表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【化け物バックパッカー旧作版】  作者: オロボ46
第一部「日本編」心の旅
1/24

第一話「心を詠む老人」

はい、こんにちは。オロボ46です。

また新作を出してしまいました。完全にエタってますね・・・・・・

今回は「化け物が主人公の旅」をテーマとする空想旅物語です。

今のところは国ごとに章分けしようかと考えていますが、

まずは日本だけでもちゃんと終わらせないと行けませんね。

 その時代、世界各地で奇妙な病気が広がっていった。


 腕や足など、体の一部が大きく変形する病気だ。

変化の症状は人それぞれで、なかには化け物のように醜い姿へと変化した者もいる。その上、さらに悪化すると人を襲うこともある。

 予防方法や対策どころか、原因すら判明してなかったこの病気をとある医者は"化け物病"と名付けた。


 人々は皆、化け物病によって姿を変えた者を恐れ、おとなしい化け物は専用の病院に閉じ込め、人々に危害を加える化け物は警察の"化け物処理係"と呼ばれる部署によって処分されていった。


 そんな時代の中、一人の化け物は誰もいない路地裏の中で、一人旅立ちの時を待っていた。




 蝶になるのを待ちわびる、サナギのように......




グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ


 その老人のお腹の音に、コンビニにいた者は一斉に驚いた。

 老人は背中に大きな黄色いバックパックを背負っており、いかにも定年退職後、各地を旅するおじいさんに見える。しわだらけの手にはペットボトルと多数のおにぎりを持っていった。

「早くこの腹を納めないといけないのう......」

老人はそう呟きながらレジへと足を進めた。


老人は今、うあ市のコンビニで朝食を買っているのだった。

{本来なら実際の都市名を上げていきたいのですが、

作者は地理に弱いのでひらがな二文字の架空の場所となっています}




コンビニを出た老人はある奇妙な物を見てしまった。


町角から出ている謎の触覚に好奇心を押さえてはいられず、老人は近づいた。


すると触覚はピンと伸びたかと思うとすぐに引っ込んだ。


老人が触覚のあった角を曲がり、路地裏に入ると、

人影が走っていくのが見えた。


老人はその人影の正体にだいたい察しがついて、

人影を追わずその場に座り込んでおにぎりを食べ始めた。




少女は一息ついた。


変な老人に見られたような気がするが、

結局ここまでこれなかったようだ。


少女は頭の触覚を軽く撫でた。


その顔には鼻と口しかなく、目はなかった。


肩まで伸びた髪と、女性のような体つきをしているものの、

皮膚は影のように黒く染まっており、

頭には目の代わりとなる、発達した触覚が生えていた。


この少女は、化け物病によって人間の姿を失っていた。


ここは路地裏の中でも非常に見つけにくい隙間の先の路地裏。


少女はそこに住み着いていた。


誰にも見られていなくて、しかも壁はひんやりしてて寝心地いい・・・・・・


少女は少しずつ、うとうとし始めた・・・・・・




「ちょっと、お嬢さん」


「ン・・・・・・?ナニ・・・・・・」


「ちょっと迷子になりましてな。

ここの路地裏から出る道を教えてくれないのかのう」


「ア、ソレナラココヲマッスグイッテ、

ケッコウ小サイ隙間ヲ・・・・・・」


気がつくと先ほどの老人が目の前にいた。


どうやら寝てしまったようだ。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・怖クナイノ?」


「あっはっはっは!!」


老人は笑い出した。


「・・・・・・」


「いやあすまんすまん。

少しからかっただけじゃよ」


(・・・・・・ボケテルノカシラ)


その時少女は老人の後ろのバックパックを見た。


どちらかといえば触覚で感じ取ったと言うべきだが。


(コノオジイサン、旅シテイルノ・・・・・・?

旅・・・・・・イイナ・・・・・・)


「旅をしたいのか?」


「エッ!!?」


老人は、少女の思っていたことを当てて見せた。


老人はまた「あっはっはっは!!」と笑った。


「いやあすまんすまん。また笑ってしまった」


「オジイサン・・・・・・何モノ?」


「わしか?わしは坂崎 幸之助(さかざき こうのすけ)

最近旅で余生を過ごそうと決めた老いぼれじゃ」


「イヤ、ソウジャナクテ・・・・・・

ドウシテワタシノ考エテイタコトヲ・・・・・・」


「それは20年前かのう・・・・・・

人の思っていることが詠めるようになったんじゃ」


「・・・・・・」


「ところで、お嬢さん。

今まで旅をしたことはあるのかね?」


少女は首を振った。


「ちょっと聞きづらいが・・・・・・

()()姿()()()()()は・・・・・・」


「ウッスラトシカ覚エテナイケド・・・・・・

シタコトナイト思ウ・・・・・・」


「そうか・・・・・・なら旅をしてみてはどうじゃ?」


「ソンナコトデキナイ・・・・・・

イツモ旅ニデナキャッテ思ッテモ

コノ姿ジャア人前ニ出レナイ・・・・・・」


「そうか・・・・・・

ちょっと待ってくれないかのう」


そう言って、坂崎は去って行った。




坂崎が持って来たのはフード付きの黒いローブと運動靴だった。


少女が着ると少しローブが大きいものの、

ぎりぎりごまかせることができた。


なお、持ってくる前に坂崎が少女のサイズを図らせてもらおうと

小一時間説得したのは秘密である。


「・・・・・・アヤシクナイ?」


「だいたいなんとかなるもんじゃよ」


そういって坂崎はまた笑った。


「さて、お嬢さん。

これからの予定はどうするかね?」


「ソウ言ワレテモ・・・・・・

ワタシ、ドコヲ旅スルノカガワカラナイシ・・・・・・」


「なら、わしの後を追ってみるかの?」


「エエッ!?」


「あっはっはっは!

実はそのローブ、その為に買ってきたようなもんじゃ。

まあ、寝床や食事などは別行動になるのがのう。

無論、一人で自由気ままに旅してもええんじゃぞ?」


「・・・・・・アノ・・・・・・坂崎サン、

ワタシ、世間シラズデ自分の名前スラワカラナイ、

周リヲヨク見ルコトシカデキナイ化ケ物ナノ・・・・・・

ソレデモイイノ?」


「うじうじしたって始まらないんじゃ。

旅で出会う様々な景色をその触覚で見尽くすんじゃ。

・・・・・・それが、お前の夢なんじゃろ?」


坂崎は再び少女の心を詠んだ。


今まで路地裏に引きこもっていた少女は、

いつかは外のあらゆる景色を見尽くすことを夢みていた。


旅に出るには勇気をださないと行けない。


しかし、ここで断ると自分が消えてしまうような

深い後悔をするような予感がする。


少女は自身を見失うことのないように、決断した。


「・・・・・・ワッカッタ。

坂崎サン、ヨロシク・・・・・・」


「よし!そうと決まれば、まずはこの町の観光から始めようかのう」


そう言って坂崎は路地裏を後にした。


少女も後を追った。




この心を詠むことのできる老人は何者であろうか?


なぜ自分を旅に誘ったのだろうか?


少女は疑問を抱かずにはいられなかった。


しかし今、自分は確かに道路を渡っている。


このローブ姿では少しの目線も仕方ないが、

少女は目線を気にせず坂崎の後をついて行く。


これが化け物の少女の、

終わることのない旅の始まりであった。

いかがでしたか?

毎回のことですが、不定期投稿ですので

忘れたころに見てください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ