第十五話「優柔不断な青年」
こんにちは、オロボ46です。
お待たせしました。今回から第二部となります。
それでは、どうぞ。
青年は今、選択を迫られていた
一度選択すると、もう変えられない
(後悔しない方はどっちだ・・・・・・?)
二つの選択肢はどちらも長所があり、短所がある
青年は迷いに迷い、そして、決断した・・・・・・
「・・・・・・まずい」
青年は選択を後悔した
ここはロシアの『むま市』のレストラン
{例え日本であろうがロシアであろうが町の名前はひらがな二文字で統一です(笑)}
青年は恋人といっしょに二つの新メニューを食べに来たのである
青年が食べたのは「青汁ステーキ」、
恋人が食べたのは「ポテチボルシチ」だった
「ああ、僕もポテチボルシチにすればよかった・・・・・・」
青年は後悔していた
その様子を無視して恋人は口を開いた
「ねえ・・・・・・話なんだけど・・・・・・
私、外国の学校に留学しようと考えているの。
よく考えたけど、夢を叶える為にはこれしかないから・・・・・・」
「いや、違う・・・・・・」
「え?」
「ポテチボルシチよりも、青汁ステーキのほうがきっと健康的には・・・・・・
でも、やっぱりまずいし・・・・・・」
「・・・・・・聞いているの?」
恋人は再び留学のことを話した
「留学・・・・・・!?そうなったら、もう僕と
会えなくなるじゃないか!」
「ありがとう・・・・・・でも・・・・・・」
「いや、でも夢を叶える為には仕方ないし・・・・・・
でも、向こうで何かあったら・・・・・・」
「・・・・・・」
青年は優柔不断で、物事をなかなか決めることができなかった
青年は呟き続けて、ようやく止めたい気持ちが勝ち始めたころ・・・・・・
「あの・・・・・・お客様・・・・・・そろそろ閉店ですが・・・・・・」
店員に言われた青年はポカーンとなった
恋人は、代金を残して既にいなかった
結局、恋人は外国へ飛び去ってしまった
レストランでの出来事以来、青年は恋人に会っていなかった
恋人にもう一度会おうか、迷ったためである
それから数日後の深夜
(はあ・・・・・・ようやく眠れるぞ・・・・・・)
日本から旅立った貿易船の運転手は、
今、睡魔との戦いに勝利した
彼は日本から旅立ってから一人で動かし続けた
交代の運転手はいたのだが、交代の直前で熱で倒れてしまった
他の船員は訓練した新人だったが、
実戦に船の舵を取らいて危なっかしかったので自分で運転した
持ち込んだ缶コーヒーを頼りに、長き道のりを運転しきったのである
船は今、ロシアの港に止まっている
(次の予定までたっぷりと時間がある・・・・・・
もうこの船でぐっすり眠るぞ・・・・・・)
その時、窓にこの船の船員ではない人影が見えたような気がした
(・・・・・・きっと新人たちだ。
この船で密航者なんているはずない。
きっと幻覚だろう・・・・・・)
そして運転手は、床に寝転がった
「ナントカイケタ・・・・・・」
港の倉庫の裏で、一息をつく人影があった
「一瞬見ツカッタト思ッタケド、多分大丈夫ダヨネ・・・・・・」
こう呟いている彼女の正体は、
第一話から見ていただいている皆さんはご存知であろう
彼女は、どこかの町の路地裏にたどり着いた
空は朝日が少しずつ見え初めていた
(ヨク解ラナイ文字バッカリダケド・・・・・・
トリアエズ今日ハ寝ヨウ・・・・・・)
彼女はローブのフードを降ろし、
背中に背負っていたバックパックを抱き抱えて寝た
彼女の見た夢には、ある老人との思い出が映っていた
「はあ、やっぱりここは落ち着くな・・・・・」
昼、青年は『むま市』の路地裏の中にいた
青年がこの町に来たときから、
日常の選択に疲れた時はよくここに来ている。
青年は一本道で、途中分かれ道のないこの道が好きだった
「・・・・・・ん?」
青年は奥で誰かが座っているのが見えた
(あんな所で何をしているんだ・・・・・・?
ここはちょっと話してみて・・・・・・いや、様子を・・・・・・)
その時、青年は恐怖で腰を抜かした
奥で座っていたのは、
肩まで伸びた髪と、女性のような体つきをしているものの、
顔に目がなく、皮膚は影のように黒く染まっており、
頭に触覚が生えている化け物だった
ローブを着ているが、頭のフードは降ろしており、
黄色いバックパックを抱き抱えていた
その化け物も、青年に気づいたようだ
(に、逃げないと・・・・・・
で、でも、逃げたら追いかけてくるかも・・・・・・)
青年が迷っていると、化け物は近づいて青年に話しかけた
「オ願イ、誰ニモイワナイデ」
(敵意はないみたいだけど・・・・・・
で、でも、油断して襲われたら・・・・・・
かといって逃げても危なそう・・・・・・
と、と、とりあえず自己紹介をしてみよう・・・・・・)
青年は化け物に言葉を返した
「は、は、初めまして・・・・・・
ぼ、僕はティルム・バザロフ・・・・・・
あ、あなたをつ、通報するつもりは、な、ないです・・・・・・」
青年こと、ティルムは口を震わせながら話した
「・・・・・・本当?」
「ほ、本当です!誰にも言いません!」
ティルムの言葉を聞いた化け物は、
ホッとした様子で口を開いた。
「ワタシノ名前ハ・・・・・・タビアゲハ」
「あ、よ、よ、よ、よろしくお願い・・・・・・します・・・・・・」
「ヨロシク・・・・・・ティルムサン・・・・・・」
化け物ことタビアゲハは微笑んでティルムの顔を頭の触覚で見つめた。
ティルムはまだ恐怖で腰を抜かしている。
「デモヨカッタ・・・・・・日本語ガ通ジテ・・・・・・」
タビアゲハの言葉に、ティルムは疑問に思った。
「ぼ、僕・・・・・・日本語なんて言っていません・・・・・・」
「・・・・・・エ?ソウ・・・・・・ナノ・・・・・・?」
「・・・・・・」
(ど、どうすればいいんだ・・・・・・)
「・・・・・・」
(確カニコノ人、日本語デ話シテイタケド・・・・・・ドウイウコト・・・・・・?)
しばらく無言が続いた。
ティルムは確かにロシア語で話していた。
そして、タビアゲハの言葉はロシア語で聞こえたのである・・・・・・
旅する化け物、タビアゲハと
優柔不断な青年、ティルム。
『むま市』での二人の出会いは、選択だらけの旅の始まりだった・・・・・・
いかがでしたか?
いきなり謎が出てきたのですが、
きっと後で判明するでしょう。
人格事件の方と平行して投稿していくので、
忘れたころに見てください。
次回もお楽しみに!




