紫苑の今後の選択
これで一章完結します
「それってどういうことですか」
「文字通り貴方はこれからどのように生活されるのでしょうか?」
確かに僕のこれからの生活に関しては全く考えていなかった。というより___
「ここで生活できるなんてそんな甘いこと考えているわけではないでしょうね?」
「え!?だ、ダメなんですか?」
てっきり、こう助けてくれるのかと勝手に思ってしまった。
「あのねぇ、こちらも人一人を養う余裕なんてないのよ。それに私たちにも仕事があるので貴方にかまっている暇なんてないのよ」
確かに話を聞いている限りこの方々は自治管理や周辺の魔物退治などの仕事がある。
さらには僕のような人のケアもしているため一個人を養うことは対外的にも面目が立たないとのこと。
なんだよそれ……、って考えてしまったがそりゃそうだと考え直した。
今の僕は彼女らにとって余所者でしかない。
「そう…ですよね…。___やはり森に帰るしかないと思います」
「は?なんでそうなるのよ?」
「いや、だってお金とかないですし。生活に必要なものとかがとにかくないので……」
そう、忘れないでほしい彼は三年も森の中で生活していてお金も持っていないのだ。
つまり、紫苑にとってこの世界で生活するうえで必要なものが圧倒的に不足しているのだ。
世の中全て金なのだ、お金があれば何でもできるとはよく言ったものだ。
「はぁ、別にそういうことを言ってんじゃないのよ。多少のことなら支援はするし、生活に必要なものは用意してあげるわよ。私が言いたいことはこの家で完全にヒモ生活することが許していないということよ。なんでそういう考えになってしまうのかなぁ……」
「す、すみません。ってきりそういうことかとおもってしまいまして」
いやぁ、お恥ずかしい。僕の早とちりとは……。
にしても多少のお金があっても僕は六歳、もう三年経ってるから九歳__小学三年生稼ぐことはできないのでは?
「お金を稼ぐことに関しては色んな手段があるわよ。子供でもできることはたくさんあるの。だから心配しないで」
「は、はぁ。そうなんですか」
どうやら、【閃光の落日】以降人手が圧倒的に足りておらずハローワーク__通称【ギルド】を使って世界各地で統括、管理しているそうだ。
「しかし、お嬢様。ここ愛知領では旦那様の政策の下、人員不足は解消されておりますゆえ恐らく【ギルド】に行っても何もないと思われます」
「えっ!お父様の政策ってそこまで進んでいましたか?しかし、そうなってしまうと紫苑君にはどうしたらよいのでしょうか……」
「……ひとつご提案があります。彼にここで執事の仕事をさせてみてはどうでしょうか?恐らく彼の技能には今後の可能性を感じます。ならば、私たちで彼を育てて専属の執事にしたほうが今後の利益になるかと思えます」
「へぇ、あのセバスがそこまで言うなんてね。私は賛成だけどもお父様にはどう説明するのよ」
「あぁ、それなら__」
と、戦場さんが話していると扉の向こう側から何かの気配を感じた。
「話は聞かせてもらったよ。なるほど君かい?三年も森の中で生活していたというのは」
「__っ?」
部屋に入ってきたのはダンディな男性であった。
なんというか、こうお嬢様と雰囲気が似ているといいますか……恐らくこの人がこの家の主なのだろうか。
というかちょっと待って、皆さんの話についていけてないのですが……。
「お父様、お仕事お疲れ様です!」
「おや、旦那様いらしていたのですか?」
「あぁ、今帰ってきたところだよ。で、この子が三年間森の中で生活していたという子かな?」
「えぇ、そのことで旦那様に相談したいことがありまして」
「うん、聞こえていたよ。私としては問題はないんだけどね、彼のほうが話についていけてないようだよ」
はい、ありがとうごさいます。助け舟を出していただいて。
ほんとに話についていけなかったよ。せっかく僕のためにあれこれ考えてくださっているのに申し訳ない。
と、心の中でダンディなお方に感謝していると僕に話しかけてきた。
「どうも、私はここ愛知領の領主を務めている高槻 宗平だ。改めてようこそ愛知領へ。えっと___」
「あっ、僕の名前は影浦 紫苑といいます。よろしくお願いします」
「おぉ、しっかりしているねぇ。ひとまず簡単に説明するよ」
宗平さんの話によると
・世界的に人員不足なのだということ。
・今のところ世界統一のハローワーク【ギルド】では全年齢に対応したクエストが用意されている。
・しかし、ここ愛知領ではそういった人員不足を解消するために宗平さんは色んな政策を企てているため問題自体はほぼほぼ解消されたとのこと。
・よって今のところ僕ができるクエストがないんだそうだ。
「と、ここまではいいかな?」
「はい、なんとなくは理解できました」
「よし、それで今できたクエストなんだけど私の家__つまりは高槻家の執事として私らに仕えてほしいんだ」
「それって、僕を養うってことですか?」
「ちょっと意味合いが異なるね。住み込みで働いてもらうんだ。今の世界の知識と君自身の力についても指導を同時に行う。もちろん給料もだすよ」
なんか、内容だけ聞くと僕にしかメリットがないように思えるが、一体宗平さんは何を考えているのでしょうか?
「まぁ、私にとって今はメリットはないように思えるけどね、今後の先行投資みたいなものさ。君の力はきっと強大なものになると考えているんだ。そして、そのためには少しでも恩を売っておこうという魂胆さ。わかったかな?」
この人_宗平さんが言いたいことはよくわかった。
僕の力が何なのかはわからないけど、僕が生きるためには知識が必要だし、力も必要だ。
もう三年経ってしまった新しい世界で取り残された僕はこれ以上なものにすがる余裕はないだろう。
僕が選んだ答えは
「こちらからお願いしてもいいですか?ここで働かせてください」
ここ高槻家で執事という仕事をすることにした。
「うん、こちらこそよろしくね。紫苑君」
こうして、影浦 紫苑は愛知領の侯爵家・高槻家で住み込みの執事として働くことになった。
この選択がのちの紫苑の生活が高槻家の生活が一変することとなった。
………………たぶん。
これで一章は完結です。
年内に一章完結することができてよかったです。
二章に関しては割と早めに投稿する予定です。