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第四話 強くてキュートで頼もしくてカワイイもふもふ

スタンダードエリア内、セゼン樹木が一本横倒しになっている巨大な橋がある。枝をつけずに一本槍に真っ直ぐに伸びる、セゼン樹木。丁度、光さえ入らない暗黒密林地帯と無人遺構地帯セルエナを結びつける橋。当初地図上では大きく隔てているるこの二つのマップを繋ぎ止めるセゼン樹木が倒されて橋にされたという事実。切り口を調べてみると、刃物による超速度であり見事な年輪が万層にも渡って見られる切り口だった。未知のモンスターかアップデートによるイベントか。セゼン樹木一本で町を作れ、また内部ですら町になりうるセゼン樹木。


Realにおけるアップデート拡張システムによるマップ修正ではない、という仮説を裏付けるものの一つにこの橋はマップにおける呼び名は無い。故にセゼン大橋とそのままの呼び名が定着した。セゼン大橋には暗黒密林地帯にのみ存在する希少種、オオカラスミツバチにマンゴーツリーフォーク、サウザンドチョッパーといった、倒せば得られる貴重なアイテムを持つモンスターも存在する。また、セルエナ地帯に住む機械兵器も度々姿を見せるので、運が良ければ度々衝突し双方が疲弊し倒れてる中、乱入し討伐することもできた。


経験値、ドロップ、共に美味しい。いわゆる、穴場である。


PKプレイヤーキラーが今頃になってレベル上げかい?」


偉大なるギルド人差し指 『トワイライト』 ギルドマスター マクレーン・ダニー スター 伝説持ち


「ちょっとだけ最近面白くなったんでね。刺激を受けたんだ。生き延びようとするのが組織というものだろ?到来した新世界に向けて、俺達もまた死のリスクを負う事にしたんだ」


最悪のギルド薬指 『エクスターミネーション』 ギルドマスター シャーメルマーク 二つ名持ちPK 懸賞金12000枚


双方が対立する構造の丁度真ん中、挟まれる形で怯える六名のパーティプレイヤーがいた。プロフェッショナルを含む強者も居た強力なパーティであり、このマップでこのパーティは十分だった。しかしながら、29名を超える現状姿を見せているPKギルドには、絶望以外の言葉は見つからなかった。チェーンロックという魔法による、断ち切れぬ鎖が巻きつき、口すら動かせないこの窮地に、ピンチを救うヒーローが現れた。


「まさか、この屑共を助けるために飛び込んだつもりじゃないんだろ。ダニー。ダニーと呼ばせてもらうよ。月刊Realは毎号定期購読してるんだ。俺の事は、シャーメルマークで結構だ」


「知ってるよ。……有名だ。リスペクトされてるみたいじゃないか。ただ品性に欠けるらしいがね」


「性欲という欲望は人間の持つ本来素晴らしいものの最たるものだ。それを暴力によって叶えるのはむしろ人間らしいと思うがな。VRMMOにおける、至極基本的なことだよ。誰でも知ってる。だから覚悟してる」


「そういう姿勢は、悪くないね」


ダニーは思わず息を呑んだ。挑発しても、目に見える形で数えられるだけのメンバーが29名。隠れてる状態を含めてもしくはその倍はいるかもしれない可能性も考えて、その他のメンバー一切が手出しも口出しもしない事に驚いた。その統率力たるや。ハズレもの、はみ出しもの、社会不適格者、精神異常者、普通じゃない存在それらをまとめあげるその強さたるや。最悪救えないかもしれないと思うほど、かち合ってしまった現状に興奮した。


「さて。そろそろお互いの準備が出来た頃合だ。100%殺す自信があるが、始めるか」


「正直に言ってそれはあまりやりたくないな」


古のダークエルフであるダニーの皺が寄り、場違いな上品さをかもしだす笑顔で応えた。


「ほう?」


大太刀をひっさげ黒ビロードの特等で出来たマントがゆらぐ。


「こっちは想定外なんだ。ゲートで召還出来るのはひとりかふたりか。後はRealに居ない。食事時だからね。丁度。昼飯と夜食の時間帯、もう一人は眠ってる頃合か」


ダニーは自らの不用意を自分自身からさらけ出した。この唐突な出会いが、意図せぬ出会いだったことと一人なのだという事実を自らの口で言い放った。


「おいおい。絶好の機会じゃないか。そろそろ戦闘を始めるぜ?」


殺せる。この男を。という想い。もしこのダニーの歴戦を現実世界であらわすのなら。それは要人の最重要地位にあるであろう、各国首脳、及び王族。そのレベルにおける、PK。震えているのはシャーメルマークも同じであった。プレイヤーキラーとして、このPKほど価値のあるものなどあったものか。シャーメルマークの過去行ってきたいずれの何一つにおいてすらも、比類なき偉業の一つ。殺せるのだ。超弩級の有名人を。善を信じる妄信者共に称えられる、唾棄すべき対象を。日の当たる最上の場所に到達したこの男を―――。


「だからこそ止めた方がいい。理由は一つ、君たちは私に勝てないからな」


やはり笑顔で言われたシャーメルマークも、一寸笑って言った。それもそうだろうと。知ってて、そうなるだろう、だからこうなるだろう、つまり、そんな台詞も予期していたのだと。しかし。


「それを踏まえて、行動するよ。その切り札を拝むってのも、悪くない。ところでダニーは占いってやつを信じるか?テレビのでもケータイのアプリのでも、ただし一日だけのやつだな。俺は今日は最高だったんだ。俺が見てるのは星座の占星術らしくてね。最もワーストの表示がでてたんだ。しかしね、どうやらその占いは当たるらしい。学生の頃からその占いを見てたんだが、不思議と当たる。それも普通じゃないらしくってな。十二星座中、最も低い方が、俺にとっては良い事があるんだ。そして今日は最低ランク、ワーストだったよ。本当によくよく当たる。……………祝福された上天の結界発動。これでアイテム使用は出来なくなった。俺にとってはお前たちを殺す事に意味なんて無かったんだ。名が上がればそれだけ忌避すべきリスクも上がる。人間は様々な反応を見せるからな。Real史における偉人を殺せばそれだけRealのプレイヤーの関心を買う結果につながる。俺はそんなに疲弊する原因を作りたくないんだ。逃げるという選択肢をわざわざ与えてやったのに、お前達は震えたまま行動しなかった。子供じゃないんだ。まぁいい。どうやら、新時代を牽引するPKは、俺様らしいな」


「挟み撃ちにされた格好か」


「ああ。結界範囲外の仲間に有志を募ってね。Realの表紙を飾れる奴の倒滅戦だ。こぞって参加したくなるものだろう?」


そして一呼吸おいて。


「ハンターならな」


シャーメルマークは抜き身の大太刀を背から手に持ち替え装備した。その大太刀、特A。


「最後の一手まできっちり詰めるものなんだな」


「チェックメイトだ」


渋々というような顔つきで、ダークエルフのダニーはカバンの中に手を突っ込んだ。


「盤面をひっくり返すようなカードが必要だな」


殺しの段取りは既についていた。


「最終楽曲クインテットオーバーキル、謡え」


歌が鳴り響いた。厳かに歌われる五重奏クインテットによるハーモニー。サイドポジションにおける付与効果。デバフ(デバフを与えられた対象者は敵対作用に陥る)の効果。


「葬式は大分先だと思ったんだがね」


「ハっ」


そのユーモアに、シャーメルマークは思わず笑った。こいつはイギリス人かもしれない。そう思った。ピンチの時でさえ口を動かしなんとかなるものだと信じている、きっと007の影響だろうとシャーメルマークは思った。


「ホワイトアイ」


ダニーはカードから召還しようとした、そのタイミングで、口が動かなくなった。ダニーが持つ右手が弾かれた。これにはダメージは無かった。続く銃撃による攻撃はそのカードにぶち当たり、ダニーの後方へと弾き飛んでいった。クインテットオーバーキルによる呪縛作用の一つが、ダニーの想定を上回った結果だった。


「フン。これかァ………おいおい。……こ。こ。これはァァ…………」


そのカードに刻まれた名前、そして度肝を抜くレベル。


「ブラックアイズホワイトドラゴンッッッ!!レベル238じゃあねぇかよォ!おいおィ……!!」


『エクスターミネーション』 ナバル・マーメイリー プロフェッショナル 一級首 懸賞金400枚


マーメイリーは自身の拾ったカードを見て飛び跳ねた。


「これありゃあヨォオオ!!!頭ァ!世界取れるぜぇぇ!!オイ!!」


幸福の渦に巻かれたマーメイリーは更に狂ったように声を断続的にあげ続けていた。


「さて」


ダニーは既に鎖で四肢を固定されている状態にあった。チェーンロックによる強制行動不能状態である。全ては、想定以上の戦力、戦術、これらが、ダニーの想定を遥か斜め上であったことがもたらす結果であった。


「100%俺達が勝つと言った時点で、お前はこの屑共に逃げろと指示しさえすればヒーローとして体面を保てたんだ。お前はカードにすがった。そのドラゴンさえあれば楽に勝てると踏んでいたんだろう?残念だったな」


「一つ言っておく事がある」


ダニーは変わらない笑顔で言った。こんな土壇場ですら変わらない笑顔に、シャーメルマークは少しの不安を覚えた。


「それを召還することは…すすめない」


「…未知のアイテム、か。条件による発動で何が飛び出るかわからないものな。それは一種の挑発だろう?例えば、ダニーが死ぬ事によって発動する未知の特殊効果かもしれないし、ドラゴンを召還する事によって期待できる結果が真逆になるといった。そもそも占有権の問題もある。マーメイリー、占有権はお前に移ったか?」


「いんや、レベルが高いせいか俺には移ってないぜ。つまり占有権はまんまこいつ、だけどもアイテムであるから俺が今からでも召還してみることもできるぜ。ってかレベル多寡たかが影響してんのかもな!」


「占有権が移ってない状態で召還した結果のドラゴンがどういう行動をするか、予測はつかない。……だからダニーを殺してから実践させてもらうよ」


ダニーの笑顔が、一瞬ひきつるのを、シャーメルマークは見逃さなかった。


「殺し方にもいろいろある。あんたは世界を変えた男だ。ドゥルーガの一件にしろ、制約すべき七つのギルドルールの制定も、そしてナンバーワンワールドファーストの称号も」


シャーメルマークが指示せず、五重奏の奏者達は英雄譚エピックを歌う。


「鳥葬、土葬、火葬、銃葬に自然葬、好きに選んで結構だ」


勝ったという想いが強過ぎて、感情を忘れてただただ淡々と言葉のみでつらつらとマーメイリーは並べて言った。


「わけのわからないドラゴンが現れた結果、俺は自分の立ち位置について考え直したよ。良い服を着て、良いベッドを買って、プール付きの豪邸で星を見上げていても、俺はどこか空虚だった。実際手詰まりで、新しいことをやる余裕もなければ、今やるPKで十分満足だったんだ。俺を変えたのは、危機感だった。ドラゴンがプレイヤーによる召還だったのは間違いないだろう。シノノメ・マツキというPCは、遅かれ早かれいずれにせよPKと敵対するのは明白、だからこそ、俺達は死なないように超リスキーなレベル上げという地道な手段を取った。ハハ。不思議なものだな、人生は。高みを目指し、行動した結果、思わぬチャンスに巡り合え、そして勝ち取ることができた。本当に不思議だよ」


「……」


続けてシャーメルマークは言った。


「ここだと森特有の濃密な匂いがするな。光が当たらないせいか腐植土の分解が早い。そしてナビアの風だ。心地良い風が産毛を撫でて少しだけくすぐったい。いつもなら暑い日差しが今日に限って雲にかげる。昔から何一つ変わってない感覚が、遠い電脳世界で何一つ変わらずに感じることが出来るこの至福の毎日………」


そしてシャーメルマークは大太刀の一閃でもってダニーの首を落とした。


「だがそれだけじゃ足りないんだ」


シャーメルマークは空を見上げた。


「いいぞ、ときの声をあげろ」


およそ半数が周囲の偵察に出ていっても、それでも尚も大声で叫ばれた。エクスターミネーション全てのプレイヤーが、今、この瞬間を実感するよう大声で腹から叫んだ。


ダニーの体が崩れ落ち、ぼろぼろと塵になって雲散霧消していく、風景を見た。シャーメルマークはこれが一段に美しいと感じた。


「悪いな。やっぱりお前の死は、俺の物だ。お前も感じてるか。虚無の飛来ってもの、無くなってく瞬間は、たまらないノスタルジーへと還ってくんだ。この瞬間、嗚呼!俺は確かに生きてる!ハァ。俺はこんな瞬間だけ、確かに生きてる、俺は世界と繋がってる。俺という存在は、この瞬間によって強く認識されるんだ。わかるだろ?なぁ。分かってくれよ……」


シャーメルマークは小声で囁くように言った。ダニーからのドロップアイテムに、エクスターミネーションのメンバーは群がり、各々がアイテムを鷲掴みにし、天高く突き上げた。この瞬間こそ、栄誉だと言わんばかりに。未知のアイテム、場所の分からないマップの数々が書かれた手書きのノート、カバンいっぱいの最高硬貨にさらに叫びは高くなる。


「か、頭ァ!」


マーメイリーが不意に叫んだ。


「カード。カードがぁ………カー……」


マーメイリーは、そう言った途端に硬直した。シャーメルマーク達、エクスターミネーションのメンバーはそれを見てぎょっとした。マーメイリーの手に持つカードから複数のエフェクト、霧やもや、光線といった類のものが出て、マーメイリーの体を不気味に覆っていった。


「選択肢を与える」


シャーメルマークはこの時思った。


「ネットのログで確かドラゴンライダーの呟きで出した召還獣の概念はレジェンドクラス以上からだった。Realにおけるトップレベルの情報は当然秘匿される、それが金に、引いては人生の意味に繋がるからだ。誰だって人生における目標は欲しく、誰だってそれを乗り越えたいと願うものだ。現状マーメイリーはカードの特殊効果によって支配されている状態と思っていいな、こういうのにぶち当たるのも、悪くない。前人未到の戦ここにあれってやつも、たまに食べるデザートなものだ。そういえば最近ジェラートを食べてなかった、さて。憑依状態にあるか支配状態か或いは既に殺されてる状態の操作状態か、ギルドバインダーにおけるマーメイリーは………」


シャーメルマークはバインダーを宙で取り出し、名前を確認した。こんな時でも常に前向きであるシャーメルマークは、ある種の共感感覚が欠けているのだろうと自分でも自覚していた。


「名前は消えていない。憑依状態と支配状態の差異は、後者なら支配状態のPCに一定数のダメージを付与すれば動きは止まる。前者なら非常に厄介だ、四肢を落としてもまだ不十分で、頭部のみでも魔法の詠唱が可能、更に心臓のリズムによって撒き散らす致命的なデバフも存在している。これを見分けるためには……」


シャーメルマークは人差し指でマーメイリ-を指し示した。即ち、標準を合わせ、トリガーを引けと命じるアタックランゲージ。


「繰り返す、選択肢を与える」


遠くから七発の銃戟を喰らっても尚も口を動かし続けるマーメイリーを見て、シャーメルマークは確信した。


「負傷部位が復元されてゆく、憑依状態確定、最悪だな。準備すべきか」


シャーメルマークは人差し指を自身の後方へと指し示した。即ち、撤退準備の命。人差し指をさらに弾くように動かしたら、即時の撤退が完了する。皮肉にも、これは対ギルド戦闘行為における基本動作の一つであり考案したのはダニーであった。


「ブラックアイズホワイトドラゴンによる特殊能力の一つ、しかもLv100を凌駕している。俺の想定ではまるで十分に達しないだろう。風が強くなってきたな。これも一つの区切りだろう」


「一つ、我が主の肉体を修復せよ。二つ、攻撃一切を禁ずる。代わりに見逃そう」


憑依されたマーメイリーの口は厳かに、大きな声で物物しい声で宣言した。シャーメルマークは思わず笑った。そして長らく閉じていた口を開いた。


「つまりお前自身には修復することは出来ないという事に繋がるわけだ。いかに力を持っていても、そんな我がままが通用するほど、こっちは馬鹿じゃない。安い言葉で引き下がるには、俺達の価値は高すぎるが?」


そしてシャーメルマークは人差し指を弾いた。同時に祝福された上天の結界が解除され、シャーメルマークを含むギルドメンバーの面々はジェットクリスタルを握り潰して戦線を離脱した。


レッドネーム、つまりPKにとって戦況の見極めは死活問題である。何故なら一定のランクを超えたPKは死滅した状態になればそのキャラクターはそのものが削除、アイテムどころか、全て一切が消去される。死亡の危険性がわずかでもあれば、避けるのが当然の選択であった。


「グがぁぁぁ……!」


最大の屈辱と共に暴力の敗北。吼え上げた直後。


「う、動ける………!」


ダニーの救った八名のパーティメンバーがそれぞれのチェーンロックが外れた。


「待って。私なら彼を救える」


緑と銀色に髪を染めたロックスター風のお洒落な女が言った。


「グ」


マーメイリーに憑依した何者かは動きを止めた。


「私達なら、今なら大丈夫。私達だって、馬鹿じゃない。無力じゃない。助けられるばかりじゃない。みんな、ワルプルギスの夜を。復活を」


他七名はそれぞれ頷き、口々に賛同の言葉を放った。


「ああ。やろう。だから、あんた、ちょっと待ってくれ」


ワルプルギスの夜 ランクA 奏者四名指揮者一名による復活魔法。条件付けの魔法である。


一つ倒されたプレイヤーの魂が残っている事、概ねそれは死亡状態から五分以内である。二つ肉体のみの損傷を復元する魔法であるため、魂が滅された状態、死滅状態からは魔法を行使する事はできない。三つ詠唱失敗状態に陥った場合は再度の行使は出来ない。四つ詠唱状態は完全な集中状態であるため、他の行動一切ができない。


代わりにデスペナによる一切を受け付けない。一定時間不滅状態B-になる。


「デスペナを受け付けない。だから、カードを取り返す事が出来れば、あんたのツレは所有権を失う事はない。事情がわからないし、どうなってんのかわかんないが、借りは変えさせてもらうぜ。オレらはモンスターを近づけさせないよう、やる。詠唱時間は一分だ。丸々な。オイ!いいな!」


「……ああ」


「全開だ。イレブンクローの名に懸けて、全力でいく。ブーストオンザステージを完成させる!」


一方、シャーメルマークはギルドマークランド、ギルドの使用できるアジトの一つに集っていた。


巨岩石地帯ガラウマダ プロフェッショナルフィールド


「最後のは薄気味悪かったっスね。なんなんあれ?」


「あれはドラゴンじゃない気がする」


「マーメイリーの奴はどうしますか?頭」


「退職金をダブルで出す。丁度良いさ、娘は私大で来週妻のダイアと結婚記念日。頃合さ、占いにもそう出てる」


「寂しくなるなぁ」


各々がそれぞれマーメイリーに対して口々に評価し、追悼している最中、シャーメルマークは立ち上がった。


「どうしたんです?」


「いや、あの連中、確かイレブンクローは過去のギルド狩りでAクラスのモンスター狩りの際ヒーラーとしての役割で合同クエスト討伐パーティに参加していた。可能性があるとしたら潰しておくべきだからな」


そして火の目を持つ馬を召還させ、それに乗った。


「追ってくるとでも?」


「ああ。だから今回はここまでだ。祝杯は明日Realタイム十五時間後とする。アウトしろ」


「頭は?」


「最悪アジトが割れる危険性がある。俺だけ遠くでアウトする」


「ダニーってやつぁ趣味でレッドラインの探査を好んでやってますからね。奴だけ抜けて、そこから持ってくるアイテムは未知で危険性は高いと思われますよ、可能性を潰してくんなら正解でしょう。所持してるアイテム、目に見える武器すらも入ったオプションは本人すらも知らなかったとかザラにある話ですからね」


「アイテム分配は今回もボブに任せるから安心しろ、急な入用な奴も。協力した連中にも褒賞を出しておけ、いいか?」


それぞれが答えながらもログアウトしていった。その中でシャーメルマークは馬を駆け、巨岩地帯を東へイースターベルという巨大歓楽街へと足を進めていた。そんな時。


「誰かが俺を対象にしたか」


レアヌマの鐘 ランクB-


アイテム、魔法、呪いを含む効果の対象になった際、鳴り響く。不滅。


鐘が鳴るのを聞くと、馬から降りて準備した。


「!」


瞬間、ダニーの銃戟がシャーメルマークのログアウトの幻影をぶち抜いた。


「久々の敗北か、いいね。血が沸いてきたよ……」


あと3秒違えば、間違いなくヘッドショットが決まっていた。周到さと用心深さが、三秒という結果の明暗を分けた。ピンチであり、奪われた品物を考えると危機的な状態にも関わらず、ダニーの表情からはやはり上品な笑顔が浮かんだ。楽しくて、仕方ないのだ。



第三話 強くてキュートで頼もしくてカワイイもふもふ



お爺さんと一緒に隣町へとピクニックしていると、小学生ぐらいの小さいもふもふしてそうなプレイヤーが道の真ん中にぽつねんと立っていた。初めは置物じゃないか、ぬいぐるみじゃないかって思っちゃったけど、どうやら動いてるらしくPCのようだ。なにやら双眼鏡みたいなもので遠くを見てたりする、なんだかへんてこだ。こんな世界でも、こんなにカワイイなにか名状し難いとんでもないのがいると、なんだか安心しちゃう。


「なんかカワイイのがいますね、ミッヒーとかケテーちゃんみたいな。なんなんですかね」


「迷子かもしれないな。いや、誰かを探してるような素振りだね。アメリカのFBIに監視された状況で、窓から良く見ていた捜査員の挙動だよ」


「おもしろい冗談ですね」


そんなもふもふと、目が合った。

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