1話 胡散臭い女神
ーー異世界に行ってみませんか?
俺は突如として現れた女神を名乗る女性にそう言って誘われた。
(うわ~めっちゃ怪しい~)
「怪しいですか?私が神だと信じられないということですか?」
「いや、神様だとは思ってますよ」
さらりと俺が考えていたことを読んで質問してきた。どこまで考えが読まれているかは分からないが俺が怪しんでいるのはこの目の前の女性が神か神じゃないかではない。おそらくっていうかまぁ確実にこの女性は女神だろう。だって今も考えを読まれていたし、なによりさっきいた家の中とは違う真っ白な場所にへと一瞬で移動しているのだ。拉致されたとかVRを使ったゲームの中とかではなく気がついたらこの場所にいたのだ。こんなことができるのは神様ぐらいだろうし、後この状況ラノベで見たことがあったし。
「そうですか、それでは何が怪しいんでしょうか?」
「なんていうかその笑顔とか?」
俺が怪しんでいるのはこの女性の全てである。仕草だったり笑顔だったり言葉遣いだったりと何もかもがテスト前日に無理やり詰め込みましたって言うぐらいに上っ面だけを整えました感が半端ないのだ。
「それでお答えを聞いてもよろしいでしょうか?異世界に行くか行かないかを」
(うわ~やっぱり怪しい~)
俺の考えが読めているはずなのにそれについては反応せずすぐに答えを求めてくる。こういう奴は大抵がロクな奴がいないと友達の親が言っていた。
「まだ迷っているようですね、それなら今すぐに決めてくださるというのならこのダンジョンのコアをお付けいたしましょう!」
(やっぱりロクな奴じゃなかった!)
まるでこの狙っていたかのようなセールストーク、おそらく奴はやり手のセールスマンだ。決断するのがわかっているが未だ迷っている素振りを見せる相手に決断させるための必殺技!その名も《今だけ》だ。これにより相手を今だけならお得という感情を植え付けさせ購入させるまさに必殺の技!
「いかがでしょうか!?」
(と、まぁ色々言ったけど答えは決まってる)
「もちろん! お断りだ!」
「それで………え!?」
相手はおそらく俺が異世界へと行きたいと思っていると思っていたんだろうけどそれは間違いだ!
「な、なんででしょう?理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「そんなの決まっている! あなたが怪しいからだ!」
最初から言っているのにそんなこともわからないなんてな。取引をする際に怪しい相手と取引するバカなんていないだろう。
「…はぁ~最初から素で行けばよかったのかしらね?」
さっきとは違って常に貼り付けていたような笑顔ではなくめんどくさそうにしわを寄せ、足を揃え立っていたのを座り込み片足を立てた。おそらくこれがこの女神の本当の姿だ。今の様子はたしかに女神と言われても嘘だ!って叫んでしまうほどだが俺としてはこうして素をさらけ出してくれている相手の方が信用ができる。
「それでどうするの?異世界に行くの?行かないの?」
「それを決めるためにはもっと詳しく教えてほしいんだが」
ラノベだと異世界に行くか行かないかを聞かれてすぐに行くって答える奴の神経がよくわからない。だってその向かう異世界になにがあるかわからないんだぜ?ほんと勇気あるよな~とかって思いながらいつも読んでたよ。
「異世界の話はあんたが行くと言ってくれなきゃ詳しく話せないようになっているのよ、まぁ言えるのはそんなにはひどくないと思うってことだけかな」
「そうか、それじゃ1つだけ聞いてもいいかな?」
俺が異世界に行きたいと思うのはこの世界じゃ叶えられないからだ。だからこそ俺は異世界にへと行きたいと願っていた。だけどもし異世界に行っても叶えられないんだったら行く意味がなくなる、そのためにこの女神に聞いておかなければならないことがある。
「構わないわ、まぁ答えられる範囲に入っていればだけど」
「異世界ではハーレムって作れるのか!」
「…ぷっ、ぷぷぷぷ!聞きたいことってそんなこと!?」
「そんなこととはなんだ!俺にとっては大事なことなんだ!」
「ぷっ、そうなの? それなら答えられるわよ、その答えはイエスよ!」
「よし!わかった!異世界に行く!」
ドキドキしながら女神からの答えを待つ。そしてその答えは出来るとのことだ。それならばと俺は異世界へと行くことに決めた。
「わかったわ!それじゃ異世界へと行きましょうか!」
「あぁ、わかった!」
そして女神と俺はこの世界から消えた。