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私の彼女は狼です

スイマセン、次の更新の目処も立たないのに連載しちゃいました。決心が鈍りそうだったんで。

コレの連載に伴って、9月から連載予定だった小説を中止します。さすがに連載三本も抱えられません。


さて、やりたい事をとにかく詰め込む予定の今作。短編とはかなり雰囲気が変わると思います。

つうか世界観混ぜました。好き放題です。妖怪とか幽霊とか魔法とか法律とか。

ソッチ方面ばかり出す気はありませんけどね、日常以上非日常以下です。

では、プロローグのつもりが本編並になってしまった何かをどうぞ(笑)

 まぁ、とにかく私が狼に食べられそうになっている所で、幕を引いておこう。

 

 おしまい。

 




「アキラアアアァァァ!」


 幕を引いてくれ!

 あ、短編の方を読んでいない皆様にはネタが分からないと思うけどそんなの優しさでスルーって


「キャアアァァァァ!」


 部屋中に嬌声が響く。認めたくはない、断じて認められない。しかしコレは事実。

 それは私こと福井ふくい あきら(♂)の喉から発せられた音波である。

 シャツ+トランクスという非常に男性的な格好をしているにもかかわらず、長い髪やソプラノヴォイス、低身長に女顔と奇跡な比率で、その、なんていうか、私は非常に女性的だ。

 もちろん望んだわけではないし、中身は立派に男の子だ。本屋に行けばグラビア雑誌に目が行き、あまつさえ別の本に挟んでお会計を済ましちゃうお茶目さんである。

 しかし長年にわたる母(服飾店経営)の調教しどうのせいで、表面上はどこに出しても恥ずかしくない女の子にされてしまったのだ!


「ハハハ! 逃げるなよ、アキラァ!」


 私を追いかけてくるのは三好みよし あおい

 目にかかる程度の髪の下に黒曜石のような瞳、笑った顔は“噛み付くような”と表現できるとても勇ましいもので、全体像としては鋭いという言葉がよく似合う。

 私を捕まえようとしているのは、そのようにとてもイケメンな“女の子”である。

 ……私と性別を変えてくれ。


「ちょ、ちょっと待って三好っ! どうして、そんなに、捕まえようとするのよ!」


「逃げるからだろがぁ!」


 逃げたら追うなんて、犬みたいな奴だった。……いや、犬なんかじゃない。

 彼女は狼。気高き狼。

 そうだという事を、私は昨日の出来事で知った。


「うぉっし! 捕まえたー!」


 と、頭の中で誰かに向かって説明し続けながら逃げていたもんだから、アッサリと捕まってしまった。

 後ろからほぼ羽交い絞め状態にされていて、体がとっても密着状態。

 そのまま頬をつんつんと突いてくる


「み、三好! あんまり、くっつかないで……!」


 主に私の理性の問題で。

 こちらとしては頬のつんつんよりも背中のふんわりが気になるわけですが。

 

「いいじゃんいいじゃん、恋人だぜ、オレ達」


 確かに、昨日は三好とそういう話になった。というか昨日会ったばかりだった。

 それがまぁ色々あって、三好が何故か私に惚れて、それでまぁ今と大して変わらない状況に陥って。

 柔らかな感触と、いい匂いと、包容感と、まぁ色々。

 そんな状況で告白を断れるか!? 否! 断じて否!!

 一応は「お試し期間」らしいが、その期間に制限はない。これからどうなることやら。


「で、でも三好……今は危ないの!」


 そうだ。危ないのだ。

 実際、三好は女としてみても十二分に美人、付き合うのにやぶさかではございません。

 確かに色々と早すぎるからもっとじっくり時間をかけてみたいとは思う。しかしそれでも男からの告白ばかり受ける私にとっては願ってもない事態だ。

 でも、これはマズイ。

 家の中でこれはマズイ。


「何が駄目なんだよ? お前の母親には起こしに行くって説明してるし、父親はもう出かけてるだろ?」


 その通り。ザッツライ。

 しかも見られたとしても、母親なら録音機を回し始めるだろうし、父親なら「ついに彰もそんな歳かぁ」なんて微笑んでおいとまするに違いない。

 しかし、そんな二人よりも大きな問題が、この家にはある。


「もう一人いるのよ!」


 私の言葉に応えるように、扉がバーンと開け放たれた。


「アーにい起きろ。朝」


 部屋の外にいるたった今扉を開けたその人物は、内部の惨状を見て固まった。

 それは少女である。

 140ちょっとぐらいの身長に、平時ではその半分ほど――腰程度までの髪を左右に流れるように、ゴムで適当にくくっている。いつもならこれがツインテールなのだが、寝起きなのでこんなもんだろう。

 光を照り返す気の無さそうな真っ黒な瞳は恐ろしいが、見慣れてしまえばチャームポイントにギリギリなるかならないか微妙な所。

 体の起伏は発展途上国だと言っておこう。先進に工業するには年数が足りていないのだ。

 肌はお前は白人かと言いたくなるぐらいに白い。もしかして曽々々祖母ぐらいの血が覚醒遺伝してこうなったんではなかろーか、などと本気で議論したこともある。


「……誰だ、コイツ?」


 後ろから抱きついている三好が間抜けな声を上げる。顔もきょとんとしている事だろう。


「か、カレン……」


 そんな三好を無視して、私は彼女の名を呼ぶ。

 彼女はそのままギッコンバッタン、なんて音が聞こえてきそうなぐらいぎこちない動作で部屋に入り、首を油の切れた人形のようにこちらに向けてきた。

 ヤバイ。三好とは違う意味で怖い。


「アー兄。誰?」


 その人は誰だ、と聞きたいんだろう。いつも言葉足らずで困った従妹いとこである。

 そう、従妹なのだ。母方の妹の娘。私と旧知の女の子。今年で中学一年生。

 五十鈴いすず 可憐かれん、それが彼女の名前。私はカレンと呼んでいる。ちなみに最後が下がるように発音。

 従妹であるはずの彼女が何故この家に居るのかというと、簡単に言っちゃえば修行の為だ。

 彼女は将来、服飾関係の仕事に就くと決めており、その為に我が母のお店「エンジェルファッションHUKUI」(ネーミングセンスと反比例するデザインと一つ一つ手作りハンドメイドという事で、一部の客に根強い人気がある)に住み込みで働きながら母の指導を受けているのだ。


「え、え〜っと、この人は三好 葵っていうの」


「アー兄。違う」


 カクン、と糸が切れたように首を傾げながらカレンは訂正してきた。


「アー兄にとっての誰?」


 私にとっての、という事は人間関係を聞きたいんだろう。それはマズイ。

 カレンは“ある意味で”私に惚れているのだから。


「なぁアキラ。これ、正直に言っていいのか?」


 さすがの狼も呪われたような瞳(チャームポイント)を持つカレンは恐ろしいようで、ヒソヒソとひそめた声で耳打ちしてきた。


「え、えぇ……さすがに彼女なんて言った日には、とても惨たらしく*されるわ……」


「伏せると余計に不吉だな……でも、なんでそこまでやられんだよ?」


「カレンはある意味私に惚れ「オレはアキラの彼女だ!」


 セリフかぶせられた! ガッデムそれは禁句だったか!

 私を胸に抱いたまま勇ましく立ち上がる三好を見て、カレンは肌と相まって血のように赤く見える唇(チャームポイント)の端を、不機嫌そうに下に歪めた。

 次の瞬間、早業が巻き起こる。

 カレンが服の下に仕込んだ裁縫箱(ランボー仕様)から巻尺(何故か本体は鋼鉄製)を取り出し、私の左腕に巻きつけた。

 そのまま流れるような動作でまち針を両手の指の間にセット。


「針山みたいにしてやる」


 なんかバトル物だと決め台詞にもなりそうな言葉と共に投擲とうてき。それらは的確に三好の頭へ。


「ぅ――おっ!」


 しかし三好もさすが武道家の娘、驚異的な反射神経でマト○ックス的に避ける。ちなみに位置的な問題で私の前髪が何本か散った。

 そのまままち針は背後の壁へズドンと刺さる、根元まで。何で出来ているんだろう、ちょーごーきんか!?


「甘い」


 カレンの声が聞こえたのでそちらを見ると、ちょうど巻尺を巻こうとしている所だった。

 私の体が三好の手から離れ、鮮やかに宙を舞う。ホント、カレンの裁縫道具って何で出来てるんだろ。

 そのまま私の体はカレンの下へ。さらに手際よくゴムひもを使い、後ろ手に縛られる私。


「アキラッ!」


 三好が私の名前を呼んで駆け寄ろうとした。あぁ、何か感動。


「動くな」


 と、カレンが思いっきり悪役の台詞を吐いて私の腕に裁縫針を押し付けた。

 その行動に、さすがの三好も足を止める。


「一歩でも動く。するとまつり縫い」


 何ィッ! 私の皮膚が二度縫われてからすくわれて芸術的模様を醸し出すとでもいうのかッ!


「ちなみに。貴女は千鳥縫い」


 そりゃまた手間のかかる縫い方だな!

 そんな風に余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で見上げる(悲しいぐらいの身長差です)カレンに、三好はそれ以上の余裕を持って応えた。


 「ふっ、笑止。オレはそんな針に当たるほどヤワじゃねぇ……それに、アキラはきっとなんだかもしかしたら多分奇跡を起こすんだよ!」


 そんな低い確率に賭けないで下さい。貴女は最後の小遣いで宝くじを買った哀愁漂うオッサンですか。

 しかしカレンは揺らがない。というかあれで動揺したらカレンの頭を心配する。

 

「なら……」


 そのままカレンは私を後ろから捕縛し、片手を私の下腹部にあてがった。

 ……ナニコレ? 急にナニコレ?


「少しでも動く。握り潰す」


「やめて! 私、本格的にお婿にいけないッ!」

 

 ヤバイ……カレンは言えばやる子だ。三好が動いてしまえば、きっと私の男性シンボルは無へと帰す事だろう。

 嗚呼、ハーレムラブコメを読んで「羨ましいわ」なんて呟いていた私よ。永遠にサヨウナラ。

 三好を見ると、さすがに焦っているのか、目を泳がせながら思案するように目を細めている。

 しばらくして、何かを思いついたのか三好は口を一杯に吊り上げる噛み付くような笑顔を見せ、声を上げた。


「一つ聞く。お前、保健の授業は得意な方か?」


 あ、なんとなく言いたい事察しちゃいました。ていうか中一にそんな話題振らないで下さい。


「……? 保体と家庭だけは優秀」


 そんな事実知りたくなかったよ、我が妹分。

 ていうか、可憐は馬鹿そんなことはどうでもいいとして、今重要なのは三好の言いたい事だ。

 しかしその事を三好が知るはずもなく、彼女は自信満々に語りだした。


「それなら分かるだろ? それを潰すと「残念ながら。私に被害はない」


 そう、カレンにとって私のアレは重要ではない。

 なぜなら彼女は……


「こんな邪魔なもの。いつかすり替えてやる」


 同性愛者なのだから!

 ……うん。まぁ、ね。私がカレンを拒むのは歳の差じゃないんだよ。だって下は7歳から上40歳までオールレンジだし、私。

 原因はコレ。私を本当に女へと堕とそうとしている事。

 彼女は私を性格から容姿まで全てを愛している、らしい。しかし胸と下半身が気に喰わない、らしい。

 同棲しているにも関わらず間違いが起きていないのはこういう理由だ。半分冗談で「襲う」発言をした時なんか、真顔でハサミを持ち出して「去勢」なんて言われた。あの日の思い出プライスレス。

 

「……今の言葉の通り、カレンはレズだから通じないわ」


 三好に作戦の失敗を伝えると、彼女は突然うつむいた。

 そしてそのまま肩を震わせて泣き――いや、これは……怒っている、のか?


「馬鹿野郎!」


 私の予想的中、三好は怒っていた。今にも噛み殺しそうな表情で、カレンを睨む。

 そして一言、怒号。


「男のクセに可愛いのがアキラの良い所だろうがッ!!」


 …………。

 沈黙するしかないわけである。


「その証拠にアキラの非公式FCファンクラブのメンバーの大半が、投票でそう答えている!」


 あぁもう人の現在進行形トラウマを的確に乱れ突きするな三好は! 今、無性に君が憎いッ!

 そんな三好に負けじと、カレンも声を張り上げる。


「うるさい! アー兄と私で。お揃い。ゴスロリドレスを着るんだ!」


 最後に「もちろん。白と黒。色違い」なんて言い残してくれやがった。

 慣れているはずの女扱いに心がジクジクと痛む。慣れても痛いものは痛いのだ。

 

「あなた達は好き勝手言って……私は! 男だって言ってるでしょ!!」


「あ、アキラがキレたー!」


「危ない。あんな見た目でも、腕力は男並」


 私が理性を失う前、最後に聞いたのは本棚から本が落ちる音だった。


  

                ***



 こうしてゴールデンウィーク最後の日は過ぎてゆく。

 きっとあの美しき狼に関わった時から、私の日常は決まっていたのだろう。

 三好葵ウルフと、福井彰ガールと。

 そして願わくば、たくさんの友人達と。

 この日常以上非日常以下を、楽しく過ごせますように。 





ヤンデレ+レズ=ヤンデレズ……なんか言ってみたかっただけです。ていうか普通に読めるように調整したらヤンデレじゃなく……難しいです。


とにかく目指したいのは

・ハーレムじゃないラブコメ、主人公以外もラブコメ

・エロ分強化、ただし不快でない程度

・登場キャラの悩みとか

こんな感じです。



【ここからはオマケのコーナー、暇な方だけ見てください】

今回連載するに当たり、タイトルはかなり悩みました。一日ぐらいですけど(笑)

とりあえず初めは元のタイトルを崩さないようにして


・続・私の彼女は狼です

・私の彼女は狼です2

・私の彼女は狼です【連載バージョン】


なんだか目新しさがないなぁ、と思い色々と変えてみました。


・私の彼女は狼ですツヴァイ


明らかに小説家になろう某メイドさんコメディをパクっています、駄目ですね。


・私の彼女は狼ですウーノ


そういえば2を外国語にする意味はどこにあったのでしょう? HAHAHA、馬鹿だなぁ、コニ・タンは。

という訳で路線変更です。語感に「私の彼女は狼です」を残しつつもまったく新しいタイトルで攻めてみます。


・それでも世界は回るのです

・私と彼女の学園です

・狼少女と遊ぶのです


微妙ですね。一番上なんか怪しい宗教みたいです。

狼少女は狼少年みたいだし……と行き詰っていた所で、2を変えた事を思い出しました。

そうだよ、狼を変えてはいけない理由がどこにある! ってな感じで考えたタイトルが


・ウルフでガールな毎日です


元に語感も似てるし、自分のネーミングセンスではここらがせいぜいだと思うんです。

しかも略せるんですよ! 略してウルガルですよ!(どうでもいい)


では、こんな馬鹿なオマケに付き合った下さった皆様には感謝致します。飛ばしてここに行き着いたあなたにも感謝致します。

まだ全然一段落ついていない状況で開始したので、次の更新がいつになるかは分かりませんが、気長に待っていてくれると嬉しいです。

では、ここらでおいとまさせて頂きます。

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