表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

嫉妬と憧れと。

翌朝、朝食が済んだ頃に佐田はまた見舞いに現れた。結がびっくりしていると持参してきた花瓶に昨夜のブーケを、入れ替える。

「迷惑かけたのは私なんだし、そんな風に気を遣わないでください。却って申し訳ないです。」

「気なんて遣ってません。僕が来たくて来てるんです。」

「え…?」

「何でもないです。お大事になさってください。では、行ってきます。」

「はい…。」

佐田はお辞儀をして、出ていった。「行ってきます」ということは、そのまま仕事に向かったのだろう。


夕方になると、近くに住む結の母が瑠花を連れてやってきた。瑠花は、おばあちゃんと手をつないでご機嫌だ。

「お母さん、ごめんね。」

「そんなこと、いいから。大丈夫なの?」

「しばらく検査ばかりみたい。家の方、時々でいいから見に行ってくれる?」

「大丈夫よ。ゆっくり休みなさい。瑠花ちゃん、今日は何食べたい?」

「んー。ハンバーグ!」

「じゃあ、お買い物行こうか。」

「うん!ママ、またね。」

瑠花が手を振る。


瑠花と母が手をつないで帰ってから数時間後に恭志がやってきた。

「お義母さんが来てくれたから助かったよ。…この花は?お義母さんが?」

佐田が持って来た花を指さす。

「昨日のショップの店員さんが持ってきてくれたの。」

「ふーん。店員さんも大変だな…。」

「こんばんはー。」

軽やかなノックの音とともに佐田が現れた。恭志を見て、一瞬ためらった。

「どうも。」

恭志が会釈をすると、佐田も会釈をする。当然ながら、なんともいえない空気が漂う。

「…昨日、付き添ってくれていた店員さんですよね?」

「はい。」

「家内がご迷惑をおかけして、申し訳ありません。」

「いえ、とんでもないです。」

「ショップでもお世話になっているみたいですね。」

「はい。昨日も娘さんのワンピースを…。」

「そうでしたか。結、気にいるものがあったのか?」

恭志が結に問いかける。

「あったよ。例の私のとお揃いの。お取り置きしてくれてるの。」

「そうですか。では、近いうちに受け取りに伺います。」

「はい。お待ちしております。」

佐田が頭を下げる。

「もう消灯なので、帰りましょう。駐車場まで一緒に行きませんか?」

「はい。」

佐田は、今度は結に会釈をして、恭志と共に病室を出ていった。


…こいつはただの好青年か、それとも…?

駐車場までのわずかな時間に恭志は探りを入れることにした。

あれは店で無理なことを言ったりしていませんか?」

「いえ、とんでもないです。センスが良くて、勉強になります。ステキな奥様ですね。」

「そうですか。」

…親しいのか?

「どのくらいの頻度で店に行っていますか?」

「自分、異動してきて1か月なのでよく知らないんですが、覚えているのは3回か4回です。」

…親しいというわけでもなさそうだな。しかし若僧に心配するとは。俺もどうかしているな。

歩いているうちに駐車場に着き、2人は別れた。


「ご主人、大人の風格だなあ。」

独り言を言いながら車に乗り込んだ佐田だった。最初は気まずかったが、感じの良い恭志に憧れのような気持ちすら抱いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしくお願いします。☆小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ