第七話「化け物と一緒に肝試し」
こんにちは、オロボ46です。
今回は「せす市」の廃墟のお話ですが、
ちょっぴりホラー要素含んでいます。
それでは、どうぞ。
「コンナ古イ所ニイルノ・・・・・・?」
化け物の少女は坂崎の持っていたライトに照らされた廃墟を見て言った。
「結構忘れ去られていそうからのう・・・・・・
人目を避けるのはいいが、地震が起きたらどうするんじゃろうな。」
坂崎はそう言っていると、
「おーい!みんないるかー!?」
少年の声が響き渡った。
ガキ大将は他の二人を探していた。
「いるんだったら返事してくれー!!」
少年が大声を出しても虚しく響くだけだった。
(二人共、どこへ行っちまったんだ・・・・・・)
ガキ大将は以外と冷静だった。
気がつくと廃墟の中にいた時も、慌てずみんなを探していた。
肝試しように買ったばかりのライトをあの時持っていたことが幸いだった。
ひたっ、
何かが頬にあたる感覚がした。
(今日の雨の水滴が残っているのか?)
そう思いながら二人を探し続けるのだった。
「ワア・・・・・・広イ・・・・・・」
化け物の少女は廃墟の中を見渡して言った。
「どうやら、病院のようじゃのう・・・・・・」
坂崎が辺りを見渡していると、
「坂崎サン、アノコ・・・・・・!!」
少女が指した先に、あのどこか抜けていそうな少年がいた。
少年は何かを追いかけるように奥へと消えて行った。
「に、にいちゃん・・・・・・」
ガキ大将は、壁にもたれ掛かって体育座りしているとりまきの少年を見つけた。
ガキ大将の事を"にいちゃん"と言っている所から、
どうやら兄弟のようだ。
「おい、大丈夫かよ!!」
「にいちゃん・・・・・・僕の顔に何かついているだろ・・・・・・?」
ガキ大将は弟の顔を見た。
「何もついてないぜ。」
「いや、いるんだ・・・・・・虫のような何かが、いっぱい・・・・・・ひっ!!?」
ひたっ
ガキ大将も、何かが引っ付いたような感覚がした。
「僕たちはもう駄目だ・・・・・・
このまま見えない虫に食べられるんだよ・・・・・・
もうあいつ食べられてるんじゃないかな。
あはふはふあはうはあっふあはうあはううあはうあふあはふあああうあ。」
漫画のように泣き叫ぶことすらできなかったのだろう。
弟は精神的に参ってしまった。
ガキ大将が弟を連れていこうと手を伸ばした時、不気味な声がした。
「誰カイルノー!?イタラ返事シテー!!」
何かが近づいてくる・・・・・・!?
ガキ大将は急いでその場を離れて行った。
弟を置き去りにして・・・・・・
(ドウシテ大声出シチャッタンダロウ・・・・・・)
化け物の少女は口に手を当てて思った。
人間とは違う声帯を持つため、少年たちが怖がってしまうと思ったからだ。
抜けている少年の姿は見失ったが、ついさっき別の少年の声がした。
その少年を坂崎と少女が見つけた時には、すでに気を失っていた。
「ウワァ・・・・・・」
化け物の少女は少年の顔を見てドン引きした。
少年の顔にびっしりと、見えない虫が張り付いていたからだ。
「見た目は別に命に別状はなさそうじゃが・・・・・・
なんとも言えないのう・・・・・・」
坂崎は少年の様子を見て言った。
「ぎゃあああああ!!!」
また別の少年の悲鳴がこだましたのは、その直後だった。
「ねえ、どうしたの?怖くないよ?」
どこか抜けていそうな少年は再会したガキ大将に向けて言った。
ガキ大将はしりもちをついて恐怖で震えていた。
「あの子も連れてきてよ。みんなで遊ぼうよ?」
ガキ大将は少年の後ろにあるものを見て、気を失った。
その時、部屋の扉から坂崎と化け物の少女が入ってきた。
「ッ!?」
「こ、これは・・・・・・!」
坂崎は奥にあるものを見て、後ずさりした。
奥には、巨大なサナギのようなものがいた。
女性の顔を覗かせており、下部の穴からは見えない虫が出てきていた。
「ごめんね、この子たちが驚かせちゃって・・・・・・
結構いたずらっ子だから・・・・・・」
サナギの化け物は坂崎たちに向けて謝っていた。
「ズット動ケナイノ・・・・・・?」
化け物の少女はサナギの化け物の姿を見て言った。
「うん、この病院に住み着いてからね。
だけど、あたしはこのままでいいの。
化け物になる前、仕事に疲れてさ、もう静かに暮らしたい、て思っていたの。
それでふと廃墟巡りをしようとこの廃墟に入った時、
もうここで暮らしたいって思っちゃったの。
それからこんな姿になって、この子たちと出会ったの。」
サナギの化け物は、見えない虫を見つめて言った。
「この子はよく町の様子を見てきてくれるの。
今日の夕方、この子たちが面白い話を教えてくれたの。
一つが、三人の子供たちが肝試ししようとしたこと。
もう一つは、あたしと同じようにこの子たちが見える
化け物の見た目をした女の子のこと。
でも、ひどい思いをさせちゃったね・・・・・・」
「そんなことないよ。」
どこか抜けていそうな少年が言った。
「僕、新しい友達ができたんだもん。
この見えない虫さんと、サナギのおばちゃん、それに・・・・・・」
そう言って、化け物の少女の頭のフードを下ろした。
「この触覚のついたお姉ちゃん!」
この少年は、化け物の見た目をした少女に対しても恐れずに接してくれた。
「そっか・・・・・・友達か・・・・・・」
サナギの化け物が感情に浸っていると、坂崎が話しかけた。
その声はいつもと違って、震えていた。
「すみませんが・・・・・・
この子たちの親がとても心配しているんですがのう・・・・・・」
「そっか・・・・・・それじゃあそろそろ帰らないとね。
かわいそうだけど、気を失っちゃった子たちはもう記憶を消さなきゃ・・・・・・
嫌な思いさせちゃったもんね・・・・・・
君たち、今日のことは誰にも話さないって約束してくれる?」
「うん、約束する!」
「モチロン、オ互イ様ダカラ・・・・・・」
少年と化け物の少女は答えた。
「ありがとう。二人とも。それじゃあ、帰ろっか」
サナギの化け物が言うと、気を失っていたガキ大将が立ち上がり、
何かを追いかけて去って行った。
その何かは言わなくてもお分かりいただけるだろう。
少年は彼を追いかけて部屋を出る時に、化け物の少女達に向けて手をふった。
あの弟も見えない虫に先行されて、家に帰ることだろう。
「・・・・・・お嬢さん、もう帰るかのう」
坂崎の言葉はさっきと同じように震えていた。
(アノ坂崎サンガドウシテ怖ガッテイルンダロウ・・・・・・)
少女は疑問に思ったが、気にせず後に続いた。
廃墟の外、せす市の月の光を見ながら
化け物の少女は次の町のことを想像していた。
その時、あの見えない虫が少女の前を横切った。
月の光に当てられ、その虫は透明でありながらも美しく輝いていた。
いかがでしたか?
次回は次の町のお話になります。
さすがにホラー要素はないので、ご安心を!




