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第5話 愛刀修羅

本日、二話目です

 俺たち二人は夜の街道を馬で駆けていた。

 知らない者が見たら熟練の騎手だと勘違いするだろう。


「そろそろ馬を降りて歩きましょう」


 馬を並走させるユリアーナの声が馬蹄に交じって響いた。

 俺は彼女の言葉にうなずいて馬に語りかける。


「よし、もういいぞ。止まってくれ」


 馬はゆっくりと速度を落として静かに止まった。

 すぐ隣にユリアーナの乗った馬も止まる。


 盗賊から剥ぎ取った公用語スキルを馬に付与することで、乗馬の経験がない俺たちでも容易く馬をあつかえた。


「いい子ねー。他の馬よりもたくさんの飼葉を食べさせてあげるからね」


「飼葉は村か街に着いたら買ってやるからな」


「盗賊のアジトに行けば飼葉くらいあるわよねー」


 再びユリアーナが馬に語りかける。

 すると小さないななきを上げて二頭の馬が大きくうなずいた。


 俺は二頭の馬を錬金工房に収納し、盗賊のアジトがあるという岩場に目を凝らす。

 アジトまで一キロメートル余。


 身体強化で視力を強化しても、月明りの下では有用な情報は得られないか。

 諦める俺の隣でユリアーナが言う。


「二十五人いるわ」


「あの盗賊、嘘を吐いたのか?」


 尋問した盗賊の情報ではアジトにいる仲間は二十四人。

 男が十六人、女が八人だと言っていた。


「あの状況で嘘を吐くとは思えないし、ごまかすにしても一人少なく伝えた程度じゃ何の意味もないわよ。頭悪そうだったし、単純に人数を数え間違えただけじゃないの」


 無造作に歩きだすユリアーナの後を慌てて追う。


 岩場が見えてくると盗賊たちがアジトとして使っている洞窟の入り口がすぐに分かった。

 かがり火に照らしだされた洞窟の入り口と二人の見張り。


 岩の陰から覗き込みながらささやく。


「洞窟の中に二十二人。外に三人……」


「見張りは二人だけだぞ」


 強化した視力で周囲を改めて見回すが、洞窟の前に立っている二人以外は見当たらない。


「もう一人はあの辺りね」


 そう言って彼女が指さしたのは、入り口の側に放置された三台の馬車だった。


 大きく切り裂かれた(ほろ)には黒ずんだ染みが広がり、その切れ間からは水が入っていると思しき(たる)や服などの日常生活を連想させる品が幾つも見える。

 隊商か行商人を襲ったばかりのようだ。 


 瞬時に嫌悪感が湧き上がる。


「問題ない。見張りの二人だけでなく、もう一人も馬車ごと収納できる」


「それじゃ、お願い」


 彼女の言葉が終わると同時に俺たちの視界から二人の見張りと三台の馬車が消えた。


「相変わらず鮮やかなものね」


 ユリアーナは一言そう口にすると洞窟の入り口へと向かって歩きだす。

 俺も彼女の隣に並んで歩きながら、錬金工房で武器を作成する。


 素材は盗賊から奪った鋳造の剣。

 ハッキリ言って(なまく)らだ。


 これを切れ味鋭い鍛造の日本刀へと生まれ変わらせる。

 瞬き一つする時間も必要なかった。


 思い描いた通りの日本刀が錬金工房の中に瞬時に出現した。

 闇に溶け込むような黒塗りの刀身。

 (つか)(つば)(さや)すらも、すべてが黒一色の日本刀だ。


 鑑定すると『鋭利』という見慣れないスキルがあった。

 それをユリアーナに告げると、腕のいい鍛冶職人が作った剣に稀に現れることがあるスキルが幾つかあり、『鋭利』もその一つだと教えられた。


「素人が初めて作った剣に、どうしてそんな希少なスキルが現れるのよ」


 呆れる彼女の隣を歩きながら、抜き身のそれを右手に出現させると、黒い刀身にかがり火が鈍く反射する。


「やっぱり日本人は日本刀だよな」


「武器は必要ないでしょ? それに何だか華奢(きゃしゃ)な武器ね。斧でも受け止めたら簡単に壊れちゃいそう」


 ロマンのかけらもない感想だ。


「勘違いするな、これは戦うための武器じゃない。俺の精神を高揚させるためのアイテムだ」


 だからこそ見た目が重要になる。

 違うな。

 見えないところこそ重要だ。


「我が愛刀の号は『修羅』!」


 柄に隠れた号を口にした途端、身体の奥底から力がみなぎってくるような錯覚を覚えた。


「刀に名前を付けたの?」


「武器に名前を付けるのは、日本では当たり前のことだ。何と言っても神話の時代から続く文化だからな」


「へー、そうなんだー」


 相変わらず理解できていないようだ。


「それにこいつには、ゴブリンから奪った『頑健』が付与してある。見た目通りの性能だと思うなよ」


「何よ、それ。『頑健』って肉体に宿るスキルよ……。いえ、いいわ。たっくんのスキルについて、あれこれ疑問を口にするのはやめましょう」


「俺の愛刀は斧を受け止めても十分に耐えられる」


「どうせなら武器じゃなくて防具にしなさい。たっくんの場合、遠距離攻撃と不意打ちさえ防げれば勝てるんだから」


 やはり、男のロマンが分かってない。


「身体強化と魔力障壁は展開済みだ」


 反射神経と運動機能の強化で物理的な攻撃への対処ができること、加えて鋼の鎧程度の防御力で全身を覆っていることを告げた。


「油断は禁物よ。魔法障壁を破壊してダメージを与えられる敵がいるかもしれないでしょ」


 もしそんな強大な魔力を感知していれば、とっくに警告しているはずだ。


「そんな恐ろしい魔術師はいないんだろ?」


「魔道具を持っている可能性もあるわよ」


 そう言って昼間使った木製の盾を要求する彼女に、新たに鋼で補強し『頑健』を付与した盾を渡した。


「それと、これも念のため装備しておけ」


 作成したばかりの、『鋭利』付きのショートソードを差しだす。


「未経験者が剣を二本作って、二本とも鋭利が付いているとか、この世界の鍛冶職人が聞いたら絶望しそうね」


「ごちゃごちゃ言ってないで神罰を下しにいくぞ」


「それはあたしのセリフでしょ」


 俺たち二人は洞窟へと足を踏み入れた。

 洞窟の中を慎重に進む間も、奥からはいかにも盗賊らしい下品な笑い声と嬌声が聞こえる。


 無防備すぎる。


 警戒して進むのがバカバカしく感じるが、それでも罠の可能性があると自分に言い聞かせて警戒を怠らないように進む。


「この扉の向こうに二十人が集まっているわ」


 頑丈そうな木製の扉。

 その向こうにある程度の広さの空間が広がっているのだろう。


「扉を開けたら盗賊たちを片っ端から収納する」


 最悪は蹴り破る覚悟だったが、扉を押すと容易く開いた。

 扉のわずかな隙間からなかの様子がうかがえる。


「まだ気付いていないみたいね」


 隙間の先にあったのは、行商人を襲ったときの話を肴に笑いながら酒を飲んでいる盗賊たちだった。

 腹の底から怒りが込み上げてくる。


「方針変更だ。一気に収納するつもりだったが、一人ずつ、ゆっくりと収納して行こう。名付けて『そして誰もいなくなった作戦』だ」


「悪趣味ね」


 そう口にしたユリアーナの目には怒りの色が浮かび、口元には冷笑が浮かんでいた。


お陰様で日間総合/日間ジャンル別に入ることができました。

感謝申し上げます。

ありがとうございます。


そして、日間ジャンル別は6位でした!

あと少し、あと少しで表紙入りができるところまで来ています。


何卒、【ブックマーク】、そして最新話下部にあります【文法・文章評価】【物語(ストーリー)評価】 をお願いいたします。


読者の皆様お一人ずつの 評価ポイント(合計10pt)がとても大きな励みとなります!!

是非ともご評価をお願いいたします。

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