村で依頼を受けました
「盗賊退治?」
私は訪れた村の村長さんから話を持ち掛けられた。
「はい。追い払ってくれるだけでもお願いできませんか?」
「わかった。できる限りのことはやってみるわ」
「引き受けてくださいますか!」
村長さんの顔が一転して明るくなる。
かなり困っていたのが目に見えて分かった。
「では、報酬の件ですが――」
「そういうのは後にしましょう。困ってるんでしょ?」
私は村長さんの話をさえぎって提案する。
「しばらくお世話になりそうだし、食事とお部屋代をよろしく」
「それでよろしいのですか?」
「細かいことは終わってから。出来高で良いでしょ?」
私がそう告げると、村長さんは盗賊がよく出る場所を教えてくれた。
村長さんと一緒に村を歩くと、村人からの疑惑のまなざしを感じる。
それを解消すべく腕前を披露することになった。
「綿毛召喚」
私は手のひらに綿毛を召喚する。
「光色変化」
手のひらにある綿毛の色が変わっていく。
「小風舞」
そよ風を召喚し、綿毛を飛ばす。
「対象変化」
飛ばされた綿毛が観客の近くで蝶の形をした花に変わり、村人の手に渡る。
拍手が起きて、場が盛り上がる。
さらに続けようとしたところで、村長さんが割って入る。
肩透かしを食らわされたものの、私は拍手に応えて手を振った。
「ありがとうお姉ちゃん」
子供がお礼にと小さな鳥の彫刻をプレゼントしてくれた。
村長さんに聞くと、彫刻品はこの村の特産品とのことで、快く受け取る。
ベルトポーチに鳥の彫刻を入れ、マントを翻し村から出発した。
「さあて、どこにいるかな」
村長さんから教えてもらった場所は複数ある。
地図を広げ、場所を確認しようとすると木々の隙間から光が差し込む。
「魔法を使うには、まだ早いか」
私は直感で選んだ場所へ、歩きだす。
(魔法でやっても良いけど、自分の足で探しても良いよね)
地図をしまって手紙をしたためると、手を組んで大きく伸びをする。
ローブからのぞくネックレスに光が当たり、きらめきを放つ。
鳥の鳴き声と木々のそよぐ音を聴きながら、ゆっくりと道を歩く。
「姉ちゃん、ひとりかよ」
坂道を上り終えると、ショートソードを持ったいかつい男性に話しかけられた。
「そうよ」
「世の中、物騒だぜえ。武器ぐらい持って歩きな」
「あいにく売り切れててね」
「ならついてきな。ショートソードぐらいくれてやんよ」
周囲に人の気配を感じ、私は相手に従うことにした。