1.非日常ハ如何?
「小野崎くん、ここ見えますか?」
「えっ、はい…上です…」
学校の視力検査。先生は棒で検査板の真ん中辺りを指している。
すぐに見えた。しかし驚き答えるのが遅れた。何故なら、
見たくないモノも見えてしまったから。
先生の首に巻きつく手足の生えた蛇
おそらく見えてるのは自分だけだろう。
(気づかれたら襲われるしな…無視だ無視)
ある日を境に見たくないモノが見えるようになってしまった。
報告書
4月2日 PM16:25頃 □□都○○区✕✕駅前 居酒屋裏口
死者1名(一般人) 上記の居酒屋店員と思われる
分類・人型 ランクD
~詳細省略~
※偶然通りがかった学生により消滅
新学期2日目。今日は身体測定、部活説明会などで1日が終わった。特に何かをした訳じゃないがとても疲れた。昨日から通い始めた高校の居心地は最悪だった。2日目にして転校したいと心から思っている。
「ちょっと多すぎるよな。いくらなんでも。」
生徒数ではない。見たくないモノの数だ。12匹までは数えたが面倒くさくなって途中でやめた。教室、トイレ、階段、廊下…どこを見てもソレはいた。普通は人が多いところにはあまり集まらないのだがあの学校は別らしい。
ソレに近づくと気分が悪くなる。気持ちの悪くなる何かを放っているようだ。見えない人はなんともないらしい。
(本当に損だよ。明日休もうかな。)
そんなことを考えながら昨日見つけた近道を歩く。この路地を通れば10分ほど早く家につける。ダルいので早く家に帰りたかった。人通りは少ない。そう少ない。
そんなところにソレはいる。
「グチャグチャパキッ」
「ズルズルッ」
「ピチャピチボキグチャ」
ソレがいた。人の姿をしたソレが。不愉快な音を奏でて人を食べていた。ソレの足元には人の体だったものが転がっている。体を失った頭はこちらを見ていた。
「うっ…オエッ…」
ソレが人を食べている光景は何度か見た事があったので普段なら急ぎその場を立ち去っただろう。今日はダメだった。1日中ソレの放つ何かに当てられ体調は最悪。不愉快な音、血の匂いに思わず吐いてしまった。
(早く逃げないと)
遅かった。人の姿をしたソレがこちらに歩いて来る。
ゆったりとした足取りでこちらへ歩いてくる。
赤いコートに破れたジャージを着て
不気味に赤く光る目
裂けた口からは血が垂れている。
「シ:ャハタヤ85サカヨワナ1ヨマ9ナタサノタヒテ2ヒノメ」
意味不明な声と共にその顔が目と鼻の先に
逃げられない。俺は覚悟を決めカバンに手を…
突然目の前にいたソレが吹き飛ぶ。ソレがいた場所には男性が立っていた。この男性が蹴飛ばしたようだ。
「君、大丈夫?というかアレ見えてる感じ?」
年齢は30代前後だろうか。黒いスーツに赤いネクタイ、肩まである黒い髪を後ろで束ねた男性。
「君はこの区域の子かな。まだ未登録だよね。だよね?お願いそう言って。じゃないと私が怒られちゃうから。もしかしてだけど最近引っ越して来た感じ?」
優しい声色で聞いてきた。
「まっ、詳しい話はまた後で。下がって。」
そう言うと男性はソレに向かって身構える。
どうやらアレを倒してくれるらしい。
「いえ、大丈夫です。」
貸しは作りたくない。自分のことは自分で何とかする。
これからもずっと。
俺はカバンからプラスチック製の小さなナイフを取り出す。これを使うのは久しぶりだ。緊張でナイフを持つ手が少し震える。
「自分の身ぐらい自分で守ります。」
「形成素材変化鋼!!」
ソレに向かって一直線に走る。先程の蹴りのダメージが完全に抜けきらずフラフラとしているソレの心臓目掛けてナイフを思いっきりそして深々と突き刺す。
「マママ!!!マ43オネヒケメコリノ2ヤヨヤャ6…」
ソレは奇声を上げ倒れた。
「お見事っ!!けっこう手馴れてる感じするね。」
男性はわざとらしい大きな拍手を俺に向ける。てかこの人何者だ。
「お互い自己紹介といこうか。私は藤川。君、名前は?」
「小野崎希望。どにでもいるごく普通の 高校1年生です。」
(普通ではないと思うよ…)
続く
初投稿です。
頑張って完結させます。
誤字脱字、ご意見ご感想いただけると嬉しいです。