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部活のプリントについて桃城くんと話していると周りが少し賑やかになった。
「桃華ーお待たせしました!帰るよー?」
光が迎えにきたみたい。
なるほど……女の子達の声で賑やかになったのか。
光も攻略対象者であるわけで言わずもがな美形だ。
中でも彼は優しい雰囲気と笑顔が周囲を惹きつける。
光は桃城くんとは違うタイプの親しみやすさを装備している。
だから万人受けするというか誰からも好かれる。
美形って近寄りがたいからね。
「……光、お迎えありがとうございます」
周囲の視線が痛い。
カバンの口を閉めて席を立つ。
「では桃城くん、また明日お話してください。さような……」
「あれ桃華の彼氏か?」
私の言葉を遮りましたね?
「……はい?あれとは……光のことですか?」
「ドアのとこの子」
「光ですね。幼なじみです、私に彼氏はいません」
私たちの会話を聞いていたクラスの子達がまたザワザワしている。
どこも人という生き物は噂が好きだと決まっているってことか。
「幼なじみかー!俺も一緒に行って良いか?」
「どうぞ」
ドアのとこの子は会話の間も待ってくれていた。
「私こそお待たせしました」
「うん、大丈夫だよ」
光が視線で後ろの桃城くんのことを問う。
「こちらは桃城大樹くんです。そしてこちらは久東光です」
2人に紹介する。
「桃城くんかーよろしくね?」
「光!大樹でいいぜ?よろしくな!」
「うん、大樹よろしくね」
2人とも仲良くなったみたいだね。
うん、良かった。
教室を出て昇降口までの道すがら部活のことを光に話す。
光もどこかには所属したいらしい。
そして桃城くんはやっぱり野球部らしい。
昇降口で靴を出して外へ出る。
運動部の活動が外に多いのはもちろんだけど、屋内活動の文化部も一度外へ出ないといけない。
部室棟が別にあるからだ。
体育館も同様に、理科室や家庭科室のような特別教室の類も別棟だ。
教室移動が手間だと思うけどなぜこんな造りなのだろう。
「俺は今日から部活に参加することになってるからここからは別行動だな!」
「そうなのですか?では部活動頑張ってください、さようなら」
「大樹頑張ってね!また明日」
「2人ともサンキュー!またな!」
そういえば桃城くんは才能ある野球選手で高校の時にはプロからオファーが多数来るようになるんだったか……
運動の才能に恵まれているとかなんとか。
桃城くんを運動場へ見送って部活棟へ歩く。
「私は文化部にいくつもりですが……光はどうするのですか?」
「ん?僕はそうだなぁ……今日は文化部を見学しようかな」
「私に合わせているのでしたら自分のお好きなところを見てきてくださいね」
光は過保護なことを抜きにしても優しいから無理をしているときがある。
一応、問えば嘘はつかないから自分のやりたいことをしてくれる、と思う。
「大丈夫、僕は文化部と運動部で迷っているから文化部も見て回りたいんだ」
「そう、ですか?では一緒に回ってくれますか?」
「もちろんそのつもりだよ?」
笑顔で答えてくれた。
話している間に部室棟の前につく。
当たり前だけど上級生の姿も多くみられる。
ちょっと……緊張してきた。
「んー君たち新入生やんな?」
光と声のしたほうに視線を向けると得体のしれないものを抱えた先輩がいた。
「あ、はい」
光が返事を返したのでそれに合わせて私も頷きを返す。
と、見るからに怪しい先輩が目を輝かせたのがわかった。
嫌な予感がする。
「うちの部活見ていかへん?」
笑顔で言ってくれてもこれは拒否権なんてないのだろう。
「わかりました、光いいですか?」
「桃華がいいならいいよ」
光は苦笑ですが彼もここは断れないと観念しているみたいだしいいかな。
「ほな案内しますわお2人さん」
怪しさ満点の笑顔ですね先輩。
考えないようにしてたけど………
この人も攻略対象だと思う。
一周目で出てくる対象者ではないし、遭遇率の低いキャラではあるけど。
まだ決まったわけではないけど、この人がもし例の人なら相当な変人だ。
これは……フラグが立ったかな。
入部フラグ……ってとこか。