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【化け物バックパッカー旧作版】  作者: オロボ46
第二部「ロシア編」選択の旅
20/24

第十九話「導きのススメ」

こんにちは、オロボ46です。

今回はやよ市の続きとなります。

それでは、どうぞ。

「僕にはちょうどいい狭さだけどね」


 路地裏のどこからか、声が聞こえた


「ダレ......?」


タビアゲハは声の主を探した


「よっこいしょっと」


 路地裏の影から男が出てきた


 背が高く、真っ白なスーツを着ており、

()()()のような耳が特徴的だった


「ア、ゴメン......

勝手ニ入ッチャッテ......」


「いや、いいんだよ。

ちょうど、僕も暇だったからね」


 謝るタビアゲハに、信号機の化け物は笑って話しかけた


「そういえば、さっきの君の独り言を聞いていたんだけどさ、

もしかして新入り?」


「シン......イリ......?」


 タビアゲハは男の発言に疑問を持った


「あ、ごめん......気にしないで。

それよりも、寝るところ探しているんだろう?

ここにしたらどうだい?」


「イイノ......?」


「ああ、少し広すぎるかも知れないけど、

君が良ければどうぞ。」


「ソレジャア......オ言葉ニ甘エテ......」


 タビアゲハはその場に座り込んだ




「ふーん、旅ねえ......

よくそんな勇気が出せたね......

羨ましいよ」


 タビアゲハと信号機の化け物の会話は続いていた


「ウウン、勇気トハチョット違ウカモ......

アル人ガ私ヲ旅ニ誘ッテクレナカッタラ

旅ニ出ルコトナンテデキナカッタ......」


「ほう、それがティルムさんかい?」


「ウウン、別ノ人......

アル人ト別レタ後、彼ニ出会ッテ一緒ニ旅スル事ニナッタノ......」


「なるほど......」


 二人が会話している時、

タビアゲハは後ろから見ている気配に気づいた


「それで......ん?誰かいるの?」


 信号機の化け物もティルムに気づいたようだ


「ひぃ!?」


 ティルムは尻餅をついた


「ティルムサン、ドウシテココニ......?」




「す、すみません......驚いてしまって......」


 ティルムは遠慮がちに謝った


「いやいや、逃げたり叫ばなかっただけでも勇気があったと思うよ」


二人の会話に、ティルムが加わった


「それで、さっきの続きだけど、

ティルム君はどうして旅をしているんだい?」


「えっと......僕は自分で言うのもなんですが、

かなりの優柔不断なんです......

それを直したくて......」


「ユウジュウフダン......?」


「あ、えっと......

なかなか物事を決められないことです」


「なるほど......自分を変える旅か......

いいもんだね......」


 信号機の化け物は一息ついて、

再び口を開いた


「ところでさ、君たち、信号機ってなぜあると思う?」


 信号機の化け物の問にティルムは口をつぐんだ


 (無駄に悩む時間を増やす機械)

が彼の本心だったが、

きっと信号機の化け物にとって失礼だと思ったからだ


「車ニ跳ネラレナイタメ......?」


「なるほど......ティルム君は?」


「あ、えっと......タビアゲハさんと一緒です......」


「そうか......

二人共、正解だと思うよ。

まあ、答えは人それぞれだから

うっとうしい機械というのもきっと正解だと思うよ」


 ティルムは内心ドキリとした


「僕は......

君たちと似た答えだけど、

信号機は、人や車を導いてくれると思っているよ」


「人や車を......」


「導イテクレル......?」


「事故にならないように導きながらも、

選択を誤らないように考える時間へと導いてくれると思うんだ」


「選択......」


 ティルムはまたもや"選択"という二文字に反応した


「あれは、僕が若いころだったかな......

その時の僕は刑事だったんだ。

ある事件の捜査をしていて、ある場所へ向かっている時だった。

信号が赤に変わったって

僕はイライラして待っていた。

その時、事件の鍵となる場所が思いついた。

それは今向かっている場所とは反対方向だったんだ。

そのおかげで、事件は無事に解決。めでたし、めでたし」


「......」


「ソンナ出来事ガアッタナンテ......」


 タビアゲハは感動したようにため息をついた。


(いい話......かな......?)


 ティルムはタビアゲハの反応に疑問を覚えた


「それからしばらくして、こんな耳になった。

きっと僕は、あの時から信号機のことばかり考えていたんだろうな......」


「......タビアゲハさんがその触覚が生えたのも

そんな事を考えていたから?」


 ティルムはタビアゲハに聞いた


「......解ラナイ。

コノ姿ニナル前ノ事ハ覚エテナイカラ......」


「さて、もういいかい?

この耳になって以来、僕はこの路地裏に留まることにした。

僕も、誰かを導くことができれば......と思ってね」




 信号機の化け物は一息ついて、ティルムを見て再び口を開いた


「あ、そういえばティルム君、宿は決めたのかい?」


「い、いえ......それがまだ決めてなくて......」


「それなら一つアドバイス、宿を見つけるコツは......」


「あ、あ、あ、あの、

ちょっと待ってください!」


 ティルムは慌てて止めた


「?」


「あ、あの、実は......えっと......」


 ティルムが言おうとしていた事を察せたタビアゲハは

横から声をかけた


「キット、ティルムサンハ自分デ見ツケタインダト思ウ......」


「......!」


 信号機の化け物はショックを受けたように固まった


「あ、あの......ありがとうございました。

それじゃあ......僕はこれで......」


 ティルムは路地裏から立ち去った




「......事情を知っていたのに、

なぜ僕はあんな事を言ってしまったんだろう」


 ティルムが去った後、

信号機の化け物は後悔したように呟いた


「......ジジョウ?」


「ティルム君は優柔不断な性格を直すために

旅しているって言っていたのに......

僕は彼の選択を奪おうとした......

これじゃ......人を導くんじゃなくて、

人の道を勝手に決めているだけだ......」


 信号機の化け物は頭を抱えてうなだれた


 タビアゲハは信号機の化け物の顔を覗きこんで話しかけた


「......ネエ、

ドウシテティルムサンニ、

アンナコトヲ言ッタノ......?」


「......僕はきっと勘違いしていたんだ。

人を導くことは、その人にアドバイスすることだと思っていた。

だけど、違った。

僕がしていたことは、ただのお節介だったんだ......」


「......」


 タビアゲハはしばらく黙り、

そして何かに気づいたような表情で信号機の化け物に話しかけた


「アリガトウ、私ヲ導イテクレテ」


信号機の化け物はタビアゲハの言葉の意味が解らなかった


「モシアナタガ間違ッテイナカッタラ、

コノ先間違ッタ選択ヲシテイタノカモ知レナイ......

アナタガ導イテクレタノハ、多分コウイウコトダト思ウ......」




 やよ市の交差点


 横断歩道の前でティルムは待っていた


 信号は赤だった


 しかし、ティルムの頭の中は二つの選択肢しかなかった


(安いけど、少し古いホテル......

少し高いけど、最近できたばかりのホテル......

でも、今後の旅のホテル代を考えて......!)


 信号が青になったのと、ティルムが選択したのはほぼ同時であった

今回は長くなりましたが、いかがでしたか?

次回は別の町になります。

次回もお楽しみに!

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