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第一話 初日からセカイを変えた少年

 『このゲームはRealという名の腹の中』


 「ばっちし来いッ!」


 『貴方の名前は何ですか?』


 「東雲茉樹しののめ・まつき、茉樹でいいよ!」


 『貴方の種族は何ですか?』


 「人間に決まってるじゃないかッ!」


 『貴方の性別は何ですか?』


 「これって女性にも出来るんだよね?」


 『可能です』


 「……お……いや。待てよ」


 (最近じゃ、Realで出会って、現実で結婚!なんて浮いた話もあるじゃないか!それに、クラスメートの鈴木野なんてこのゲームで結婚したって言ってたじゃないかっ!もしかしたら…もしかしたら…僕にだって…そうだ。もう高二じゃないかっ!いい加減トラブルの単行本揃える萌え豚は卒業しなきゃいけないんじゃないか・・!?夢のねかまらいふってやつもいいかもしれない。…でも。もう、おっぱいおっぱい、ぱんつぱんつなんて言ってられる年齢じゃあないだろっ!目を覚ませッマッキー!!)


 「だ…男性です…」


 『それでは、素晴らしいRealライフを。グッドラック。茉樹様』


 「おっしゃあああああ!来いやあああああああああああああああああああああああ!!」



 咆哮の後暗転した先は、中世の町並みのような広場だった。噴水があり、小鳥がさえずり、NPCノン・プレイヤー・キャラクターであろう人々が、声をあげて町を活気づかせている。BGMのように奏でてくれている楽団すらもいる。遠くでお城が見える。城下町、だろうか。ぽつりぽつりと僕と同じようなPCプレイヤー・キャラクターも当然いる。


 「こんにちは!」


 突如、声をかけられた。びっくりして振り返ると、エルフのようなキャラがいた。色白でカワイイキャラだ。身長は僕よりちっちゃい。


 「こ…こんにちは!!」


 「元気ですねー!どこからですか?」


 「え…えーっと、日本からログインしてます」


 「そうなんだ!私、鰤観てるよ!!カッコイイよね!イチゴ!ちなみに私はオルガって言います、ノルウェーのオスロってとこからログインしてるんですよ!」


 そうなのだ。言語を介さず直接脳から読み取りサーバーで送られ、Realに信号を飛ばす。つまり、言語の壁が無いのだ。Realが爆発的人気を博した要素の一点だ。EU諸国の売れ行きは凄まじく、全プレイヤーの五人に四人はEUからのログインらしい。EUの次が日本版サービスなのだ。これから待ち受ける僕の仲間達は、むしろ外国の人々かもしれない。ここでコミュ力を上げておくのだッ!マッキーッ!!


 「僕の名前は茉樹です…え…えーーっと。オルガ…さん。何ですか?それと先に言っておきます!あの…あの…僕ネトゲ初めてで…!」


 「大丈夫!お姉さんがついてるから!今インしたばっかりでしょ?一緒にプレイしない?パーティ組んだ方が、さくさくレベルも上がるわよ!」


「ついてきます!!」


 カワイイ猫耳エルフにそんな事言われたら!行くしかないよ!…も…もしかしたら…こ…これが…噂の逆ナンってやつかもしれないーー!いや…ハァハァ…お、落ち着け…マッキー!クールになるんだ!『第一印象がその人の記憶に残ります』って、大人向け雑誌に書いてあっただろう!?


 「よ~~っし!それじゃあ!あそこのクエスト依頼所でクエスト受けてから、スライム狩りにいっくよー!でも、ま・ず・は!お使いクエストだね!」


 右手を上に挙げて、左足も上に挙げるという御馴染みのレッツゴーポーズを生のVRMMOで見れるなんて!感激だよ!


 「行きますー!!」


 クールタイプは似合わない。無理して取り繕うプレイスタイルを、僕は早速放棄した。


 「そうそう。その前に、装備品が支給されてるでしょ。装備しないと、だよ!」


 「ですね!おっしゃあ!えーっと……そうそう!カバンの中に入ってる…はず…でしたよね!」


 ドキドキしてきた。これが、この瞬間こそが、インターネットゲーム。そして、VRMMOなのだと。今吸っている空気。立っている大地。素敵な出会い。これこそが、僕の求めていたネトゲそのものの姿なのだ。


 「よし!装備できました!」


 「オッケー!それじゃ、私は、倉庫とオークション見てくるから、お使い終わったら声かけてね!」


 「はい!」


 石畳の道を走る……走る……あそこがクエストおじさんだな。あれ?メッチャ疲れるし、息切れもするよ!……リアルだ…さすがVRMMO…ここまでリアリティがあるなんて・・。


 「おじさん!クエスト受けにきました!」


 新聞を読んでるヒゲ顔のドワーフおじさんが、顔をあげた。


 「お…おお!クエストか。お前さんラッキーだな!お前さんがここでクエ受けて1000万人目だぜ!ラッキーボーイ!これを受け取りな!」


 そう言って、小さな箱を渡してくれる。


 「何ですか…?これって…?」


 「高級ラッキーガチャだ!売れば金一枚になるぜ。男一丁度胸勝負で、デカイ引きをやってみるってのもアリだな。一等はドラゴンだぜ?もっとも、一等はおろか、三等ですら、出した奴ぁいねーけどなぁ!ガハハハハ!!」


 そう言って大口で笑う。唾まで出てる。なんてリアル!さすがReal!


 「NPCなのに、よくそういう有効な情報をくれるなぁー。さすがVRMMO!」


 「オイ!オレっちは一応PCだぜ?Realの公務員で働いてんだよ。初めてインしたプレイヤーには通常のNPCだと細かい部分はフォローできねーからな!」


 「なるほど~!よしッ!おっちゃん!一丁、男の度胸勝負で!やってやるよ!!」


 「おお~~!!良いねぇ!オレっちの若ェ頃にそっくりだぜぃ!」


 「いっくよーーー!!」


 僕は小さな箱のボタンを押した。


 町の鐘が鳴り響いた。大空にテロップの文字が大音量の音声と共に、大きく流れていった。



 『おめでとうございます!茉樹様が高級ラッキーガチャでシークレット賞に当選され&4<a"}"%.+を入手されました!』



 全プレイヤーに確認できる場所で、そのテロップの一文は流れた。



 「お…お前さん……何当てやがった……!?」


 ………。虹色に光るそのアイテムの説明文を見る。


 「VRMMO初日の僕が、Lv1299のヴァミリヲンドラゴン引き当てちゃったんですけど。……これって…結構ラッキーな方ですよね?やったねっ!!」



 理解が出来ない不思議な名称らしいアイテムを入手した旨がテロップとして流れたのだ。日本語とも、英語とも、ましてや他のそれに類似する点を持つ言語は存在していなかったのだ。故に、現段階で正式名称を知る事が出来たのは、アイテム欄の名前から日本語で説明されている記述を見る事が出来る茉樹の他になかった。


 この或る種の文字化けともいえる不具合にも似たテロップに不安を覚える者も少なからず、いた。これまで不具合どころか、バグの一片たりとも見つかった事は無かったのだ。それが突如、全PCに確認できる場所にテロップとして、その一文が流れたのだ。同時に衝撃が走ったのは、当然だと言える。そして、一文に書かれている茉樹の名前が、多くのPCの記憶に留まる事も。


 時間にしてわずか5秒程度の出来事に、そのアイテムを手に入れた本人は、おみくじで大吉が当たったぐらいだと思っていた。この出来事が、このRealで、そして現実世界で、彼の人生においてですら、どれほどの影響を与えるか、この時点で当の本人は、その片鱗すらも気付いていなかった。


 「ヴァミリヲンドラゴン………召喚ッ!」

Realmachine084617>>Realmachine0000000 Discovered a fatal power balance ...................Realmachine0000000>>Realmachine084617 OK,watch 東雲茉樹 at LEVEL 6

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