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他人の空似。

「そうだ。服、見ようっと。」

結は、ショッピングモールでの買い物のついでに、服を見ることにした。店先の雰囲気を見ては、ちらっと覗いてみたり、みなかったり。

何軒目かのショップに足を踏み入れた時の事。視線を感じて顔を上げ、ドキッとした。視線の先で微笑んでいたのは、ずっと昔の片想いの相手、神田雄一郎ににそっくりな男性ひとだったから。

結は、神田雄一郎に告白したが、あっさりふられているので、神田が結に微笑みかけるということは考えがたい。なのでなおさら驚いた。

…あー、びっくりした。

どうやら店員らしい、神田風の男性に会釈だけして、視線をそらすが、まだドキドキしている。

「いらっしゃいませ。どのような服をお探しですか?」

声にドキッとして振り返ると、先ほどの神田風の店員が、結の斜め後ろに立っている。

…ドキッとする声って、そんなにない気がする。それにしても、声もルックスもステキな男性ひとだなあ。

思わず見つめてしまう結。

「お客様…?」

「あ…。か、考えているところです!」

“神田風”の問いにハッとして返事をして、カットソーを手にとってみるが、何も視界に入らない。そのくらい結はドキドキしていた。

「何かありましたら、声をかけてくださいね。」

「は、はいっ。ありがとうございます。」

…聴けば聴くほどドキドキする声だなあ。

鏡の前でワンピースを体に当ててみても、鏡の向こうの自分すら視界に入らない。つい、“神田風”に目が行ってしまうので、怪しまれないうちに、店を後にすることにした。

「ありがとうございました。またいらしてくださいね。」

…ええ、ええ、もちろんですとも。

にやけてしまうのを、なんとか笑顔に整えて、店を出る。


…こんなにドキドキしたのは、何年ぶりだろう?新婚以来かもしれない。ダメダメ!こんなことでドキドキするなんて!


「結?何やってんの?」

“神田風”の顔や声を思い出しては、ムフフとしては、打ち消しているところに肩を叩かれてハッとする。

OL時代の友人、遥がのぞき込むように結を見ていた。遥とは家が近いので時々、ランチや買い物に行く仲だ。

「あ…。遥じゃん。」

「どうしたの?一人でニヤニヤしたり首をふったり、頬に手を当てたり、すごく変よ?」

「そんなことしてた?」

…恥ずかし~…。

「してた!アンタ、黙っていれば、いい女なんだからさ、気をつけなよ。」

遥に褒められてるともけなされてるともつかないことを言われて苦笑してしまう。

「まだニヤニヤしてるよ。何かあったの?」

「何もないよ~。」

と言いつつ、今度は自分でもにやついているのがわかる。

 「結~。何があったの?教えてよ~。」

「何もないってば!ウフフフフ。」

2人の元気な笑い声が響く中、別のところで独り言を言う人物がいた。


「びっくりした…。そっくりだ…。」

独り言の主はカジュアルショップ店員で“神田風”こと、佐田勇人さだ ゆうと28歳。商品の整理をしながら、記憶を辿っていた。

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