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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大魔王トーナメント

作者: ペンちゃん

      1魔王見習い現わる


  気づいたときにはそこにいた。

 俺にはそうとしか思えない。

 

 俺が作ったゲーム…全く人が集まらなかったけど渾身作の…。

 

 そのゲームを起動した…そこまでは覚えている。

 

 だが今俺はよく分からない岩だらけの不毛な土地に立っていた。

 

 見知らぬ土地…。

 見渡しても見覚えのある物は何も無い。

 

 そして異変に気がついた。

 服がおかしい…それに腕も…。

 俺はこんなに綺麗な手をしていた覚えはないし爪もこんなに伸ばした事も無い。

 

 だが…見覚えはあった。

 自分が丹精を込め入念にデザインしたキャラクターだ、分からない訳がない。

 

 「我は大魔王ラミナなのか…?」

 

 我…俺と言おうとしたのだが何故か自然とその言葉が出た。

 

 「いったいどうなって…」

 

 手を広げたり閉じたりを繰り返し自分がラミナになった事を確認する。

 その中で指を鳴らした時、文字の塊が空中に出現した。

 

 それは自分が考え作った設定。

 プレイヤーが使用する事のできるシステムだ。

 魔物を討伐したポイントで様々なことができるシステム。

 

 主にそのポイントはレベルを上げる為に扱うのだが他にも同じポイントで武器や食料、様々な物や施設と交換することが可能だ。

 

 我ながらよく考えたものだ。

 数少ないプレイヤー達には全く好まれなかったみたいだけど…。

 

 それはそうと現在表示されている文字…そこにはあるはずのレベル上げ表示は無い。

 というかバグっている。

 そもそもこの今の俺…敵キャラにレベルは設定していない。

 そのためだろう。

 

 つまりこれはショップのみ使えるという事だが現在は0ポイント。

 つまるところ…今はなんの役にも立たないただのゴミということだ。

 

 そう考え表示を閉じようと再び手を広げたり閉じたりを少し繰り返し結局先程と同じようにするしかないと思い指を鳴らそうとした。

 だがその瞬間、後ろからニワトリのような獣の鳴き声が聞こえとっさに振り向く。

 

 振り返り後ろを見るといつの間にそこにいたのか自身の背を越える大きなニワトリの化け物がそこにいた。

 

 「んな…」

 

 コカトリス・10PT

 

 驚き見上げた瞬間その文字が表示され、その文字の背後でコカトリスがくちばしを尖らせスローモーションで襲ってくる姿を見る。

 

 ラミナは確かに最初は驚きの表情を見せてはいたがもう既に驚いている素振りは無く気づけば手刀を構え振り下ろしていた。

 

 大魔王ラミナの技 断絶。

 

 その技は一直線のみで横の攻撃範囲は手の平分しかないがその代わりに遥か後方まで切り裂く無慈悲の一撃。

 本来は空中に浮遊し無数の斬撃を放つモーションがあるのだが今は手を下ろしただけ…だがそれでも十分すぎる。

 

 ゲーム世界での防御手段は無く一撃で即死、躱す事のみがこの攻撃の対策方だ。

 

 ラミナはそんな事を知る由もないコカトリスを綺麗半分に割り、後方にある岩や地面までにも綺麗な亀裂を走らせた。

 

 「マジかよ…」

 

 無意識に出た技に驚きながらも自分が作った技を放った事に喜びをおぼえる自分がいる。

 

 そして自覚した…。

 

 自分は大魔王ラミナであると。

 

 そんな高揚感に包まれたまま死んだコカトリスを見て手の平の文字に視線を戻す。

 

 10PT

 

 やはりそうだ、ポイントが手に入っている。

 自分の作ったシステムが今、目の前で現実の力に変わった事を実感し笑みが溢れ大魔王ラミナは口を抑え天を仰ぐ。

 

 これからどうするか…考え…妄想が膨らむ…さてまずは…。

 

 そう行動を起こそうとしたその時、背についたマントがグイグイと引っ張られた。

 

 「ヨシ!!捕まえた!

 お前に決めたぞ!

 私の配下になれ!!」

 

 幼き女の子の声…。

 こんな魔物のいる土地に?

 頭に疑問を浮かべながらも声のする足元を見る。

 するとそこには禍々しい角を頭に生やした小さな女の子が確かにそこにいた。

 

 「ニヒヒ…!

 私の狙ってた配下をあんな簡単に仕留めるとはお前なかなかやるな。

 この魔王見習いのイルミナ様に仕えさせてやる!!」

 

 満面の笑み…可愛いい…。

 だが言ってる事は聞き捨てならん。

 俺の中の感情…いやラミナのプライドがそう叫ぶ。

 

 「ほう…配下とな?」

 「そうだ!!

 お前はもう私の配下だっ…」

 

 バチンっ…。

 

 軽く…そう軽く…軽くやったつもりだった…。

 

 デコピン、それも小指の…。

 

 少女はゴロゴロと転がり壁にぶつかる事で止まる。

 

 「す…すまん…まさかこんな事になるとは…思いもしなかった…」

 

 慌てて駆け寄り背に手を添え体をお越し安否を確かめた。

 とりあえず頭は繋がっている。

 そして、頭を抑え涙を流している事から命に別状はない事を確認する。

 

 「ああ…本当にすまないことをした」

 

 少女は頭を抑えギリッとラミナを睨み大きな声で泣きじゃくり始めた。

 

 「お父様にも打たれたこと無いのにぃぃーーーー!!

 お前なんかお父様がけちょんけちょんのグチャグチャにするんだから!!

 私の方が偉いのに!!

 うわぁあああはああん!!!」

 

 一体どうすれば…子供の相手など人生で一度ともした事も無い俺には何をどうすればいいのかさっぱり分からない。

 

 あたふたと取り乱し、大魔王らしくもない行動をとってしまう。

 

 そうだ…確か飴玉がショップにあったはず…。

 

 ラミナは慌てた様子で指を鳴らしショップを開く。

 

 10PT 飴玉…スタミナと生命力を少し回復させるアイテム。

 

 すぐさま先程稼いだポイントを捨て飴玉を選択する。

 

 すると飴玉が何もない空間からポンと現れ手の平に落ちた。

 

 「ほっ…ほら飴ちゃんあげるから泣き止んでくれ…」

 「飴ちゃん?」

 「ほら、口を開けろ」

 

 全く話を聞かず言う事も聞く様子も無い為口を開けた瞬間に放り込む。

 

 「グス…エグ…んん美味しい…。

 美味しい!!」

 

 泣き止みなんとかなったとホッと胸を撫で下ろす。

 そのときに知る。

  イルミナ 3000PTの文字を。

 

 んん!? 先程の凶暴そうな鶏が10ポイントでこの小娘が3000…。

 バグか…。

 

 いや…。

 

 ここでこの飴をほっぺの中で転がし笑っている少女の言っていた言葉を思い出す。

 確かに言っていた魔王見習いと…。

 

 実はこの娘、強いのやもしれない。

 

 「イルミナ様!? イルミナ様!!

 どこにおられますか! イルミナ様!!」

 

 声が聞こえたのは真上の空。

 

 「今度はなんだ…?」

 「おおー!イザヤル!!

 ここだぞー!!

 こいつが私を虐めたんだ!!」

 

 こんのガキ 余計な事を…。

 

 つい口に出そうになる言葉を抑え込みイザヤルなる者の姿を探しそして見つけた。

 黒い翼を持ち角を生やした男。

 

 イザヤル 6500PT

 

 戦いはそのまま言葉を交わす事もなく突如始まった。

 

 イザヤルは俺を睨むと剣を抜き遥か高き空中から降下し斬りかかる。

 

 「ふむ…まだ遅いな…」

 

 実際はかなりのスピードで降下しているのだがラミナには先程のコカトリス同様に遅く見える。

 これなら素手で剣を受け止めても平気なのでは無いだろうか…。

 

 「覚悟!!」

 

 イザヤルとラミナの衝突。

 ラミナの立つ大地は砕け辺りにはまるで爆発が起こったかのような風圧と音が衝突した剣と素手より円状に広がりその衝突がいかに凄まじいものかをあらわしていた。

 

 「素手でだと!? この私の一撃を…」

 

 ラミナはそのイザヤルの動揺をあざ笑いそのまま剣を握りしめミシミシと音をたてる。

 

 「なんのつもりだ貴様! よせ!やめろ!!

 この剣は魔王様から四天王の称号と共に授かった名誉あるっ…」

 

 バキン…。

 

 剣が半分に折れ剣の片割れがカランカランと音を立て地面に落ちた。

 

 「貴様よくも!!」

 

 半分の折れた剣で再び斬りかかる。

 

 が…ラミナは右手でそれを防ぎ次に自らの左手を上げ手の平を地面に向けると、まるで押し潰すかの様に下げ始めた。

 

 ミシミシ…。

 

 あたり一帯の地面に地割れの様なジグザグの亀裂が走り空気は震える。

 

 重力操作…大魔王の重圧

 

 「我を上から見下ろすな。

 頭が高いひれ伏せこの大魔王ラミナの前に」

 

 そう言い終わると同時に空中に浮いていたはずのイザヤルは地面へと叩きつけられラミナの言った通りにひれ伏していた。

 

 そんな無力の敵を前に俺の感情の中にドス黒い何かが溢れ満たし始める。

 

 このまま潰してしまいたい…そんな感情…今軽く手をもう少し下げただけでこの男は死ぬ…自らの手の内で他者の命を転がす感覚。

 

 顔は歪み笑みをこぼす。

 

 なんという高揚感なのだろう。

 

 だが…俺の意思は抵抗もできずどす黒い沼に浸かり沈んでいく。

 そんな感覚を覚える。

 

 だがその時…足元で少女の声とがすがりつく感触を聞き、感じた。

 

 「ごめんなさい!!

 私が悪かったからお願い!!

 謝るからもう辞めて!

 イザヤルが…イザヤルが死んじゃう!!」

 「イルミナ様…早く…早くお逃げを…」

 

 そう叫び涙を流す少女とその少女を自らの命が消えかけていると言うのに気遣う姿を見たその時。

 まるで電撃が走ったかのような衝撃が俺の中の黒い何かを飛び散らせ消滅させた。

 

 まるで我に返る様な感覚。

 

 すぐさま、重力操作を中断する。

 

 「すまない…少しやり過ぎた…」

 「ああ…イザヤル!!」

 

 飛びつこうと駆け寄るイルミナをイザヤルは手で制する。

 

 「イルミナ様…少しお待ちを…。

 貴方様が誰とも存じ上げぬが…無礼を心よりお詫びする…。

 私の負けです。

 もし命を取るおつもりなら私の命をお取りください。

 その代わりイルミナ様だけは…」

 

 四天王イザヤル この国で最強の勇気ある戦士と言われる魔王の一番槍…。

 だが…そう讃えられた彼の姿は無く。

 そこには只々、恐怖に怯え跪く戦士と比べるには程遠い、いち魔族の姿しかなかった。


       2魔王就任の儀


  「起きろ!!

 おーーきーーろーーーーー!!」

 

 早朝、ラミナはそんなうるさい声を聞き目を覚ます。

 目を開けるとそこには胸の上で飛び跳ねる少女イルミナがいた。

 

 昨日、寝泊まりする場所が無い事に気づき仕方なく彼らについていく事に決めたのだ。

 

 「あ!やっと起きた…」

 「もう少し寝かせてくれ…」

 

 「あ!おい寝るな!!

 昨日約束しただろ!

 寝泊まりさせてやるぶん今日の式典に出るって!!

 今日は魔王が継承される大切な日なんだぞ!」

 

 イルミナは毛布を奪い取り更に話を続ける。

 

 「私が選ばれるかもしれないの!!

 その時に配下が一人もいないなんて恥ずかしいだろ!ほら早く早く!!」

 

 イルミナは無理に俺をベットから引きずりおろそうと両手で引く。

 

 くそ…変な約束をするべきじゃなかった…。


 今更後悔しても約束は約束。

 大魔王ラミナとしては約束を違える事はできない。

 

 仕方なく重い体を動かしイルミナについていく事にする。

 

 ここはとある塔の一室、客間だ。

 どうやらあの四天王イザヤルの物らしい。

 問題の式典は魔王城にある王の間で行われる。

 つまりは魔王をこの目で見れるという事だ。

 

 ここからどれほど離れているかは分からいがこれから向かうらしい。

 

 イルミナに早く早くとせきたてられながら軽く食事を済ませ塔の屋上へと向かった。

 

 「お待ちしておりましたラミナ様にイルミナ様」

 

 塔の屋上にはイザヤルと他、魔道士らしきフードを被った者達が数名。

 地面に書かれた魔法陣を囲み待機していた。

 

 イザヤルはイルミナに近づき何やら小声で話を始める。

 

 「本当に魔王様のもとにこの人間を連れて行くのですか!?

 昨日あれ程忠告したではありませんか!

 この人間は危険すぎます…」

 

 普通の者なら聞こえないであろうかすれた小さい声。

 だが、俺にははっきりと聞こえる。

 

 昨日…やり過ぎたからなぁ…。

 まあこちらとしてはどちらでもいい話だ。

 わざわざ危険な場所に行く意味はないが魔王を見るのはゲームを制作していた俺としては見てみたい気持ちもある。

 

 「だからこそだ…きっとお兄様やお姉さまは驚くぞ!!

 なんてったってお前を倒したやつだからな! ニヒヒ…!!」

 「イルミナ様!声が大きいですよ!」

 

 魔王城へ向かう方法…それは転移魔法陣の上に立ち移動するものだった。

 

 転移する際に魔法陣の上にはラミナ、イルミナ、イザヤルの3人が立ちその時を待つ。

 そして転移の瞬間。

 

 「やれ」

 

 イザヤルの号令を受け魔道士達が一斉に杖で地面を付くと視界は光に覆われた。

 

 魔王城…そこは黒色の石材で作られた巨大な城だ。

 多くの兵が駐屯し一人一人が平均100PT程と数値はそこらへんの魔物と比べ比較的高い。

 間違いなくイルミナがいなければ来ることは無かっただろう。

 

 今の体でなければ決して近づきたく無い場所の一つだろう。

 

 転移した瞬間。

 

 「なっ!?」

 

 見て驚いた事がいくつかある。

 まずは巨大な城。

 そしてそれに並ぶほど巨大な竜の姿だ。

 

 城は魔王城、そして竜は火山を背負いマグマを口や背中から吹き出し城を見つめている。

 

 地動竜  4500PT

 

 イザヤルには及ばないがイルミナを越える数値。

 

 「見掛け倒しだな…。

 と言うか我はてっきり魔王城野中に転移するものと思っていたのだがこれでは少し歩かねばならんな」

 

 転移した場所は魔王城より数キロ離れた場所…。

 全くもって不便である。

 

 「直接ではもしあの塔が敵に奪われた際に直接魔王城へ進軍できてしまいますから。

 これほど離しておいたほうがいいのですよ」

 

 なるほど最もだ。

 

 イザヤルの話を聞きなる程と頷く。

 

 それにしても移動手段だが…。

 

 その地形には問題がある。

 さすがは魔王城と言ったところか。

 マグマが溢れ荒れ果てており道も無い。

 

 「よし!早く行くぞ!!

 もう始まっちゃう!!」

 

 横を見ると二人とも翼を背中から出しもうすでに空中に浮かんでいた。

 

 「なるほど…飛んでいくのか…」

 「おい早くしろ!!」

 

 そう急かされてもラミナに翼は無い。

 だが…浮遊する術は持っている。

 

 飛翔

 

 ラミナの体は翼もなしに空中へと浮かんだ為二人を驚かせた。

 イルミナに関しては少し引いている。

 

 「お前…翼も無しに飛べるのか…?

 恩を貸して配下にしようと思ってたのに…」

 

 …

 

 魔王城、王の間。

 そこで新たな魔王就任の式典、儀式が行われる。

 候補はイルミナを含めた現魔王の子供魔王見習いの4人。

 その中から選ばれるらしい。

 もしそこで選ばれ無ければそれぞれ各地に飛ばされその地域の支配を任されるとイザヤルは飛び魔王城へ向かう際に話してくれた。

 

 王の間ではもうすでに他の子供達はもう集まっており残るはイルミナのみとなっている。

 

 「早く早く!!」

 

 そんな中イルミナは歩き進む二人に地団駄を踏みながら扉を勢いよく開け放ち王の間に走り入る。

 

 「これで揃ったか…」

 

 魔王の重厚な声がこの空間に響きわたる。

 

 イザヤルは魔王の横へと進み他の四天王達と並ぶ。

 そしてラミナは魔王をまじまじと観察していた所イルミナに手を引かれ他の魔王見習いが跪き多くの魔族達の視線が集中している中央の広場に連れて来られた。

 

 ふむ…これがイルミナの姉と兄達か…。

 

 ラミナは中央で視線を集めているにも関わらずそれぞれのポイントを調べ情報収集を優先させる。

 

 魔王見習いのポイント。

 長男 オルザ 9900PT

 長女 アルテラ 7300PT

 次男 エメラ 5500PT

 次女 イルミナ 3000PT

 

 四天王に関しては上から

  イザヤルの6500PTに続き   

 5000PT 4600PT 3900PT

 

 そしてあれが魔王 1万PT

 魔王をよく観察しまじまじと見る。

 

 うーむ…なかなかいいキャラクターデザイン…もう無いと思うがいつかゲームを作るときがあれば参考にしよう…。

 

 「おい…何やってる頭を下げろ…」

  

 小声でそうイルミナに言われ視線を下げると魔王以外の全員が魔王に向かい跪づいていた。

 

 視線を感じるわけだ。

 

 もし、以前の自分ならすぐに跪づくところだが今は違う。

 跪け…その問に対し俺の答えはこうだ。

 

 「断る。

 理由はいくつかあるが、まず我は確かにこの式典とやらに出ることを約束したが貴様の配下になった覚えはない。

 我に跪くという行為なら許容するが我が跪くという行為は我にとって屈辱以外の何ものでもないからだ」

 

 イルミナの小声に対しラミナは堂々とこの静まり返った王の間に響く程の声で話す。

 おかげで殺意のある視線が数多く感じられる…が、それでもなおラミナは跪く事を拒み仁王立ちの構えでその全ての視線を受け止める。

 

 「イルミナ?

 しつけが全くなっていないようね。

 貴方の代わりに私がしつけてあげるわ」

 「しつけだと?

 その言葉、我に対する侮辱と捉えても良いのか?」

 

 声の主はイルミナの姐であるアルテラのものだ。

 アルテラはラミナの口答えに対し顔を見て笑う。

 

 「あら…よく見るといい男ね。

 私のかわいい下僕に殺らせようと思ったのだけど…」

 

 下僕…おそらくこの手前の色白の男だろう。

 6000PT…まあまあの高め数値だ。

 

 「その反抗的な態度…。

 そんな貴方の顔が徐々に恐怖に歪み。

 まるで子供みたいに泣きじゃくって命乞いする姿…あぁ…想像しただけで、そそるわぁ…」

 

 舌なめずりをし人差し指を唇に当て笑う。

 まさに妖艶という言葉が合っている。

 

 「いいわ、私が直々に可愛がってあげる」

 

 イザヤルはその様子を横目で見て焦る。

 しかし止めようにも今は魔王の御前。

 動くわけにも行かない。

 

 だが、そんな中。

 彼女が立ち上がるのを止める者がいた。

 

  「いえ姉上ここは俺が…。

  おいやれ…馬鹿な妹の配下に思い知らせてやれ。

 殺すなよ」

 

 イルミナの兄エメラだ。

 

 魔王見習いのエメラ。

 その配下は驚く事に獣人であった。

 

 「ほお…獣人と言うやつか。

 耳が頭に生えてるな…」

 

 ゲームでは作らなかった設定だが。

 一応知識としては知っている。

 

 ダルク 2500PT

 

 彼は立ち上がり拳が触れる距離まで近づくと俺を睨んだ。

 

 「身の程も知らぬ弱き人間風情が…この王の間にいる事すら許されざる行いだと言うのに。

 さらに魔王様を含むここにいる全ての者達を愚弄する気か!!」


 そう叫ぶと同時に拳をラミナに向け放つ。

 だが、イザヤルよりもポイントの低いダルクの攻撃だ。

 当然ながらに遅く感じる。

 なのでラミナは気づいた。

 速度が落ちていることに。

 

 このままなら顔には当たらず止まるだろう。

 

 結果。

 ダルクの拳は顔に当たるすれすれの場所で止まった。

 

 「はっ…息巻いていたくせに、こんな攻撃にも反応できないのか人間?」

 

 いかにも自慢げでしてやったりと言った顔だ。

 それに、周りの連中もそう思ったらしくうっすらとではあるが嘲笑の声も聞こえる。

 

 殺すか…全員…。

 

 そうラミナは短気にも思い行動に出ようとしたその時。

 魔王の声が王の間全体に響きわたった。

 

 「いい加減にしろ…。

 此度は新たな魔王が誕生するめでたき日。

 今日この場で血を流すことは許さん。

 そしてそこの人間の行為については構わんこの私が許す。

 これより魔王就任の義を執り行う」

 

 そう魔王が宣言してから数時間後。

 イルミナとラミナは城の外で他魔王見習いの二人とそれぞれある程度の距離を取り転移魔法陣の中でただ立っていた。

 

 結局、新たな魔王に選ばれたのは長男のオルザ。

 性格などを考慮せずポイントから見た限りではあるが魔王の采配が正しいと言えるだろう。

 

 「うぅ…なんで私じゃないんだ…」


 横からそんな声が聞こえてくる。

 イルミナの声だ。

 彼女はどうやら自分自身が魔王に選ばれると思っていたらしく新たな魔王が選ばれてから今に至るまで泣き続けているのだ。

 

 そして彼女に残された道は一つ。

 まだこの国の支配下にない国を支配するという道のみだ。

 

 そして転移される瞬間。

 

 「お前のせいだ!!

 なんでお前はあの時、あんなバカにされて平気だったんだよ!?

 お前があの時あいつらを黙らせてればきっと…いま頃は私が…」

 

 イルミナがボソボソと呟きラミナの脚をポカポカと殴っている時。

 

 隣の魔王見習い、長女アルテラの配下である地動竜がこちらを向き炎を吐いた。

 

 「よろしいのですか? 

 このままでは妹様までも巻き添えになりますが」

 「いいのよ この程度で死ぬのならそれまでだったと言うまでの事

  お父様もきっとお許しになるわ」

 

 「イルミナ様!!」

 

 旅立ちを見守るイザヤルはそれに気づき声をあげるがもう遅い。

 他の者達もざわめき事の成り行きを見守るのみしかない。

 

 だがイルミナの隣にはラミナがいる。

 

 魔王になれなかった為の鬱憤バラシかそれとも、式典前に見せた俺の態度がどうやらよほど許せなかったらしい。

 妹のイルミナが居るにも関わらず攻撃を仕掛けてきた。

 

 「そのままでいろ…」

 

 俺はしゃがみ小石を拾うついでにマントでイルミナを隠す。

 転移されるまでの間、業火が二人を包む。

 

 そして気がつくと巨大な地動竜含む魔王見習い達はそれぞれ別の転移先へと消えた。

 

 …

 

 転移後、ラミナが見た光景は先程いた魔族の国とは違う豊かな場所。

 周りには草原が広がり心地よい温かな風が吹く小高な丘の上。

  

 イルミナに被さったマントをどけその景色を見せてやる。

 

 「グス…私が魔王になるはずだった…」

 

 未だに泣き自分が魔王になる事を疑わない姿に俺はなぜか自分の姿とと合わせていた。

 

 夢が叶わなかった頃の自分。

 つくったゲームが売れる夢を思い描き売れると思い込んでいた時の自分だ。

 

 そう感じ気がつけばそこには、イルミナに同情している自分がいた。

 

 「そう泣くな、魔王になりたいのだろう?」

 「うん…」

 「ならまずは泣きやめ。

 どっしりと構えていろ」

 「でも…もう魔王は決まって…」

 

 ラミナはしゃがみイルミナと視線を合わせ頭に手を置くと不器用ながらワシワシと雑に撫でもう片方の手で涙を拭う。


 「魔王とは誰かに命じられてなるものか? 家でなるものなのか?

 いや…違う。

 魔王とは恐怖の象徴だ…。

 人々をその力で持って怯えおののかせる。

 すると不思議な事におのずと人々は口にするのだ魔王と。

 断言しよう。

 

 魔王とは自ら名乗る物でも…高々に宣言する物でも無い。

 

 分かるか? イルミナよ 

 ここが終わりではない始まりなのだ。

 新たな魔王による新たな時代…新時代の幕開けだ!!

 始めよう 魔王の物語を

 新たな魔王誕生の物語を」


 ラミナはそう言い終わると指を鳴らし現在の貯まったポイントを見る。  

 1万と1000。

 これはイザヤルとあのデカブツのものだ…。

 

 これだけあれば取り敢えず問題は無いだろう。

 

 ラミナはショップ一覧にある最大上限1万PTのメニューを眺め、クスリと笑った。

 

 …

 

 一方、魔王見習いアルテラが転移した場所では辺り一帯が地動竜の背から溢れ出すマグマと炎により焦土と化していた。

 

 「私の地動竜がそんなありえない。

 死んでるなんて…」

 

 目を大きく開け力なく膝をつくアルテラの目の前。

 そこには地動竜が白目を向き倒れている姿がそこにはあった。


        3勇者召喚


  何も無き草原を人を乗せた数十頭の馬が走り去るのが見える。

 

 ここは蛮族が住まう荒れ地と我らが帝国の境目。

 蛮族は時折、帝国の領土へと踏み入れる事があった。

 その度に多くの村が焼かれ人の血が流れる。

 

 帝国騎士団、団長のガゼットはその問題に皇帝の命令により一任されていた。

 

 当初ガゼットは皇帝直々の指名と言う事もあり快く引き受けた。

 しかし…蓋を開ければ毒。 

 恐らくは貴族共の仕業なのだろう。

 帝国の出した騎士達はたったの50人程。

 これでどう対処すれば良いというのか。

 圧倒的な人数不足。

 それもその騎士達は罪人などで構成された下級の兵士揃い。

 

 ガゼットは帝都のそれも上層の醜い権力争いに巻き込まれたのだ。

 

 今まで帝国を背負い数多くの騎士達を率い、いくつもの国を圧倒的な力で滅ぼし帝国の物にしてきた自分がまさかこんな目に合わされるとは…。

 

 確かに自分は英雄だ。

 英雄ゆえに数多くの帝国民に好かれている。

 もし自分が民を先導したならば強大な力となる…。

 それに自分の正義感から貴族や王族の悪事を調べさせ皇帝に進言してきた。

 そのせいだろう帝国の貴族、帝国の下につく王族達は恐れ自分をこんな辺境の土地に送り願わくば殺したかったのだろう。

 

 ここに来るまでの間、何度命を落としかけたのか分からない程だ。

 間者に貴族共の息のかかった帝国騎士による待ち伏せ。

 

 そのせいもありもともと罪人達で集めた兵…続々と離反に逃亡、それらが重なったこともあり。

 未だ蛮族と戦闘していないというのにもう10と数人しか残っていないボロボロの騎士達を見てガゼットはうなだれる。

 

 帝都に戻ればとも考えたがそれも難しい問題だ。

 そもそも戻る間に貴族の息のかかった騎士に見つかればもう逃げることも出来ぬであろうし戻れたとしても今回の蛮族の問題全責任を押し付け、民の信頼を落とし何かしらの嫌疑をかけ処刑…もしくは暗殺か…。

 そんな結末だろう。

 

 ガゼットは死に場所を戦場に求め向かう。

 

 …

 

 「なぁなぁ…これからどうするんだ?」

 

 イルミナが俺のマントを引っ張りそう聞く。

 

 そんな俺はというとポイントショップを一通り確認し現在ある1万1000PTの使い道を考えていた。

 だがそうイルミナに言われショップを閉じる。

 

 「そうだな…取り敢えずどの種族でも構わんが人のいる場所へ行くのがいいのではないか?」

 

 そう告げ取り敢えず空へと飛翔する。

 

 「あっ…おい!

 飛ぶなら飛ぶと言え!!」

 

 空から見下ろす景色と飛ぶ感覚は爽快でとても心地がいい。

 イルミナも翼を出し飛びラミナに追いつく。

 

 緑豊かな草原と遠くに荒れ果てた岩だらけの大地が見える。

 

 荒れ果てた大地に関しては俺が最初にこの世界で見た地形と酷似している。

 恐らくは向こう側…荒野の先に見えるここより遥か高き山々が連なる山脈

のその向こう側に魔王城があるのだろう。

 

 そして俺達が向かうべき目的地そこは…。

 

 「おい!あれ見ろ!!

 馬鹿な人間共が争ってるみたいだぞ!!」

 

 イルミナが嬉しそうに俺のマントを引き指差す方角を見ると高い城壁に囲まれた砦から煙が複数上がっている光景が目に入った。

 

 更にその砦近くにある複数の村もまた火の手が上がっている事が確認できる。

 

 「ふむ…次に火の手が上がりそうな村はあそこか…」

 

 何が起こっているのかは分からないが恩を押し売る事ができれば取り敢えず今日の寝床と食事は確保できるだろう。

 

 そう考え、ラミナはイルミナにその村へ行く事を伝え共に移動を開始した。

 今の自分にはどれ程強く例えどんな敵が来ようとも勝てる自身がある。

 

 …

 

 村の中にあるとある店。

 いつもは賑わっている店だが、その日だけ客は一人として来ることは無かった。

 

 酒場の女主人であるマダム・バレンは度数の高い酒をカウンターに置き客に出すわけでもなく自分自身でそれを飲み干す。

 

 そして彼女は頭を抑え机に突っ伏し目を瞑るのだ。

 

 「馬鹿野郎…この店を捨てろだと…ふざけんなってんだ…」

 

 そんな独り言を呟いていると店の扉に付いたベルがチリンチリンと鳴り客の来訪を知らせる。

 

 現在この村に人はいない。

 蛮族の大規模な襲撃による影響で村人たちは村を捨て避難しているのだ。

 

 もう来たのか…。

 

 マダム・バレンにはこの店が全てだ。

 この店を受け継いでから今に至るまでこの店を守り抜いてきた。

 ここには私の全てが詰め込まれている。

 幼くまだ子供だった時のこと…まだ若く自分の顔にシワも無く高嶺の花と呼なんてばれていた頃の思い出…運命の人が来店した時のこと…そして別れも。

 

 悲しい時も苦しい時も嬉しい時もこの家で過ごしてきた。

 今更、捨てられるはずも無い…。

 

 蛮族の襲撃でこの店が無くなると言うのなら共にここで死ぬ覚悟だ。

 

 来るなら来い…。

 

 マダム・バレンは護身用である剣から鞘を外し剣を持ち上げた。

 

 だが…入ってきたのは蛮族でも何でもない変わった身なりをした子連れの客だった。

 

 「人が一人もいないぞ!

 どうするんだ、これじゃあ魔王として恐れられもしない!」

 「落ち着け…想定外ではあるが寝床と食料くらいはあるはずだ……恐らくな」

 「嘘つき」

 「……嘘つきでは無い…我はあくまで仮定の話をだな…」

 

 二人がそんな話をしながら店に入ってくる。

 

 「火事場泥棒かい?

 あいにくこの家には私がいるんでね。

 盗むなら他の家あたんな。

 もし腹減ってんなら、食事くらい今日はただで出してやるよ」

 

 …

 

 カチャカチャ…

 

 イルミナとラミナはバレンの言葉に甘え振舞われた料理を食べる。

 

 食事は二人とも朝に少し食べただけの為、遠慮なく口に豚の肉を放り込み

赤ワインを流し込んだ。

 

 「私にもそれ飲ませろーー!!」

 「お前にはまだ早い…アルコールの無いぶどうのジュースで我慢しろ」

 

 二人が騒がしく音を立てながら食べる姿を見てマダム・バレンはカウンターの内側で料理をしながら微笑む。

 

 「あんた達が最後の客になるとはね。

 この店も私もてっきりもう死ぬばかりかと思ってたよ…。

 それにしてもいい食べっぷりだ。

 嬉しいねぇ。

 そんなに腹減ってたのかい?」

 

 豪華な料理がタダで振る舞われる中イルミナはその中でもデザートのブルーベリーパイを好きになったらしい。

 

 ブルーベリーパイを頬張っては頬を抑えほっぺが落ちないようにと押さえ幸せそうに少しずつ少しずつと食べている。

 

 そして食べ終わった直後にイルミナはバレンに向かい指をさし大きな声で話し始めた。

 

 「気に入った!!

 お前を私の家臣にしてやる!

 喜べ!!

 今日からお前は私の専属料理担当だ!!」

 

 「嬉しいねぇ…お嬢ちゃん。

 もしこの店が明日もここに立ってたのならなってあげてもいいけどね。

 でもあいにくここはもう閉店さね。

 きっと明日にはこの店もこの村も無くなってるはずさ。

 あんた達もさっさと逃げたほうがいい」

 

 そう言った時、外が騒がしくなった。

 複数聞こえる馬の足音…に下卑たる笑い声。

 

 間違いない今度こそ蛮族共が来た。


 「もう来ちまったのかい。

 あんたら!

 早く裏口から逃げな!」

 

 バレンがそう叫び裏口へと誘導しようとするが二人は立ち上がろうともせず落ち着いた様子だ。

 

 「予定通り……では無いがこうして食事も頂いた事であるし恩を返すことにしよう」

 

 しばらく目を閉じていたラミナが立ち上がり裏口へではなく正面へと歩いていく。

 

 「ちょっとあんた!?

 何やってんだい!

 逃げるならそっちじゃなくてこっちに…」

 「コラ!おい待て!!

 私をおいてくつもりか!?」


 イルミナはブルーベリーパイの残りを慌てて口に入れ飲み込む。

 

 「安心しろ、私の配下二号よ。

 逃げはしない!

 何てったて私は魔王なんだからな!!」

 

 そう自慢げに話しイルミナもまたラミナに続き正面より店を出ていく。

 

 バレンはその際イルミナの頭に角がある事にふと気づき言葉を失っていた。

 

 …

 

 外に出ると馬に乗った蛮族と呼ばれる者達と遭遇した。

 蛮族は雑に作られた軽装の鎧を着ており主な武器は弓と剣らしい。

 

 ラミナが店から出た瞬間それらの武器を構えてきた。

 

 「一応言っておく。

 もしここから今すぐ去り二度と手を出さんと誓うのであれば手を出さん」

 

 蛮族はやはりというべきか仲間同士で顔を見合わせ笑いあっている。

 ちなみにポイントは1〜5PT。

 話にならない数値。

 ただ数は数十人程と多い。

 

 その中の一人…おそらくこの中のリーダーと思われる人物が前に出て剣を俺に向ける。

 

 「なんだ、立ちされだぁ?

 何も分っちゃいねぇな…。

 教えてやろうか?

 お前はここで死んでそこに居る子供は売られるんだよぉ!」

 

 そう言い突如、剣を振るおうと剣を上に持ち上げる。

 

 いきなり戦闘は始まった…かに見えた。

 

 「そうか…それは見解の相違だな」

 

 ラミナは手を出し…そして。

 大魔王の重圧を行使する。

 

 次の瞬間ラミナも想定していなかった事態が起こった。

 

 少し痛い目を見せようとしただけで軽くやったつもりだったのだが蛮族は変な奇声を一瞬上げ全員がまるで卵のように簡単に潰れてしまった。

 それどころかさらに人間が潰れた数秒の差で自分の後ろにある酒場などの家々以外、村のおよそ半分の建築物が一緒に潰れた。

 

 …

 

 力のコントロールがつかない…。

 イルミナの時もそうだったがこの体は繊細な事ができないようだ。

 

 それに分かった事は他にもある…むしろこちらの方が重要。

 それは人を殺したのに何も感じなかったという事…それどころか高揚感を感じた。

 

 もともと俺自身が快楽殺人者の性質を持っていたのかそれともこの体になったせいか…。

 

 マダムはそんなどこか落ち込む様子の俺をを心配してくれたらしい。

 

 ただ外でこの悲惨な光景を突っ立って見ている自分の肩に手を起き話しかける。

 

 「あいつらは人を平気で殺すような奴らだ。

 何も気にする事は無いさね。

 因果応報ってやつだよ…誰がなんと言おうとあんたは悪くない。

 もし悪いって言うやつがいたら私がこのフライパンでぶっ飛ばしてやるよ」

 

 そうではない…すべてが終わり罪悪感では無く恐怖を覚える。

 

 コントロールできなかったのでは無く殺したいと思いやったのでは無いか…。

 

 恐怖を感じすぐさまラミナは行動に移す。

 指を鳴らしショップを開くと慌てるように何かを探した。

 

 本来は1万ポイントの城、大魔王城を出そうとしていたのだが召喚に切り替えそして始める。 

 

 1万ポイントでの召喚。

 様々な項目の中から一つを迷うことなく決める。

 

 項目名…闇勇者。

 かつて大魔王ラミナとの戦いに挑んだ際、力の封印に成功するも代わりにその闇の力の影響を受け闇落ちし大魔王ラミナの腹心となった勇者。

 

 闇勇者を選択したと同時に赤黒い魔法陣が目の前に出現し黒い光が漏れ村に広がりそして一点に再び収束する。

 

 現れたのは黒い長髪をした女性。

 彼女はラミナに跪いた姿勢の状態で召喚された。

 

 「勇者セラ。

 御身の命を受け召喚に応じ参上いたしました。

 大魔王ラミナ様に絶対の忠誠を捧げます。

 何なりと御命令を…」


 勇者セラは美しき黒い瞳で大魔王ラミナの姿を見据えそう忠誠を誓った。

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