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第六話 始まりと魔法と魔術とパーティのガラスの街、ボーエン

背の高い建物が並ぶのが遠くからでも見て取れた。実際間近で見てみるとかなり高い建物だ。現実世界での十階建てのマンションほども高さもあるだろうか、そんな建物がズンズンと威圧感を伴って建っていた。いずれもガラス細工のように、半透明。色は黄色、赤色、緑色、青色、桃色、或いは黒色。それがどういう目的で建築されているのかは分からないけど、それでもただのゲームだと思ってプレイしてみた僕からは、圧倒的な存在感で心底驚かされる。建物は入れるのだろうか?それとも、プレイヤーの持ち物だろうか?いずれにせよ、これは現実ではありえない光景を拝めて、かなり嬉しい。ゲーマーの特権だろう。ゲームは総合芸術。今僕は最先端のゲームで宇宙一面白いゲームをやっているという実感がある。


ガラス細工で出来た町、ボーエン。キラキラに光る通路を歩くと、コツコツという音が響く。僕の持っているルーキーに配られる靴、その底は固いゴム製で軽量なスニーカーだ。現実世界でも手に入る事が容易な品物でも、本当に面白い音が鳴る。軽快なタップダンスをやりたくなってくる。…やったことないけど。小気味良いリズムを伴って僕達は町のメインストリートにやってきた。


「イヤッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアホオオオオオオオオオオ」


ボーエンの背高い建物と建物の間をスパイダーマンごっこしてる奴らもいる。僕も混ざりたい。


僕がゲームを開始した町は御伽噺に出てくる中世の城下町だったけど、ここはそうではないようだ。背の高い建物があるから日の光があまり入らず、どちらかといえば、中世暗黒時代っといったものを想像してしまう。ここは魔術を扱うための町らしいので、雰囲気は確かに合ってると思う。なんたって、僕らの横をまるでサーカスの一団のようなプレイヤー達、おそらくパーティなのだろうと思うけど、それらを見かけたからだ。スティーブンキングのイットを思い起こさせるようなピエロのマスクに、ゾンビのマスク、ダークナイトの方のジョーカーのマスクに、ピカピカに青白く輝いてる不気味なマスクに、デズニーランドにいそうな血塗られたネズミマスク、ホッケーマスクだっていた。それらを被った下着姿の女にわけのわからない血だらけのローブを被ってる女、ノコギリを片手に楽しそうに笑ってる血みどろのてかてかゴスロリ衣装までいる。年中ハロウィンなのだろうか。横を過ぎる時、血の匂いを感じた気がした。ヤバイ連中もいたものだと、ミルフィーと視線が合うと首を横に振った。


メインストリートに平行する建物の一階ではお店になってるらしく、様々なお店が並んでる。メインストリートに飛び出してる立て看板を見ると、ゲームらしく、武器屋、雑貨屋、道具屋、お花屋、それに建築士、鑑定士、クエスト屋だなんてのもある。『イーストミアに逃げた隠れリスを探してください。今週一番激アツクエスト!』とか似顔絵と懸賞金が書かれてる手配書っぽい張り紙がお店いっぱいに張られてたり。美味しいパンの匂いがしたり、妖しい嗅いだことの無い香水の匂いや、動物の獣の匂いがしたりやら、結構混沌としている。だがそれがいい。


「?」


ふと、視線を感じた。この町で一番背の高い建物のてっぺんにガーゴイルのような化け物めいた彫刻の隣に人らしきものが見えた。


「人かな?…まさかね」


「フム。魔術を習うのだからだろう、行き交う人々もやはり、いかにも中世の魔女っという見た目のプレイヤーが多いな。確かに魔女はいたが、魔法省の働きかけで暗黒術は弾圧されたはずだが。それでも見た目を大切したいのか。ハロウィン好きが多いのは今も昔も変わらないな」


しげしげと、人々の奇抜なハロウィンスタイルを見てデイヴィは言う。


「…魔法省?」


「ああ。魔術協会と言った方が現代では分かり易いかね?」


思わず笑ってしまった。なるほど。なるほど。なるほどなるほどー。そういうことね。完全に理解した。


「おもしろいですね」


設定が凝っていて。


「基本的に近接接近格闘を旨とするプレイヤーは軽装になります~。逆に魔法を扱う遠距離攻撃が基本の魔法使いは重量にほとんど制限が無いのですから重装備になっちゃいますね~。体内から練り上げた魔力の循環をサポートするファッションなのですよ~。ただのコスプレじゃありませんよ~」


「ほう。そういう道理か。なるほど。理に適うな」


「でも、たまに鎧で全身を覆ってる人もいますよ」


しかもカッコイイ。騎士だ。


「高難易度かつプロフェッショナルから開放されるタンク職は耐久性能のため、重装備になりますが、こちらはマッキーには関係無い話ですね~」


「なんで!?」


酷い事を聞いた。


「どうせマッキーはそこまでRealをプレイしてませんよ~。嫌になっちゃって~」


そう言ってぴょんぴょん跳ねる。


「そこまで飽きっぽくないし、こういうのになりたいっていう憧れを挫かせないでよ」


「預言ですよ~」


「あのね。そういうフラグとかいらないから。そもそもフラグ壊してナンボでしょ、物語ってさ」


「あっ」


いきなりデイヴィは立ち止まった。


「どうしたの?」


「いや。…………なんでもないよ」


気になるじゃないか!デイヴィの視線を辿ると美女四人組を発見した。かなり大笑いしている。パーティかギルドやらなのだろうか、手にはそれぞれアイスクリームを手に持ってる。うまそうだ。黄色。パンプキン。カボチャ味かっ。分かってるね~~。


「どうされたんですか~?気になりますよ~。オトモダチでも居ましたか~?」


「いや。……美人で、仲が良さそうだなと思ってね」


「まぁ確かに美人ですね~そもそも外見は幾らでも変えられますよ~」


「だね。だから美人が多いんじゃないかな?」


「だからこそ……だ」


デイヴィの顔がまだ驚いてるままだ。よくよく見てみる。特に変なところはない。多分アメリカ的にどこにでもいる光景そのものだと思う。


「良い時代になったものだな」


そして目を細めてボソリと呟くのを聞いた。


「そうだね。美味しそうだよね…」


かなり美味しそうな感じがする。


「食べたいですか~?」


ミルフィーが言った。


「いや。でも僕らお金持ってないし」


「奢りますよ~アイス食べたいですか~?」


「食べたいですけど、奢られるっていうのは……ちょっと。……遠慮しておきます」


図々しいってもんだと思う。あまり他人に施しをしてもらいたくない。そこまで仲良くなったわけじゃないんだ。何かをしてもらうのは、ちょっと違う気がした。


「気持ちだけ貰っておきます」


「ですか~。では知り合いのお店に行きましょう~。お金いらないですよ~」


「えっ。ぅそ。お金無くてアイス食べれるんですか?」


「ですよ~」


「いいなぁ。Realの食べ物って、ちゃんと味とかするんですか?」


「しますよ~。しかも添加物や調味料といった、化学物質、人工生成物質なんかも入ってない自然由来の本来の味そのものなんですよ~。だから、現実で食べるよりも更にとびっきりに美味しいですね~。マッキーがほっぺた落ちるレベルですよ~」


「す、すごいレベルですね…!」


テンソンが跳ね上がった。旨い、美味しい、しかも自然由来だから体にも良いって最強じゃないかっ。しかもほっぺたまで落ちるのだ。ヤバイとしか表現できない。


「ここから30メートルほどのところ、ロームのやってるショップに行きますよ~」


「いいですね、行きましょう!デイヴィも呆けてないで早く!」


「あっ、ああ…」


棒立ちで突っ立ってるおじいちゃんの背中を押して、ミルフィーの言うロームのやってる美味しいお店にやってきた。


「男の菓子店、ロームの最強。凄い看板だね……ラーメン屋のノリだよ…」


そんなお店に入っていくと、中は案外普通のパン屋さんだった。駅前にあるフツーのパン屋で、ちょっとガッカリしたような拍子抜けというか……店員さんも普通の白い作業服。ガクランを着ているわけでもない。


「ミルフィーさん!いらっしゃい!珍しいですねー!ルーキータウンだなんて」


「ロームさん~。ええーちょっと野暮用ですよ~」


「そうですか!折角だから焼きあがったパンでも食べていきます?ロージャーブラーの肉をゲットして!精肉してハンバーグ作って、シルヴァー小麦からのバンズで最強バーガー!でっきですよ!でっき!食べていきますよね!お連れさんも!」


……食べたい。


「ありがとうございます~。それとパンプキン味の最強アイスもお願いします~。三人分~」


「はい!よろこんで!えーっと、パンプキン味ですか。丁度良かったですよ!ランク入りのセニョールカボチャを入荷したところで!」


「それは高いのでフツーのでお願いします~。ローグカボチャで~」


「そんな!トワイライトの方にそんな粗末なものは出せませんよ。うちの家内との式は、ダニーさんところの式場を使わせて頂いたのに。ハッピーはハッピーと共にの精神ですよ!」


「でもランク入りのカボチャって一個おいくらでしたか~?」


「最近流入されてるCC換算で……一万九千円ですね!」


「高いですよ~。ベーシックなものが食べたいんです~。クラシックも、粗末というにはあまりにも素朴なんですよ~」


「うーん。ですかぁ。わかりました。ではローグで。少し待っててくださいね」


大体二万円のカボチャとかRealにあるのか。すごい。……それのアイスとか。うーん。一度は食べてみたいって思う。っていうか。


「あのさ。ミルフィー」


「なんですか~?」


「これお金要らないんじゃなくってさ、これご馳走してくれてるって感じじゃないか!」


「ですね~似たようなものですよ~」


似てるもなにも、同じじゃないかっ。


「これってさ…」


「じゃあ~折角のご好意を断って~出来上がった料理を返品できますか~?」


うわぁ。なんていう言い回し。


「出来ないけど、あんまり…」


「これは私自身が作り上げた信頼に対する実績ですよ~。私のライフスタイルが結果として幸福を振りまいたっていうそのお返しなんですよ~?」


「うっ」


そういう考え方もあるのか。なるほど、確かに思える。きっとそうだと思う。


「でも、無関係な僕らの品物も作ったりしてもらうっていうのはさ…」


「小さいことは気にしちゃダメですよ~」


むむむっとは思ったものの、ここは人生の先輩に習おうと思う。


「はーい。おまたせしました!」


ほかほかのハンバーガーが手渡された途端、妙な気持ち悪さを感じた。胃がむかむかと。結局それから気持ち悪くなって泣きながら旨そうに食べてるデイヴィにアイスとバーガーを渡した。本能が食を拒否するような、なんとも言えない気分。


「…」


ミルフィーと店員さんに謝ってからショップを出ると、デイヴィは素晴らしいと大声をあげた。そして僕のばつの悪さを吹き飛ばすような大声でまくし立てた。


「素晴らしい。今は最高の時代だ。聞けばちょっとした資金で地球の反対まで行けるというではないか!しかも食い物は素晴らしく、人種間でも上手くやりあってるようじゃないか。世界平和が達成されたという話もありがち馬鹿にはできないね!本当に素晴らしく思うよ。さて。これから世界をより良くすべく、マッキーにナンパを教えてあげよう。少し考えたんだが、先ずは女性との話す機会を増やすべきだという考えに行き着いた。この近くでパーティはさんざ行われてるようだ。とりあえず、行ってみて、女性との機会を設けよう。話題は、そうだな。とりあえず、君は話を聞くだけでいい。ミルフィー、この周辺でパーティはないか?」


「ちょっとよくわかんないですね~でもお金持ちの方は結構パーティされてるみたいですよ~」


「そうか。わかった。では、さっさと私がパーティ会場まで案内しよう。女性に聞いて廻ってくるよ。二人には悪いが少しここで待っていてくれ」


そう行ってデイヴィは早足でメインストリートを駆けていった。僕達は結局メインストリート、ボーエン中央に位置する公園で待つことにした。


「須らく世界は一つになるべきだ!宗教の枠組みを超え、国境の線を消し、肌の色を無視して、我々は現実世界の価値をも超越する。全てにおいて。人が人であるための前提を我々人類は更新されなければならない、人類史は今、Realという手段によってアップデートされているのだ。今しばらくは時間がかかっていたであろう、人類の補完、飢え。足りない感情。あるべき情景も肉体の内側から浄化の炎で焼き尽くされるのだ。あるべき魂と魂の交信が、我々人類に希望をもたらす。我々は二本の腕、二本の足だけではない、望むなら、何本の足だって用意できる。外科的手術もこの場所では不要だ。魂と魂の融合ですら為せる。人間、いや、生物が本来待ち望んでいた夢そのものが今ここに成し遂げられる。Realが我々を進化させる。魂を、そして肉体を。あるべき姿へと完成させるのだ。この場所こそが我々の待ち望んでいた理想郷に他ならず、我々が夢見てきた天国、その場所に他ならない。全てが自由なのだ。自由あれ!兄弟諸君よ、人類は皆兄弟である。我々が妨げられるべき試練はもう無い。有史以来乗り越え続けてきた壁、それ自体が過去であった。偉大なる祖先、先人達は今、この瞬間、我々が立脚し、呼吸し、物を見ているこの瞬間に永遠に救われた!英霊の魂は常に我々と共にある。そして我々は常に隣にいる。敵も、味方も、ギルドも、その個人は永久に区別されず、また常に等しい。準備は既に整っている。地球の申し子よ、世界の変質へ加わり、世界を創り上げるのだ!」


誰かが演説してる。要する仲間集めなのだろう。


「ここにもこういう宗教家がいるんですね~」


「カルトだよね。子供だよ」


「ああいうところに入っちゃだめですよ~?」


「わかってるさ」


「ところでマッキーはヴァミリヲンドラゴンをどうするつもりですか~?」


藪から棒に聞かれた。


「どうもこうもしないよ」


「それ売れば一億円余裕ですよ~」


おもしろい冗談。


「まさか」


「本当ですよ~。ログアウトしたら調べてみてください~。それと、メッセージに私の番号を送っておきますので気が変わったら連絡ください~」


みんな気楽だなって思っちゃうよ。ハッピーそうでなりよりだ。


「…ドラゴンがあっても、皆ホントはなんにも変わらないのに」


「あんまり欲望が無いんですね~ティーンエイジャーの分際なのに~」


「あんまりね。僕は今の生活で満足してるよ。多分Realをもっとプレイすれば、きっと大満足って感じでハッピーになれるんじゃないかな。って思ってますね」


「彼女とか欲しくないんですか~?お金あればうはうはアソべますよ~?」


「あんまりね。僕は未成年だし。生物として不出来で未熟なんだ。そーゆーのは、独り立ちしてからでいいかな」


ゲームで足りない部分は補ってるし。ってそんな事はまだ言えないか。


「結構恵まれてますね~」


「だと思う。あまりにも恵まれ過ぎてるって自分でも思うよ。だけどさ、そのせいでちょっと精神性にハングリーさが足りないってのも自覚してるよ」


「…怖いものはありますか~?」


急に話題が飛んだ。怖いものっか。


「そうだね。突発的な暴力は怖いかな。電車に乗っててわけのわからない人間から殴られるとか、怖いかもって思うよ」


「私は、嫌われるのが怖いですね~。そして独りになるのが、とても怖いです~」


噴水が、妙に綺麗だった。ガラス細工で作られた水を貯める枠も、中央にある女神像も、吹き上がる水もきらきらと光って、なんだか不思議な場所だと思った。変な気分だ。


「死ぬのってさ。永遠の独りっきりだって思わないですか?」


「死んだら天国に行くって自分に言い聞かせてるから、あまり怖くないですね~。実際の死の間際の孤独を考えると発狂しちゃいそうな感じがしないでもないですけど~」


「生きるって、なんだか不思議ですよね」


「ですね~」


それから少しだけ話した。どうでもいい話で、多分一日もすれば忘れてしまうような話題だった。でも、少し話せば分かってくることもある。ミルフィーさんは、僕のことを分かってくれる人なんだった思った。それが少しだけ嬉しくて、ヴァミリヲンドラゴンを僕から強奪するために僕のお守りをしているんだって聞いた時は、なんだか変に納得したような、寂しい気持ちになった。

でも、男はやっぱりゲンキンなもので、女性と喋ってると妙に嬉しく感じるのが救いだった。多分、この手の感情っていうのは、エイリアンとコミュニケーションを取ってちょっぴり分かち合えたって思う類の感情だと思う。少しだけなんだけど、ミルフィーさんの人となりが分かって、少しだけ安心した。


「あっデイヴィが両手に花でこっちきますよ~」


「ほんとだ…」


「さぁパーティ会場へ行こうか」


美女二人に挟まれてキスマークをおでこにつけてるデイヴィが言った。


「え」


「こっちの紅のドレスがロザリー。翠のドレスがミラルド、この二人は私の友人でミルフィー君、そしてティーンエイジャーのマッキーだ」


「あらやだ、このお顔は東洋人ね。少林寺拳法とかやってらっしゃるの?」


中国人と間違えられてるのか。少林寺拳法は確かに四国に部署があったはずだけど。


「いや、僕は日本人だよ、あいにく特に何も習ってないです」


行きたくもないスイミングスクールに小学校の頃通わされたぐらいだ。僕の顔をちらっと見てからどうでもよさそうな顔をされた。顔色が不自然に赤くなっていて、多分かなり酔ってると思う。


「あらそう?私には中国も日本もよくわかってないの。フッハハハッハ」


そう言って赤いドレスを着たロザリーという若々しい女性は大声で笑う。


「ごめんなさいね」


一方、緑色のドレスを着た女性は結構年配のおばさんだ。更に彼女は言葉を続ける。


「この子アン県から出たことが無くって」


「ミラルド達親子はフランスからログインしているか。良い場所だね、フランスは。アンか。朝方の霞かかったナンテュア湖の冬は私の心にいつも理想的な朝の景色として思い起こされるよ。キザローが群れで湖の上を横行する冬の景色、ナンテュアソースのかかったパスタ。これも絶品だった。フランスは良い国だ。何よりも古きを重んじていて……なにより女性が美しい」


「ハッハ笑えること言ってくれるじゃないの、良い男だね?」


「男はすべからく良い男であるように努めるべきだよ」


「いいね。これから親戚で集うパーティがあるんだよ。良かったらどうだい?葬式だけどね。しきたりで、派手な弔いをやるのが慣わしで。愉快な連中なら大歓迎だよ」


「是非ともお邪魔させて貰うよ」


「あらやだ。そろそろロナムの食事をご飯を作らなきゃ。じゃ皆様御機嫌よう」


そう言ってロザリーはログアウトしていった。葬式。葬式だって?ゲームの中で?


「Realの中で葬式をされるんですか?」


「そうだよ。一族は世界中に点在してるからね。このゲームだと、瞬時にお互い、家族が集まることができるんだ。家の中に居てね。これはもう私にとってゲームじゃないよ。アイフォンやらオーブン、バスユニットと同じで生活必需品だね」


驚いた。考え方の差異がここまで際立つものなのか。日本じゃ絶対そんな考え方はありえない。


「といっても、大祖母の遺言のせいもあるんだ。これをフランスの家庭が皆やってるって思わないでおくれよ」


「なるほど。凄いですね。でもそんな大切な行事に僕達が参加してもいいんですか?」


「食い散らかす事が出来るなら大歓迎だよ」




「将を射んと欲すれば先ず馬を射よってね。パーティからパーティのはしごさ、そこで君ぐらいの年の子を見つければいい」


そうやってにやにやと笑うデイヴィがむしょうににくたらしい。

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