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【化け物バックパッカー旧作版】  作者: オロボ46
第二部「ロシア編」選択の旅
22/24

第二十一話「選択すべき時まで」

こんにちは、オロボ46です。

今回はろる市の続きからです。

少し長めですが、どうぞ。

「よし......今日の分は確保した......」


 男は気を失っている青年のポケットから財布を取り出した


「何か起きる前にさっさと退散するか......」


 男は素早く路地裏の奥へと走った


ガチャン!


 うっかりつまれている箱に足をぶつけてしまった


(ま、まずい!!)


 この音で誰かに気づかれたら.......!


 男は慌てて奥へと逃げて行った




「ふう......ここまでくれば大丈夫だろう」


 男はゲームセンターの中にいた


「さて、新しく稼働した格ゲーを制覇するか」


 男は目的のゲーム機の前にたち、

先ほど入手した財布から100円玉を掴んだ


 その手は無数の触手で出来ていた


 100円玉を入れて、

ボタン一つに触手一本置いた


「キャラクターは......こいつがいいだろう」


 キャラクターを選択し、第一回戦が始まった


「よし......こいっ!!」




「ええぇぇぇぇぇぇ......」


 後ろから落胆の声が聞こえた


 それも仕方ないだろう


 最初の相手にパーフェクト負けしてしまったからだ


(くそ......最初の相手だからと言って、油断したか......

次から本気で行かさせてもらおうか......!)


 財布から再び100円玉を取り出し、挿入した


(コンテニューだっ!!)


 男は本気を出した


 今までの対戦格闘ゲームで身につけた

多数のテクニックをフルに使いこなし、

相手を追い詰めていく


「ヒソヒソ」

「ひそひそ」


 男の後ろで呟く声が聞こえた


(ふっ......見たか......

これが俺の実力さ......)


 相手の残り体力はまさに虫の息といったところだった


(決めてやるぜ......必・殺・技!!)


 男が入力したコマンドによってキャラクターは必殺技をくりだした


「はっぶしゅるーいぃぃぃぃ!!」


「キャア!?」


(決まったあああああーーーーツ!?)


 必殺技が相手に命中した瞬間、

男の背中に痛みを感じたかと思うと、そのまま気を失ってしまった




「ど、どうしよう......

財布を盗まれるなんて......

僕のせいだ......」


 ろる市の路地裏で、

ティルムは頭を抱えて唸っていた


「......! ネエ、アソコ.....!」


 タビアゲハは奥を指した


 その先には缶や箱などが倒れていた


「キットスグニ逃ゲヨウトシタケド

何カニブツカッテ慌テタンダト思ウ......」


 タビアゲハの言葉を聞いて、

ティルムは路地裏の先に少し警戒した


「で、でも、すぐに行くのも危ないと思いますが......」


「ティルムサン! トニカク行コウ!」


「うわっ!?」


 タビアゲハはティルムの言葉を聞かずに

ティルムの手を掴んで走った





「路地裏の奥に扉があって、

その中に入ってのはいいんですが......」


 タビアゲハとティルムは

ゲームセンターの中にいた


「はあ......こんなところにいたら......」


 ティルムの右手が疼き始めた


「ああ......こんなときに......」


 それを見ていたタビアゲハはティルムに話しかけた


「ネエ、ティルムサン......

次ハ海ノアル町ニ行カナイ?」


「え? 確かに今は海の季節だけど......どうして?」


「ダッテ、ティルムサン

サーフィンシタソウニ

腕ガ震エテイルカラ.......」


「???」


 もちろん、ティルムには

なぜ右手が震えたらサーフィンなのか

意味が解らなかった


「ソレニシテモ......

ナンダカ目ガチカチカシテ......

ココ、アマリ好キジャナイカナ......」


 目じゃなくて触覚なんじゃない? と思ったが、

そこは心の中に留めたティルムだった


「そういえばタビアゲハさん、

僕が路地裏の前を通ったときに

触手のようなもので僕が引きずりこまれたんですよね?」


 タビアゲハは頷いた


「ここは人がいっぱいいるから......

さすがに触手を持った人が紛れこんでいたら......」


「ア、イタ」

「ええぇぇぇぇぇぇ......」


 あまりにもあっけなさ過ぎて

驚きの声もため息のように過ぎ去ってしまった




 タビアゲハが見つけた触手を持つものは、

昼間ティルムが夢中になった対戦格闘ゲームの前で奮闘していた


 姿はタビアゲハのように怪しげなローブで隠れているが、

頭は普通の人間で、フードも下ろしていた


「......本当にこの人なの?」


「手ヲヨク見テ」


 ティルムは男に気づかれないように手を見た


 そして、少し後退りして呟いた


「......本当だ」


 男の手は無数の触手で出来ていた


 そして、手の側にはティルムの財布があった


「ヒソヒソ

(アノ財布ダヨネ......?返シテモラオウカナ......)」


「ひそひそ

(いや、あの人夢中だからもう少し様子を見ましょう......)」


 二人は男のプレイを見守った




(うっ......くしゃみが......)


 ティルムは鼻を押さえた


「ティルムサン......大丈夫......?」


 タビアゲハが心配そうにティルムの顔を覗いた時......


「は......は......

はっぶしゅるーいぃぃぃぃ!!」


「キャア!?」


 タビアゲハは驚いて後ろにこけてしまった


「あ......タビアゲハさん、

大丈夫ですか......あ」


「ウ、ウン......大丈夫......ア」


 タビアゲハの後ろでは男が気を失って倒れていた


「......」


「......」


「......結果オーライ......カナ?」




「す、すみませんでした......」


 路地裏の中、

触手の男は膝をついて謝った


「デモ、ドウシテ財布盗ムノ?」


「......俺を見失ってしまうかと思ったからです」


「見失ウ......!?」


(見失う......?)


 ティルムは触手の男の言葉の意味が解らなかった


「俺はこの手になる前からゲーセンに夢中だった......

日本一のプロゲーマーになることが夢だったんだ......

でも、この手になったら病院に連れていかれるだろ?

だから......大会なども出ることができなかった。

俺はゲーム以外は何も出来なかったから、

他の職で食って行けなかった。

だけど、夢を諦めようとすると、

ふいに意識が消えそうになるんだ......」


「だからと言って......お金を盗むなんて......」


 ティルムがそう言いかけようとしたが、止めた


 タビアゲハは、触手の男の話を深刻そうな表情で聞いていた


 まるで自分と重ねているかのように......


 ティルムは、タビアゲハが不法入国してこの国に来たことを思い出した




 路地裏から出た二人は

ようやく真っ暗になった町の中を歩いていた


「ネエ......ティルムサン......

本当ニオ金アゲチャッテ良カッタノ......?」


「うん、宿代は残したし、

荷物もいくつか売れば軽くなるから......」


 ティルムがそう言った時、

タビアゲハはうつ向いて言った


「ネエ......私ガイタラ......モットオ金ガ......」


「......大丈夫ですよ。

とにかく、今はこの旅を楽しみましょうよ」


 この選択はいつかは決めないと行けないかも知れない


 だけど、今すぐには決めることができなかった


 その選択をすべき時まで、

初めて会ったタビアゲハさんのように楽観的に行こう


 ろる市の夜空を見て、ティルムはそう誓った

いかがでしたか?

しかし......触手の男目線をカットすれば大幅に文字数節約できたゲフンゲフン......

次回もお楽しみに!

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