第五話「注文の多い人形店」
こんにちは、オロボ46です。
前回前書きと後書きが単純だったので、
今回クイズでもしようかなと思ったけど
もう少し後から出したいと思っています。
今回は「きこ市」の続きからです。
それでは、どうぞ。
「しかし、結構古い店じゃのう」
「歴史がある店です」
「そういえば、ウサギのような耳が生えた猫のぬいぐるみ、
知らないかのう?」
「ちょっと前に売れましたよ。」
「そうかそうか。
それにしても、細くて美しい腕ですなあ」
「あなた、今の状況わかっているんですか?」
開始早々物騒だが、
坂崎は人形店の扉の奥で、店員の女性に首筋をナイフで突きつけられていた。
「扉に張ったメモ、見ましたか?」
「いや、見てなかったが・・・・・・」
女性はため息をついて言った。
「それなら、今すぐ帰ってください。
そして、この事は絶対に口出ししないでください。
それから、二度とここに入らないでください。
あと、少しは緊張感持ってください」
「注文の多い人形店じゃのう・・・・・・」
坂崎は店員の心を詠んでから、立ち去ろうとした。
(この店員、何か大切な者を必死に守ろうとしているのう・・・・・・)
そう思った時、メモ用紙に気づかず入ってしまった扉の先に、
化け物の少女が立っていた。
「誰なんですか!?」
後ろから店員の声がしたと思ったらその店員は坂崎を突飛ばし、
少女へと向かっていった。
「あなた、見ましたか!?」
少女は何のことかわからなかった。
その時、店員は少女が化け物だということに気がついた。
「・・・・・・さっき、人形を見ていた方ですね?」
少女は頷いた。
「それなら、さっさとここから出ていってください。
早く出ないと、通報しますよ?」
店員がそう言っていると、奥から声が聞こえてきた。
「その子は僕が誘ったんだ」
「!?・・・・・・どういうことなの!?兄さん!?」
「とりあえず、説明するからこっち来てくれ。
お客さん、少し待ってもらえますか?」
そう言われたので、坂崎と少女はレジで待つことにした。
「・・・・・・サッキ、何シテイタノ?」
「んまあ、見落としじゃな」
「???」
「それにしても、あの娘は意外と気が強いのう」
「ソウイエバ気ニナッテイタケド、
"ツウホウ"テ、ナニ?」
「まあ、後から説明するわい。
どうやらお許しをもらえたそうじゃ」
扉が開いて、店員が出てきた。
「・・・・・・そのおじいさんは信用できますか?」
店員に聞かれた少女は頷いた。
「この先で見たことは絶対に話さないでください」
そう言って、店員は奥へと去っていった。
二人は奥の部屋に入り、階段を上がった。
そこには、少女が外で見かけた青年と先ほどの店員の女性がいた。
その青年は脇腹から青い腕が4本生えていた。
普通の両腕と合わせると6本腕になるだろう。
「いやあすみません。妹は小さい時に両親を亡くしたものですから
結構心配性なんです。」
(心配性というレベルじゃないがのう・・・・・・)
坂崎は店員の振る舞いを思い出した。
「アノ・・・・・・ドウシテ私タチヲコノ部屋ニ・・・・・・?」
「ああ、ぬいぐるみを見つめていた君を妹が見つけてね、
僕に話してくれたんだ。まさか化け物の姿をした人間が町を歩いていたなんてね。
ぜひともあってみたいと思ったんだ。
そういえば君、あのぬいぐるみが欲しかったのかい?」
「エ・・・・・・イヤ・・・・・・ソノ・・・・・・
トッテモカワイカッタカラ・・・・・・ツイ・・・・・・」
化け物の少女は顔を赤くした。
「よし、ちょっと待っててくれ」
そう言うと青年は6本の腕で作業を始めた。
「いろんな人形やぬいぐるみを作って、子供たちを喜ばせることが
お兄ちゃんの長年の夢だったんです」
店員の女性が青年の作業を見ながら話している。
「だけどお兄ちゃんはとても手先が不器用で、
裁縫すらできなかったんです。
だから、すっかり夢を諦めちゃったんです」
「化け物病にかかるまでは・・・・・・じゃな」
「はい、最初の一本目が生えた時、病院で見てもらおうとしたんです。
でも噂によると、治療方はまったく見つかってなくて、
病院で見てもらった患者のほとんどは一生病院の中で暮らすらしいと聞きました。
私は反対して、この家の二階にかくまうことにしました。
それから二本目が生えた後、お兄ちゃんは人形作りを始めました。
あの腕はお兄ちゃんが考えているものを作ってくれるらしいんです」
坂崎は青年の4本の腕を見た。
4本の腕は迅速に作業を進めていた。
それでいて決して適当ではなく、丁寧に仕上げていく。
(化け物病で夢を叶えた者か・・・・・・)
坂崎は、わくわくしながら作業を見守る化け物の少女を見つめた。
「ひそひそ(ねえ、あのあやしい人さあ、ぬいぐるみを抱いているわよ?)」
「ひそひそ(きっと隣のおじいさんの相手に疲れたのよ。きっと)」
電車の中、女子高生の会話を無視しつつ、
少女は青年にもらったぬいぐるみを満足そうに抱いていた。
(かなり気に入っているのう・・・・・・)
その時、坂崎は少女に"通報"について教えることを思い出した。
今の世間では、化け物病は感染するものという説が広がっている。
実際はデマだったが、それを知っているのは
坂崎を含む、極僅かな人間のみだった。
その為、警察などに発見された化け物は、
感染を防ぐため、そのまま病院へ化け物病の患者として送り込まれていた。
もし、あの時本当に通報されていたら、
今頃少女の旅は終わってしまったであろう。
人形を大切そうに抱いている化け物の少女と、
実は内心冷や汗をかいていた坂崎。
二人を乗せた電車は次の町へと向かって行った。
いかがでしたか?
次回はまた別の町のお話になります。
最近二話完結型になっているな・・・・・・
と思ったら第二話からそうでしたね。
それでは、次回もお楽しみに。




