第十七話「港の博物館」
こんにちは、オロボ46です。
今回で「むま市」は終了です。
それから、今回から見易いように編集しました。
それでは、どうぞ。
「ソウイエバ、歴史ガアルッテイッテタケド・・・・・・」
むま市の港ににて、
タビアゲハはある建物を見つけた
「・・・・・・ヤッパリナンテ書イテアルカ解ラナイヤ」
ティルムが言っていたロシア語は日本語に聞こえたが、
看板に書かれたロシア語はやっぱりロシア語にしか見えなかった
外からの様子だと、
どうやら博物館のようだった
「デモ、オ金ガイルヨネ・・・・・・」
タビアゲハは諦めて、港を去っていった
「・・・・・・何?俺の筋肉の誕生物語を聞きたい?」
民家の中、
胴体が伸び縮むする男はティルムに聞き返した
「あ・・・・・・えっと・・・・・・
こんなことを聞いて失礼なんですが・・・・・・
あなたがその体になっても希望を失っていないように思えて・・・・・・
希望を失わないコツとかを・・・・・・」
男は少し迷ったが、すぐに返事をした
「よし、わかった。
そこまで言うなら俺と筋肉の友情物語、教えてやるよ」
そして男は自分の過去を語り始めた
しかし、大部分が筋肉やトレーニング方法の話ばかりな上に
全部書くと2000~3000文字ではとても収まりきれないので、
最後あたりの重要な話のみ記述する
「俺が初めて胴体が伸び縮むようになったころ、
絶望を感じたね。
もしこのままグニャグニャになって
今まで育ててきたこの筋肉をもう育てることができなくなると
生きている目的を失ってしまうからな。
だから、最初は病院で隠ろうとしたんだ。
この病気は治療法は保証されていない。
だけど、とにかく俺はおかんに迷惑をかけたくなかったから、
おかんに電話してくれって言ったんだ。
すると、おかんは俺にスマホを投げつけた。
そしてこう言って部屋を去った。
『それぐらい、自分で選ぶんだよ!
このバカ息子!』
俺はスマホを手にして、しばらく考えた。
そして選んだ。
俺には今まで育ててきた筋肉がある。
とにかく育てれるのなら育てて、
俺の生き甲斐をこの体に刻み続ける。
そう決めたんだ」
ティルムは男の話を聞いて、
タビアゲハと別れたことを思い出す
(僕はあの時、自分を変えたかった・・・・・・
自分の夢を見つけたかった・・・・・・
だけど、僕はそれとは反対の選択をしてしまった・・・・・・)
しばしの沈黙の後、ティルムは男に聞いた
「あの・・・・・・
もし、選択を間違ったとしたら・・・・・・
その選択を・・・・・・変えることは・・・・・・できますか?」
「・・・・・・無理かも知れないな。
ただ、時々同じ選択肢が来ることもある。
次で間違えなければいいだろ」
同じ選択肢・・・・・・
もしあるとすれば・・・・・・それはいつになるんだろうか・・・・・・
(僕は・・・・・・次は正しい選択を選べるんだろうか・・・・・・?)
ティルムがそう思った時、
男は窓の外を見た
「お、やっとあいつがきたか・・・・・・」
それを聞いて、思わずティルムは立ち上がった
「ドウシテココニ戻ッテ来タンダロウ・・・・・・」
タビアゲハは
路地裏へと戻ってきた
港の後、町を歩いて来て
日本とは違う建物を十分に楽しんだものの、
彼女の心の中の穴は空きっぱなしだった
(坂崎サン・・・・・・)
あの時、貿易船のなかでタビアゲハは決意していた
一人だけでも世界を見続けると
だけど、気がつけば坂崎と一緒にいるような錯覚に陥ってしまう
(私・・・・・・一人ジャ旅デキナイノカナ・・・・・・)
タビアゲハの頭の中に坂崎の姿が思い浮かんだ
そして次にここで出会ったティルムの姿が浮かんだ
「ーーーーーああああ!!」
誰かの叫びが聞こえたと思ったら、
どこからかティルムが落ちてきた
「ーーーーーつっ・・・・・・た・・・・・・」
「ダ、大丈夫!?」
「う、うん、大丈夫・・・・・・
足・・・・・・つっただけだから・・・・・・」
二階の窓から飛び降りて足がつっただけですむとは
たいしたものだが、
ティルムは再び選択権を手に入れた
「ドウシテ・・・・・・アンナトコロカラ・・・・・・?」
「あ、あの・・・・・・! タ、タビアゲハさん・・・・・・!」
「・・・・・・?」
ティルムは再び選択を迷った
旅に出るか、否か
その時、男が話した言葉を思い出した
"それぐらい、自分で選ぶんだよ!
このバカ息子!"
その言葉はなぜか、
自分に言われているような気がした
「あ、あの・・・・・・ぼ、僕も・・・・・・
旅に連れてってください!!」
ティルムは、選択した
「ただいま・・・・・・ん?
あんた、何やってんの?」
母親が帰ってきた時、
男は窓に向かってポーズをとっていた
「あ、おかんか。
ちょっと応援を・・・・・・」
母親はため息をついた
「アイス買ってきたから、
勝手に食べるんだよ!」
そう言って、
母親は部屋を去った
男は再び窓を向いてポーズをとった
路地裏から立ち去る二人に向かって・・・・・・
タビアゲハは港を訪れた
これで3回目だが、今回は一人ではなかった
「アソコ、オ金ガナクテモ入レタンダ・・・・・・」
タビアゲハは、前は入らなかった博物館を見てから、
共に行動することになったティルムに話しかけた
「は、はい・・・・・・そこは観光客のために無料で入れるんです。
それでは・・・・・・行きましょうか・・・・・・タビアゲハさん・・・・・・?」
タビアゲハは下をうつ向いて、
震えていた
その時の震え方は
貿易船の中での震え方と同じだった
しかし、あの時感じていた悲しみとは違う、
嬉しさによる震えだった
タビアゲハはティルムの顔を見て微笑み、口を開いた
「・・・・・・ナンデモナイ。
ソレヨリモ、行コウ・・・・・・」
タビアゲハは博物館に向かって走っていった
「あ、わ、えっと・・・・・・
ま、待ってくださーい!」
ティルムも置いていかれないように
後に続いた
その時、むま市の港にどこかの船の汽笛の男が響き渡った
いかがでしたか?
次回からは別の町になります。
次回もお楽しみに!




