトボール」

真っ暗な部屋に灯りが灯る。

「それではごゆっくりおくつろぎください。」

そう言うとバタンと扉を閉められた。

「あれは魔法ってやつか」

元居た世界では魔法は本の中だけの想像上の力だが、この世界では普通なのか。

魔法を応用して日常的に使うこっちの世界と科学を応用し日常的に利用する元の世界。

発展の違いなだけで本来元の世界でももしかすると魔法が使えたりして……。

そんな無駄なことを考えながらベットに横になる。

ふかふかだ。適度に反発するいいベットだ。元の世界なら間違いなく高級品。社畜の俺では買う気にすらならない物だが案外そうでもないのかもな。

「はぁ~」

深い深いため息をついた。

横になり一息付けたからだろうか、今までため込んできたものが一気にあふれ出てくるこの感じ。

悪くない。

今まで自分が頑張ってきたんだなと思える瞬間だからだ。

だが今回は違うもうすでに問題が山積みだ。

とりあえず……。

「寝るか」

そう思い目を閉じる。

「……ます。……ございます。」

何か聞こえる。なんだ。

「……来たれ”ライトニング!”」

その瞬間、俺の体に電気が走る。

「アババババババッ!!」

意識が覚醒し状況を理解するために脳がフルスピードで回転しているのが分かる。

とりあえず目を開けると目の前にはヘルシアが立っていた。

ヘルシアの手にはイナズマが走っているように見えた。

「ヘルシア……お前……」

「……?」

俺の声掛けにヘルシアは首をかしげる。その顔は何を怒っているのか分からないという表情だった。

「おはようございます。起きてください。朝食のご用意ができております。冷めないうちにとお呼びに参りましたが起きる気配がなかったので少々魔法を行使いたしました。」

魔法?俺の聞き間違いじゃないのならこいつ魔法を使ったって言ったよな。

「えっと……。なにを……」

「ライトニングを少々。出力を弱めてますので死なない程度に加減いたしました」

表情がピクリとも動かない。

「え?その魔法……殺傷能力あるの?……ちなみにどれほどの威力で?」

「人族ならコロッと……」

ヘルシアの表情が不吉な笑みを浮かべる。

「えっ?何今の表情……怖いんですけど」

「いえ……なんでもございません。こちらの話です」

この子もしかして、ヤル子なのか?そう思うと背筋に寒気が走る。

とりあえず、話を戻しておこう。

「えっと……朝食だよね。」

「そうでした……。朝食の準備が整いましたので食堂へお願いします。その前に身なりを整えましょうか」

そいえば、俺まだ寝起きだった。

パチンッ!と突然ヘルシアが指を鳴らす。

すると、待ってましたと言わんばかりに扉からたくさんのメイドたちが箱やら鏡やらを俺の部屋へと運び込む。

その仕事の速さは玄人並。ベットしかなく寂しい俺の部屋に衣装部屋ができていた。

パチンッ!と再びヘルシアが指を鳴らす。

これまた待ってましたと言わんばかりに整列すると箱をバッと空ける。箱の中にはそれぞれ特徴のある服が入っていた。

その箱を一つ一つヘルシアが吟味する。

「ダメッ!これもダメッ!……」

そうしてたくさんの服たちが片付けられていく。

もう、後がないと思っていたが、何も言わずヘルシアがピタッ!と動きを止めた。

「これを見せて頂戴」

「はい」

メイドが服を箱から取り出す。

「ふむ……これなら、少しはまともに見えるだろう……」

そうしてまたパチンッ!とヘルシアは指を鳴らす。

今度はなんだ?と思っていたらところに後ろからメイドにがっしりと捕まれる。

身動きが全く取れない。女だよなしかも結構華奢な身体つき、どこにそんな力があるのだろう。

身動きが取れないまま、衣装部屋の奥へと運ばれた。

「ちょッ!自分でやれますから!」

「動かないでください!腕!捥げますよ!」

その言葉を聞いて俺は抵抗をやめた。

「お似合いです!」

「おお!」

鏡に映る自分は先ほどとは比べ物にならないほど整っていた。

黒髪に黒のタクシード?まぁとにかく全身真っ黒ろだ。

いい感じにまとめられた髪型も結構気に入っている。我ながら自分に惚れそうだった。

「それでは食堂へ……場所をご存じなかったですね。今回だけ案内いたします。次回からはご自分で時間通りにお願いします。もし時間を過ぎてしまった場合、朝食はありませんのでお気を付けて」

「あ、あと言い忘れておりましたがこのようなたるんだ生活をしていると手加減なしでライトニングを行使いたしますのであしからず」

「あ、はい」

朝食抜きは流石にしんどいしこんなことで死にたくない。次回からはちゃんと起きよ。と心に決めた俺だった。

昨日通った長い廊下を進みながら窓の外を見る。

庭師が植木や花壇を整えていた。

みんな楽しそうだ。俺が仕事をしているときは決まって死んだ魚の目をしている。あんなにも生き生きとは仕事はできない。いや、昔はしていたのかもしれない。

あれは入社1年目の時だっただろうか。やっと大人になれたことに対するうれしさと期待に胸をいっぱいにさせていたあの頃を。

なぜだか彼らを俺は羨ましく思ってしまった。

もう俺はあんな表情で仕事をすることはできないだろう。

「ここが食堂です……。ライトニング」

「アババババババッ!!」

いきなりの刺激に辛気臭い考えが一瞬で吹き飛ぶ。

「おい!いきなり何しやがる」

「いえ、目が死んでいたもので……。てっきり立ったままお亡くなりになられたかと……」

「そんな高度なことできるかぁ」

「そんなことよりこちらが食堂です」

そこには長い机にたくさんの食材やら料理が陳列していた。

ぐぅぅぅう~。腹の虫が鳴った。そういえば昨日の夜こちら側に来る前は仕事終わりで何も口にしていないし、こちらに来てからも宴の料理には手を付けていない。それは腹もすくはずだ。

「こちらの席が勇者様の座席でございます。それではごゆっくりどうぞ」

案内されるがまま席に座る。

手を合わせて。

「いただきます」

「それは何ですか?何かのおまじない」

ヘルシアが何言ってるだこいつという表情で俺のことを見ながら聞いてきた。

「これは俺の国で伝わる……なんだ?まぁ、他の生き物の命を頂くことへの感謝?みたいなものだな」

「なるほどこちらでいうところの”ラーフル”に近しい言葉の様ですね」

「ラーフルってなんだ」

「私たちは生き物を狩った後にこの言葉を述べます。感謝と敬意。これらを含めた言葉です」

なるほど、確かに”いただきます”に近しいものを感じる。

「私は、自分の仕事に戻りますので食事終了ごこちらのベルを御鳴らしください。手の空いているメイドが迅速にやってまいります。そのあとは、メイドの指示に従ってください。」

「おう!分かった」

食材に手を伸ばす。そしてそのまま口の中へと放り込み噛みしめる。

「うまぃ」

久しぶりの食事にこの新鮮で生き生きとした食材たちは俺の空腹な胃を満たしてゆく。

「ご馳走様でした」

食べ終わった後は確かベルを鳴らせばいいんだよな。

机の上に置かれている銀色のベルをチリンッ!っと鳴らす。

「お食事はすまされましたか」

「!?」

急に真後ろから声が聞こえる。

「びっくりした。いつの間に……」

「貴方様のお部屋の掃除が終了したのちこちらのベルが鳴ったのでいつも通り食堂まで移動しただけですが?何か」

確か、俺の部屋からここまで歩いて数分はかかるはず……。もしや瞬間移動的な魔法があったりとかするのだろうか。

「瞬間移動の魔法でも使ったのかい」

「はぁ」

あれ、もしかして何かヤバい地雷でも踏んだか。

「貴方様、ご冗談はおやめになってください。そんな魔法は存在しません。現在でも魔法学会最高機関であるユグドノーツが全総力を注いで研究中なのですから」

魔法学会ユグドノーツか。また新しいものが出てきたな。学会があるという事は学校があるという事か。今度聞いてみるか。

「それじゃあ、どうやってここまで」

「えっと、走ることは禁じられておりますので走らない程度に急いできましたが」

あれ?これって俺がおかしいのか?この世界ではこれが常識なのか……。まぁ。いいか。気にしない気にしない。

「これから俺はどうすればいいんだ」

「お食事後のご予定はこの後、王との謁見が終わり次第自室にて待機です」

また、あの王様と会うのか……。どうせまた魔王をたおしてくぇ~。とか言うんだよな。はぁ。憂鬱だ。

しかし、ヘルシアとの約束だ。メイドの指示には従う。じゃないとまたあの魔法が飛んでくる。

「いくか」

俺はそうして重い腰を動かすのであった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

次回、国王と再びの謁見。さて卓はまたもお願いをされてしまうのか。

そしてヘルシアに感じた違和感の正体とは……。

勇者が学校に通う!?

乞うご期待!!

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