第二十二話「人混みの......怖さ?」
こんにちは、オロボ45+1です。(なぜ足し算!?)
今回はえわ市のお話です。
それでは、どうぞ。
人々が群がっているその光景は、
まるで人間の海のようだった
その海は、えわ市の観光名称である橋にあった
写真をとる者
土産者を買う者
特にすることもなく見物だけする者
そして、うごめく海の光景を
離れて見る者も......
「や、やっぱりやめましょうよ......」
ティルムはタビアゲハの腕を掴んで引き留めた
「エー?デモナンカ楽シソニ集マッテイルカラ......」
「タビアゲハさん......あなたは真の恐ろしさを知らないんですよ......」
「恐ロ......シサ......?」
そう言ってティルムは人混みの恐ろしさを語り始めた
「いいですか?タビアゲハさん......
人混みの中に入ったら最後ですよ......?
次にどこへ行こうか迷っている中、
人がどんどん動いて立ち止まれなくなります。
下手したら肩に当たって転けてしまうかもしれません......
そして、気がついた時には、まったく見知らぬ......」
気づいた時は既にタビアゲハの姿はなかった
「ソレニシテモ......
ドウシテコンナニ集マッテイルンダロウ......」
人混みの中、タビアゲハはかき分けながら歩いていた
着ているローブのお陰で、
人々は化け物である彼女の姿を気にすることはなかった
「ここでお知らせです。
12時から"コンくん"との握手会があります!
ちびっこのみんな、橋の近くの公園に集まれ~!」
突然、スピーカーの音が人混みに響き渡った
「コン......クン......?
キツネ......ナノカナ......?」
タビアゲハはそのイベントに興味を持った
「ああ......タビアゲハさん......
どこへ行ったんだろう......」
ティルムはタビアゲハを探して近くの公園に来ていた
(さっきの放送で興味を持って
きっとここに来るはずだけど......
もし人混みに押されて迷子になったとしたら......)
その時、デフォルメされた西洋的なドラゴンの着ぐるみが
司会者と共に公園に現れた
子供たちは着ぐるみ......"コンくん"の元へ集まっていた
(やっぱり子供は子供だな......
何も考えず......ただコンくんの元に......ん?」
子供たちに紛れて、黒いローブを来た背の高い人物が紛れていた
(タビアゲハさん!?)
ティルムは慌てて止めようとした
(でも、今止めに行ったら逆に怪しまれるかも......)
ティルムがどうしようか迷っていると、
隣の人に話しかけられた
「コンクン、ッテ
ドラゴンナンダネ......狐カト思ッタ......」
「狐......?
ああ、そういえば、
日本は狐の鳴き声を"コン"って表すそうですね......
友人に聞いたことが......」
そこまで言ってティルムは隣を見た
「......ティルムサン、ドウシタノ?」
隣にはタビアゲハがいた
「......」
「......?」
それじゃあ、あのローブを着た人は......!?
ティルムがコンくんの方を向くと、
黒いローブを着た者があちこち歩いているのが見えた
ティルムは、その様子に違和感を持った
「アノ人、フラフラシテイルケド......」
タビアゲハも気づいたようだった
「......追いかけてみよう」
ティルムの言葉に、タビアゲハは頷いた
「コノローブ......
私ノローブト色ガソックリ......」
トイレの前に放置されたローブに触れて、
タビアゲハは疑問に思った
「ダケド、カナリ濡レテイル......」
ティルムは男子トイレから出てきた
「こっちにはいなかったけど......
まさか女性トイレに......」
ティルムは迷った
タビアゲハの偽物を追いかけて女子トイレに突撃するか、
自身のプライドを守るのか......
「ソレジャア私ガコッチ調ベテミルネ」
タビアゲハが女子トイレに入ったことで、
ティルムの迷いは無駄になった
タビアゲハを待っている間、
ティルムは今までの彼女の行動を振り返った
むま市の路地裏で初めて出会ったあの時、
タビアゲハはロシア語で話しているにも関わらず
日本語で話していると主張した
今思えば、彼女の声は少し独特なトーンで話している
もしかしたら、彼女の声は
聞こえた人物のもっとも馴染みのある言語で
聞こえるのだろうか......?
(それにしても......遅いな......)
ティルムはタビアゲハがまだ出てこないことに
心配していた
そもそもトイレは狭いはずだ......
(まさか......)
心配になったティルムは女子トイレの中を覗いた
べちんっ!!
おでこに強い痛みを感じた
そのまま倒れたティルムの上で何かが乗っかり、
ティルムの頭を叩いた
「コイツメコイツメコイツメコイツメ!!」
さっきのおでこと比べると全然痛くなかった
続いてお腹あたりでも叩いていることに気づき、
どうやら二人いることに気づいた
痛いどころか、むしろ気持ちいいマッサージのようだった
「ダメダヨ......ソノ人ハ悪イ人ジャナイカラ......」
タビアゲハの声が聞こえたと思うと、
上に乗っかっていた何かは素直に降りた
ティルムが起き上がると、
女子トイレの中でタビアゲハが蛇のような生き物を抱えていた
蛇のような生き物は、
おでこに繋ぎ目ような穴がある東洋的な竜のようであった
ティルムが乗っかっていた二匹の生き物も、
同様の見た目をしていた
えわ市のトイレで見つかった三匹の竜の化け物
この子たちと黒いローブとは何か関係があるのだろうか......
いかがでしたか?
そういえば今回のティルム、
びびっていませんでしたね......
次回もお楽しみに!




