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学校(後編)

遅れたっつーかなんていうかホント、すいませんでした。

やっぱ自分に二作品同時は向いてないっぽいです。テストとかいろいろあったから放置していて、もう一つ連載の方の企画モノが行き詰って久しぶりに見てみれば100日以上放置。

慌てて書きかけのものを仕上げましたとも。よって出来は微妙です。


ちなみに今回は葵視点です。彰が「セリフ:女、地の文:男」なので、葵は真逆です。

 教室に入り、肩から下げていたバッグを、最後列にある自分の机の横に掛ける。

 一時間目は……LHRロングホームルームだから教科書の用意をしなくてもいいかな。

 一日の日程を確認し、オレは席に着いた。


「いつもより遅いんじゃないか、三好」


 と、右隣から声がかかる。

 彼の名前は大谷おおたに ながる。高校に入ってから知り合った人なんだけど、男子の中では一番話しているかも。

 大谷はかっこいい。顔は整っていて、背も高い。多少人をいじるのが好きなんだけど根は真面目で、髪は染めたり固めたりしていないし、アクセサリー類もまったく付けていない。学生服はきっちり上までボタンを留め、さらには髪の長さまで規定を絶対に越えることは無かったりする。

 まぁそんな訳で大谷は、クラス中の女子人気を二分している内の一人だ。もう一人が自分な所は納得いかないけど、仕方ないのかな。


「ん、ちょっと野暮用だ」


 大谷に生返事を返すと、どこか感心したように、ほう、と頷いた。


「何だよ、その反応?」


「いやいや、その言い方では問題が起こったわけでもなさそうだしな。とすると、朝の用事と言えば誰かの家にでも寄ったのか?」


 うわ。


「例えば、一緒に登校して来たとか……良かったじゃないか、三好。お前、新しい友達でもできたんだろう?」


 うわわ。


「しかしそうだな。もし出来るとするならば、友達よりも男の方が面白い事に――」


「うわわわぁ! 何でお前、そこまで!?」


「おぉ、冗談まで含めて全正解か」


 だみゃしゃれた!? ゆうどゅうじんみょん!?(噛み)


「で、まぁ、そうか。男が出来たのか」


 うんうん、としみじみ頷く大谷。な、なんだろう……目を細めているのにその奥からは差すような眼光が……。

 頷いていた首を止めた大谷は口元をニヤリと歪ませ、こちらに顔を向けてきた。


「よし、紹介しろ」


「全っ力で断る!」


 大谷なんかに知れたら一時間でクラス中に広まってしまうじゃない!

 

「大体、大谷には関係ねぇだろ! テメェ、自分は何の噂もないくせに、人の話に首つっこむんじゃねぇよ!」


 一応全力で威嚇いかくしてみたけど、大谷は軽く笑って肩をすくめるだけだった。


「はは、なぁに、この学校には俺の趣味に合う奴がいないだけさ」


 大谷の女性の好み……ね。そんなの、高校にいるはずが無い。生物学的に不可能だよ。 

 

「ま、俺に彼女が出来たら精一杯いじってくれたまえ」


「いじる前に通報だ!」


 大谷の夢が敵わない事を、心の底から祈る俺だった。



                   ***



 二時間目、社会。

 教壇の上では、きっちりと服装を整えた“見た目だけなら”スパルタ女教師にしか見えない伊吹いぶき先生が、黒板にチョークで「現代の問題」と書き込んでいる。


「はい、皆さんゴールデンウィークは楽しみましたか? 今日は休み明けなので、簡単に頭を慣らしてもらいましょう」


 伊吹先生は何事も淡々と話す人だ。今の言葉も、生徒の顔を見回しながら眉一つ動かさずに聞いていた。

 まぁ、なにはともあれ今日は楽な事をするらしいので一安心だ。俺だって勉強が好きってほどじゃないんだし。


「戦争や飢餓、皆さんには遠い言葉でしょうが、ここ日本でも数百年前は普通にありえた事です。中立宣言さえなければ、今でもそうなっていたかもしれません」


 中立宣言、中学生の頃に習った言葉。

 昔、日本は小さな国の集まりだった。そして、世界中で起きた戦争に、それぞれの小さな力だけで立ち向かおうとした。

 それをいさめたのがその時代の天皇様。日本内で起きた争いをまとめ、日本を一つの国としてまとめる「国会」を造り、そして最後には各国に中立を宣言したのだ。

 立地上、日本は補給に最適だったし、様々な国が入り乱れる状況では誰も中々手を出せない。あえてそのようにする事で日本は戦火をまぬがれ、世界中の知識を吸収した。だからこそ、今の日本は先進国となってここにあるのだ。


「それは確かに素晴らしい手段でありましたが、しかし弊害もありました。一度壊れてしまったものをまとめるならともかく、日本はそれぞれの国の特色を強く残していました」


 だから上手にまとまらなくて、時間が経つほどにそれは浮き彫りになっていった。

 そして、最後――近代には、その仕組みが壊れてしまった、と。


「――という訳で、今の日本は超資本主義とも呼ばれる時代になりました。“国すらも資金で買える”という、一見するといい加減なシステムで日本は動いています」


 今はそういう時代だ。昔は国の特権であった高速道路や警察組織、検定などは金さえあれば(よほど無茶苦茶でない限り)その権利を買い取れる。それまでも県それぞれの仕組みで動いていた日本だからこそ実現したシステムだ。

 確か県内には、一つの市ごと民間企業という、60年ほど前では考えられない事もあったりするのだ。


「まぁ、色々と社会問題も多いのですけれどね。……という訳で、その問題とは例えばどんなものでしょう、三好さん?」


 うわ、いきなり当たっちゃった。少し面倒だけど、椅子を引いて立ち上がる。

 えっと、確か、……ニュースでよく見るのは……。


「うー……国の建物とか公園とか、そんなのを買って、……そこで暮らす人、とか……です、か……?」


 脳の奥底の記憶を引っ張り出す。とは言っても一昨日のニュースだったりするんだけど。

 伊吹先生の方を見ると、彼女はニコリともせずに言った。


「正解です、我が愛しい生徒よ。先生、ハグしてチューしてあげたい気分です」


 これが無ければいい先生だった。そう思う。

 無表情でこんな事を言われると背筋がぞわっとしてしまう。しかも時々実行しようとするから侮れない先生だった。

 

「公共物を運営する人間は公共物だということを考えた上で、キチンと運営しなければなりません。しかし買い取った公共物は純粋な資産とはみなされない為、破産する前に公園などを買い取って合法的にホームレスをする人などが増えていますね」


 本当、あの変態性癖が無ければいい先生なんだけど……。



                 ***


 伊吹先生の授業が終了した。同級生が一人抱きつかれてダウンしてるけど、まあ気にしたら駄目だと思う。

 と、ちょうどその時、南野の朝の言葉を思い出した。


――皆さん、イベントは今日の2時間目から3時間目の間に行いますから、今は邪魔にならないようにしてくださいねー!


 イベント、アキラが何かをやるらしい。男のファンが多いみたいだから、アイドルみたいな事をするのかな?

 ……面白そう。ちょっと――いや、かなり見たい。

 そうなると問題はまず場所だ。解決法を考え――とりあえず、近くの女子(同好会のワッペン付き)に声をかける。


「なぁ、ちょっと」


「は、はひぃ!?」


 オレが声をかけただけでその場でくるっと美しいターン、そのまま胸の前で両手を組み合わせてお祈りのポーズ。すっごく勘弁して欲しい。

 でも仕方ない。この子に聞こう。


「お前らの同好会の男の方さ、なんか今日はイベントに参加するだろ? ホラ、福井の」


「ふぁい! あのあの、屋上で、屋上のほうで、なんか、色々、はい! そうです!」


「ん、あんがと」


 場所は分かった。興奮した様子の彼女に手をあげて屋上に向かう。

 ……と思ったんだけど、なんか目がヤバイ。このままだと地平線の彼方まで追いかけてきそう。

 暴力を振るう訳には行かないし……まぁ、仕方ないよね。

 顔面の神経を総動員して、出来るだけ穏やかに笑ってみせる。そのまま自分の肩ぐらいまでの背の同級生の頭に、軽く手を乗せた。


「今回は助かった。また、よろしく」


 その子は鼻血を噴き出さんばかりの勢いで椅子へと座り込んだ。顔が引きつりそうになるが、ここは我慢。

 さて、屋上に向かおう。




「はいはーい、白線の外側までお下がりクダサイー」


 屋上に足を踏み入れた途端、南野のやる気なさげな声が聞こえてくる。

 声のしたほうに目を向けて様子を見てみると、確かにそれはイベントと言うに相応しいものだった。

 周りにはたくさんの男がいて、中心近くにはマイクを持った南野が立っている。そして真正面、なんだかそれなりに体裁は整った舞台――5センチほど高くなっている足場の上にアキラがなんだかポーズを決めていた。やたらとフリフリした、本来の用途には絶対使わないであろうメイド服を着て。

 吹いた。

 そして壇上のアキラが固まった。


「ひ、ひああああぁぁぁぁ!」


 数瞬後、素っ頓狂な悲鳴を上げて南野の後ろに隠れるアキラ。やばい、可愛い。


「お、おぉ……アキラ、可愛いぞ……」


「み、見ないでええぇぇぇ!」


 と言われても。

 南野の後ろに隠れて首だけ出すアキラはやはり涙目で、大きく開いたスカートとかが南野の体からはみ出している。怯えた感じにウルウルした目と、引きつった口元。力いっぱい服の裾をつかむ手。

 何だろうこれ。南野が極限まで「やる気ありません。ていうか疲れたんで帰っていいすか?」と言う感じの顔をしてさえなければ、ヒーローがヒロイン守ってるシーンみたい。


「あのー……すいませんけど、営業妨害なんでー」


 と、南野に声をかけられた。確かにこの状態じゃ観客も……何だかハッスルしてるー!?


「あ、彰ちゃんの怯えた姿ー!」「萌えー!」「こっち向いてー!」「アアァァァイラアァァァブユウウゥゥゥ!」「ハァハァ……もう我慢できん!」


 阿鼻叫喚と言うか狂喜乱舞というか。

 ちなみに最後の発言者が飛び出したので、後ろ回し蹴りで片付けておいた。


「おー、大盛況。どうする彰? このまま続けるか?」


「中止してー! お願い、お願いです洋太ー!」


「アキラ様ー!」「クッ……男なのにあれほどとは……いや男だからこそ!」「写メ撮るぞ写メ!」「うおおおぉぉぉぉ! 彰ちゃんを手に入れられるならー!」


 最後の発言者が特攻してきたので、とりあえずアッパーでふっ飛ばしておいた。

 しかし騒がしいなぁ……あぁ、でもアキラ可愛いなぁ……むしろアキラ可愛いなあ……すごい可愛いなぁ……。


「ちょ、ま、三好!? なんで貴女までそんな虚ろな目で近づいてくるの!? え、ちょ、や、キャー! 助けて洋太ー!」


「……ま、末永くお幸せに」





本っっっ当、全力で更新遅れましたね。というか、たまたま更新で見かけたご新規さん以外に読んでくれる人はいるんでしょうか?


それで、今後のこの小説、迷ってるんです。どう迷ってるかと言いますと……


1、自分の納得できる物を書くために、いくら時間をかけてでも書く。

2、肩の力を抜いてゆるゆる書く。


この二択です。

前者はおそらく、もう一つの作品が完結するまで更新しないという事態になるでしょう。一個だけでも更新遅れてるんで……。

後者はとりあえず今はテスト期間なのでしばらく更新できませんが、それが終わればチマチマ書くことになるでしょう。


当初は「ラブコメって多いから、ちょっと変わったの書きたいぜ!」なんて思って気負っていましたが、最近は肩の力を抜いて普通のラブコメでもいいかな、なんて思っていたりもします。一応向こうでもラブ(?)コメはやっていますので、そちらとは違う感じに。

前者は当初目指していたラブコメとしては変わった作品、後者は普通に心の赴くまま書くラブコメになるでしょう。


という訳で、もしどちらの方針がいいか助言、またはご希望が頂けるなら感想orメッセージに書いてもらえると嬉しいです。


では、次にこの作品でお目に触れるのがいつになるかは分かりませんが、また気が向いたら軽くのぞいてやって下さい。

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