閑話・聖川正樹の初陣
*この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件とは一切関わりありません。またこの作品は中高生が妄想を書きなぐった程度を出ていないと思われます。
ご注意ください
時は本編より5年ほど遡る。
アメリカ合衆国マサチューセッツ州にあるこの街は歴史ある並みや波止場によって観光客を集める観光都市である。
しかしそれは表の姿で、実際にはこの街は薄暗い怪異が数多く潜んでいる。また夢が現実になると言われており、そこに恐怖ではなく驚異を見出すものも少数だが存在する。さらに、一部の者はこの都市とマーブルヘッドとの異常な類似性を指摘している。
そんな街のとある倉庫の前に警察車両と武装した警官が集まっていた。
『繰り返す!アーリン・メイスン君はすでに包囲されている大人しく投降しなさい!』
拡声器によって倉庫に立てこもっている人物は呼びかけられる。その人物の名は拡声器を持った警官が騒いでいたようにアーリン・メイスン先日ボストンで爆弾テロを試みた男だ。彼は今アサルトライフルと大量の手榴弾を持って倉庫に立てこもっていた。
「イアン警部、ボストン市警より応援のSWATが到着しました。」
ハゲかかった警官に眼鏡をかけた長身の警官が話しかける。
「そうか、分かった。だが突入するのはしばし待ってもらおう。突入するのは彼がどうにも出来なかった時だ。」
「というと……」
眼鏡の男は声を落として話す。
「メイスンは魔術師だというのは半島だったんですね。」
「ああ、そうだ。もし奴が神話生物を召喚していたとしたらチームの連中が精神に傷を負いかねん。おっと、話をしていたら到着したようだな。」
イアン警部の声によりその部下の眼鏡の男が顔を向けると
そこは非常線のすぐ外側に止まった黒塗りのメルセデス・ベンツ E-class station wagonから カソックを着た大柄な東洋人が出てくるところだった。
「誰がくるかと思えば彼か。」
「知っているんですか警部?」
「ああ、留学生としてこっちに着た時に娘を暴漢から守ってくれたからな。名前はマサキ・ヒジリカワだ。」
「……何か揉めてますね。」
「心配ないあらかじめ命令書を持たせているはずだ、あちらもな。」
しばらくして男は一枚の紙を自分を制止した警官に見せて押し通った。そしてイアン警部に気づくと……
「お久しぶりですイアン警部。ここの責任者はどなたでしょうか?」
「私だ。よく着てくれたなマサキ。」
「それが仕事ですから。さてでは出来れば早速資料を貰いたいのですが……」
「ああそうだな、これだ。君ならこれをすぐに理解できるだろう。」
そう言ってイアンは正樹に紙束を渡した。正樹はしばらく黙してその資料に目を通した。そして顔を上げ一言。
「この仕事お任せください。(アーリンは勝ち誇った時タバコを吸うか。)」
「本来なら我々がやらねばならぬ事をありがとう。頼んだぞ。」
正樹はそれに頷き、倉庫の前まで進んで言った。イアン警部は通信機を取り全員に命令を出す。
「今、倉庫の目の前に来た神父は上がこの件のために送って来た男だ。倉庫の内部に通せ。……やはりこう言ったところにも対クトゥルフ神話部隊を用意すべしだな。」
彼の後半の声はすでに通信機から口を話していたために周りには伝わらなかった。
何故か小麦粉と酒類が一緒に保管されている倉庫。その窓は既にほとんど破壊されたのかなくなっていたが天窓を除いて暗幕がかかっていた。その倉庫の扉は一時開け放たれた。
靴の音を響かせながら倉庫の中に入ってしばらく進んだ正樹に複数の銃弾が襲いかかるがいつの間にか半球状に取り囲んでいる紙に防がれた。そこで正樹は立ち止まり声を張り上げる。
「アーリン・メイスン貴様に勝ち目はない!ささっと姿を現せ!」
「やれやれ、そんな大声で呼ばれなくても表して上げますよ。」
そう言って倉庫の物陰から姿を現したのは2メートルはあるであろう引き締まった体をした大男であった。
「では早速、こ」「だれが大人しく出て行くもんか!」
正樹の言葉を遮りアーリンは手に持ったアサルトライフルH&KG41の違法複製モデルを正樹に向けて発砲した。しかしそれは半球状に広がっている紙たちに防がれる。
「無駄だ。それく」「おっと、気づかないと思っていましたか?さっきから被弾した紙を全体の回転に合わせて下げていますよね?」
そのアーリンの発言は正樹の動揺を誘った。それを見たアーリンは細く微笑む。
「やはりそうでしたか。予想が当たっていて良かったですよ。」
「それがどうした?その前にお前を倒せばいいだけだ!」
そう言って正樹はカソックの下のホルダーからSIG SAUER P226を取り出した。そしてアーリンの動きを封じるため彼の足に向けて発砲した。しかしその弾は何事も無く避けられた。
「何処狙っているんですか?そんな弾当たりませんよ。」
正樹はそれを無視して連射する。だがそれもことごとく避けられていった。そしてアーリンが銃の動きを見ずにまるでアニメや漫画のように避けている事に。
(早すぎるだろあいつ。デザイナーベイビーか?いやそれはあり得ない。魔術か?いや違う。誰かが魔術を行使した時の感覚がない。もしや、)
その正樹の心情を見透かしたかのように自慢げにアーリンは銃弾を回避しながらいう。
「多分あなたはが思い当たった事は当たっていますよ。確かにこれは旧支配者の加護です。」
「だと思いましたよ。あなたは不自然なほど早すぎる。」
正樹はそう言いながら距離を取り始めた。
だがそれをアーリンは一瞬で、人間の反応速度を遥かに超える速度で詰めた。
「なっ!ゴハァッ」
アーリンは正樹の懐に入ると強烈な蹴りを浴びせる。その蹴りは正樹の大きな体を軽々と吹き飛ばした。
彼はそのまま滑走して行きスプリンクラーの配管にぶつかって止まる。
「さあ、立ってくださいよ。もう終わりだなんて事はありませんよね?」
「……まさか。それにしても流石だなアンタ。私も素早さにはかなり自信があったが、それ以上だ。(この距離ならばあるいは。)ッ!無い!そんな飛んだ時には握っていた感覚が!」
正樹は先程配管にぶつかった時まで感じていた拳銃を握っていた感触に気付き手を見るとそこには拳銃はなかった。
「もしかしてこれの事ですか?貴方があまりにノロノロしているので奪わせてもらいました。そして……」
アーリンの手には正樹の持っていた拳銃が握られていた。それはアーリンの「フンッ!」という掛け声とともに破壊された。
「フフフ、ヒヒヒヒ」
「壊れましたか?」
急に笑い出した正樹にアーリンは疑念を抱く。何処からとも無く二つの短剣を取り出した。これにはアーリンも驚いた。
「オラァ!」
そして片方を投擲した、その時一緒になって振り回していたもう一本が配管にあたり水が吹き出し正樹を濡らした。
更に投擲したナイフも回避されてしまう。
「おやおや、残念でしたね。吹き出した水で私の注意を誘ってその間に投擲したナイフでブスッと行くと思いましたけど。」
「残念、不正解です。まわりを見て下さい。」
正樹はそういってアーリンに周りを見るようすすめる。彼が正樹から注意をそらさずに周りを見るとそこには空気中に白い粉がかなりの量漂っていた。
「まさか粉塵爆発を!」
「フンッ!」
正樹はそこで短剣を擦るように配管に打ち下ろした。配管からは火打ち石打たれた鋼のように火花が飛び散る。
そしてそれは確かに空気中を漂う小麦粉に着火した。
その反応は一応爆発を起こした。しかしそれは目や耳などを塞げば大したダメージを人間に与えるものでなかった。被害らしき被害といえば酒などの入った箱を倒したくらいだった。
「残念。粉塵爆発で敵を倒そうだなんてフィクションの世界だけですよ。銃弾、無駄にしましたね。」
「クソッが!ぎゃっ!」
アーリンは正樹が手に持っていた短剣を蹴り飛ばす。その時彼の手から嫌な音がなったがアーリンはむしろそれを喜んだ。
「どうしたんですか神父様?手を痛めているようですが私が見てあげましょうか。」
「いらん!」
正樹の蹴りがアーリンに向けて放たれるがそれは容易く受け流された。そしてそのまま足を掴みアーリンは正樹を床に叩きつけた。
「ゴハァッ!(なんて馬鹿力しているんだこいつ。)」
「ほらほら?どうしました?もう終わりかよ。つまらん。」
「まだ終わりじゃ……無い。」
「ああ、そうかよ。ならこれでも喰らえ。」
アーリンの蹴りが再び放たれ正樹は壁に打ち付けられる。
「他愛ない。」
アーリンは懐からタバコを取り出し、火をつけタバコをふかす。
「……良かった。」
「あ?何が良かったんだよ。もしかして俺にかられて感じてたのか?」
「アーリン、君が資料にあるほど頭がきれなくて良かった。」
「何言っているんだお前?ん、この匂いは酒か。ッ!まさか!?」
その瞬間アーリンのタバコの火が一気に燃え上がり周りにも引火を始める。
「貴様!最初からこれを狙っていたのか!?」
「Quod iustum est. Finis est.」(その通りこれが狙いさ。)
「Son of a bitch!」
アーリンは叫びながら火に包まれた。
外では警官たちが大騒ぎになっていた。倉庫の内部でかなりの規模の火災が発生していたから当然だ。
「おい、彼は無事なのか!?」
「内部に入ってないのでわかりませんが、おそらくあの炎の中では」「おい、誰かただ来るぞ!」
その声により一斉に倉庫の出入り口へと向く。そこには大男を担いだ大柄な神父服の男が出てくるところであった。
イアン警部はすぐに彼に駆け寄る。
「大丈夫かマサキくん!?おい、誰か早く救急車を呼べ!」
「……私なら大丈夫です。それよりアーリンをお願いします。彼は重度のやけどを負っています。」
「わ、分かった。それにしても一体何があったんだ聖川神父。」
「マサキのままで構いません。それと内部での話は……後に……してください。」
それだけ言うと正樹は崩れ落ちた。
「おい、救急車をもう一台呼べ!今すぐにだ!」
正樹は周りの喧騒を聞きながら意識を失った。その顔はどこか達成感に満ちたものであった。
彼はその後、倉庫を燃やしたとして処罰こそ免れたものの様々な方面から大目玉をくらう事になるのだがそれはまた別の話である。
頭脳戦ってかっこいいですよね?いつかちゃんとした話を書いてみたいです。




