あなたを占わせていただきます!
いつものように、仕事部屋にやってくる。
恥ずかしいので、いつもここに入るときは一人だ。
しかも、早めに来て着替えてもいる。
「もうちょっと、違う服にしようかな」
ちょっと寒いし、感度が違うからと行って、高価なローブにするんじゃなかったな。
けれど、それが結果に出てるんだから、やっぱり買って良かったというべきか。
「ぱららさん、お疲れ様です! ご予約のお客さん、入りました!」
「わかりました、入れてください」
ローブを目深に被り、お客さんに備えた。
私は、ぱらら。
占い師の村で育った生粋の占い師。
私を産んだ母は、もの凄い占い師だったというけど、私を産んで数日で死んでしまったらしい。
けれど、その娘の私は、ごくごく普通の腕しか持っていない。
それでも村の人達は優しいし、なぜかこうして、占いをしていたりする。
と、先ほど連絡のあったお客さんが、私のいる部屋に入ってきた。
「あ、あの……今日は、おまじないに来ました」
「おまじないですね。誰と誰の縁をつなげますか?」
私がそういうと。
「あ、あの……このお二人を……」
そういって、お客さんである少女が小さなメモを手渡してきた。
なるほど、お客様とあのお方とを、結べば良いのか。
「わかりました。それでは、始めますね……」
私はおまじない専用の隣の部屋に入り、お客さんも近くにある椅子へと座っていただく。
「二人の縁が高まりますよう……神に願いを!」
手のひらから私の魔力がふわりと空へと向かって登っていく。
うん、上手くいった。
「あ、あの……これで上手くいったのでしょうか?」
「はい、魔力が奉納されました。これであなたとの縁が高まったと思います。詳しいことは、自身の手帳を見て、ご確認を」
「あ、ありがとうございました!!」
嬉しそうに少女が戻っていく。
「お疲れ様です、ぱららさん。今日のお仕事は終わりました」
「わかりました。では、帰りますね」
そう、私はこの場所で、候補生さん達の占いとおまじないを担当しているのだ。
これがどう試験に関連しているのかは、よく知らないけれど、なぜか、毎回、村から一人、腕の良い占い師がここに派遣される。なのに、その大事な使命に、ぱっとしない私が選ばれたのかが、いまいちわからないことばかりだ。
「でもまあ、数人だけ相手にすれば良いから、気は楽だよね……」
そろそろ普段着に着替えて、お家に帰ろうかと思った矢先に。
「ふもごご!?」
口を塞がれ、薬を嗅がされて……私は文字通り、攫われてしまったのだった。
気がつけば、私は見知らぬ部屋に寝かされていた。
布団は掛けられていなかったけど、ちゃんとしたベッドに乗せてもらってたし。
それに、わりかし綺麗な一室だ。
ちょっと必要最低限のモノしか置いてないシンプルな部屋だけど。
「これって……逃げた方がいいよね?」
自分の荷物が見当たらない所を見ると、自分の部屋においてっちゃったのかな?
だったら、それも回収しなくっちゃ……。
いや、それより、早く出よう。
ドアを開ける。がちゃりと音を立ててすんなり、開いた。
「えっ!?」
鍵、かけてないの!?
けれど、これは。
「なんて幸運! 女神エアリーフェールさまのお恵みね!」
幸運の女神に感謝を述べつつ、抜け出そうとしたそのときだった。
「どこにいく? ぱららよ」
声が掛けられた。しかも、滅多にお声が掛けられない、そんな相手から。
「なっ……で、殿下!?」
「お主に占って欲しいことがある。やってくれるか?」
この国の次期国王さま……ならぬ、王子様に言われて、できませんなんて、言えるだろうか?
それにしても……王子様、すっごく格好良いな……。金髪碧眼だし。
というわけで、私は先ほどいた部屋に戻され、目の前には王子様と、そのお付きの騎士様がいらっしゃいます。
「占ってもかまいませんが……ここには私の道具が……」
「道具なら、水晶がある。これで頼む」
王子様は近くにいた騎士にお願いして、水晶を持ってきてくれた。マジで!?
「……わかりました、何を占えば良いのでしょう?」
もう、ここまで来たからには、後には引けない。
覚悟を決めてそう尋ねると。
「私の妃になる姫君を占って欲しい」
「……へっ!?」
すると、王子様はいろいろと教えてくれた。
「私は正直、恋だとか愛だとかよくわからぬ。しかし、王位を継ぐ以上、配偶者は必要なのだ。そこで、お前の素晴らしい占いで探して欲しいのだ。時期に候補生の試験も終わることだしな」
「あれ? もう終わっちゃうんですか?」
私の言葉に王子様は、ちょっと驚いて。
「ついさっき、お主が仲の良い守護騎士と強固な縁を結んだではないか。それで、今回の試験は終わりだ」
ええええ、マジで!?
今回は素敵カップル誕生で終わっちゃったって事ですか!?
世界を守る巫女には、ならなかったんですかーまーじーでーーー!!!
頑張って、占いとか縁結びとかやったのにな……。
「その所為ですよ」
今度は騎士様が口を開いた。
「あなたの占いは、とても強力なんですよ。知らなかったのですか?」
「え? 私の占いって、あんまり良くないですよ。村でも中の下くらいだし」
思わず本音が出てしまう。
うわ、王子様も騎士様も残念そうな笑みを浮かべてる。
「本人はわからないのだな」
「そのようですね」
ため息と共に、王子様は。
「とにかく、お前は、かなり有能な占い師だ。誰が何と言おうとな。というわけで、さくっとその水晶で私の妃候補を見てくれ」
なんだか、丸め込まれた感じもしないけど、とにかくやるしかないみたいだ。
さっき、連れてこられたときにこの衣装のままでよかったと、本当に思う。
「では……運命の女神フォーチュナーの導きのままに、かの願いを叶えたまえ……」
さっそく水晶で王子様の運命の人とやらを見て、終わらせようと思った。
え!? なに……これ……えっ!?
水晶に映っていたのは、なんと私。
嘘、いやいや、嘘だと言って!!
けど、運命の女神様の導きは、絶対なんだよね……やばい、どうしよ。
私、王子様と結婚なんて、全然考えてないし、ずっと占い師するつもりだったし。
ないない、マジでありえなーーーいっ!!
「何がマジでありえないんだ?」
しまった、口に出てしまったか。
「どうやら、見つかったようですね、殿下」
「ああ、そのようだ。で、どんな女だった?」
やばい、どうしよう……言えるわけないじゃん。結婚すらぜんぜん考えてない私が、あなたの妃ですなんて、口が裂けても言えません。
「そうですね。お姿は拝見いたしました。ですが、彼女がどこにいるかはわかりません」
我ながら、自分でもよく答えたと思う。
「なら、得意の占いで、その場所を教えてくれ」
うわ、ダメだったーー!!
「ペンデュラムは、ございますか?」
そうだよ、捜し物にはペンデュラム!! それがなければ……。
「はい、こちらに」
オーノウッ!! 仕方ない、やるしかないか……。どうか、私を示しませんように……。
さっそく試してみると、ペンデュラムが動き出し、ある方向を示したかと思うと、私の魔力が吸われて、光となってその位置をこれでもかと示した。
「ほう、南西の方か」
「そのようですね。その方向は、港町デッセンバウアのある方向ですね」
「ふむ。ではさっそく行こう」
「ちょ、ちょっと待ってください!! わ、私もですか?」
うろたえる私に王子様は告げる。
「お前しか、私の妃を見ていないだろう? ならば、連れて行かなくてはわかるものもわからん。それに、お前は外見さえも言わないじゃないか」
言うわけないじゃない。私は王子様のお妃なんてまっぴらごめん!!
自分の生まれ育った村で、のんびりと占いして、まったりしたいんだから!!
そんな気持ちをよそに、私は王子様達に連れて行かれる。
これが、あのとてつもない大冒険になるとは、私も思っていなかったのだった。
■感想の辛口or甘口
優しく甘やかす感じの「甘口」で!




