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職業レポートの課題をこなすべくお母様に申し出たところ、お友達と一緒にお手伝いをすることになりまして、今日はその当日。
水無月家夏の一大イベントこと、夏祭りが行われます!
祭りが始まるのは夕方からなので今日の午前中はお手伝いしてくださるご友人方をまた我が家にご招待して前回作らせていただいた浴衣を着つけていきますよー
もちろん私も浴衣を着て、準備万端です。
組の衆もいつもはスーツのところを今日は浴衣にそろいの半被を着て屋台に警備に花火の打ち上げ準備にと祭りの準備に走り回っている。お兄様はいつぞやのご友人と夕刻にはお祭りに顔を出されるらしいし、お母様やお父様、おじい様も花火の時間には祭りに顔を出すとおっしゃられていた。毎年の行事ながらこの祭りの季節は小さなころから誇らしい。だって祭りは私の家族たちが催していて一家そろって楽しく一日を過ごせるのなんて今日ぐらいだし…町の人々が楽しそうにしていてこの祭りを毎年楽しみにしてくださっている。とても誇らしくてうれしい。
さて、今年はただ祭りを楽しむだけにとどまらず、運営のお手伝いをするのだから昨年とはまた違う一日を過ごせるのだろう。とっても楽しみだ。
光達お友達諸君はまだ我が家で準備中だが私は入れ違いで祭りの会場に来た。浴衣は普段から来ているから長い髪をいつもより手の込んだまとめ髪にして半被を羽織ったら私の準備は終わってしまうからね。
「お嬢!半被がお似合いです!」
「浴衣も新調されたんすねぇ」
「や~別嬪さんだ!今年もお嬢の周りには目を光らせねぇといけねえな」
「みんなありがとう、今年は私もお手伝いするからよろしくね」
「「よろしくお願いしあっす!!!」」
提灯の設置やら屋台の組み立てやらと忙しなく動くお兄さんたちに声をかけられ返しながら祭りの終着点である高台の神社に向かう。階段を上がり境内を進めば見下ろす町が祭りに彩られていく様子がよく見えた。とてもわくわくする。あの提灯に灯がともればまた美しい光景になるのよね!
境内の脇にある神主さんの詰め所は祭り本部として貸していただいている。お母様や組の女性陣のほとんどはここにいる。ちなみにお父様やおじい様は会場のあちらこちらで指示を出しながら走り回っていることだろう。私のお手伝いはここでお母様やお姉さん達のお手伝いをすること。お茶を出したりお客様とお話したり毎年差し入れをもって応援に来てくださるご近所の人にお礼を言ったりと私もなかなか忙しく過ごすことになった。
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「桃華ーそろそろ祭りが始まるからお友達をここに呼んでらっしゃい」
「わかりました!」
お昼前からここに来てもうそんな時間だったのね。
お友達の皆さんは着つけられてからは若い衆に交じって力仕事のお手伝いやら何やらをやらされてたみたいです。我が母ながら容赦なく使ってましたから。前払いとして浴衣を仕立ててプレゼントしたんですかね?
本部からでて近くにいた組員に彼らの居場所を聞けばそれぞれどこにいるのか教えてくれたので、迎えに行くことにする。町全体で祭りの準備が行われているとはいえ彼らも貴族のご子息ですからね、警備の面からもこの神社から近い場所で作業をしていたみたいだ。光の姿が見えてるし。浴衣姿は一年ぶりかな今年もイケメンですね。浴衣がお似合いです。
「光!お疲れ様ですお手伝いありがとうございます」
「桃華もお疲れ様、おしまい?」
「はい!皆さんを迎えに来ました」
「わかった僕は大樹達を呼んでくるから輝石達のほういい?」
「ありがとうございます、本部までお願いしますね」
桃城君たちは境内にはいないみたいですからね階段を往復させてしまって申し訳ない。
光の背を見送り松宮様と睦峰様の姿を探しつつ賑わってきた境内を歩く。半被を見た市民の方々から今年もありがとうと、感謝の声をかけられることもあってこのお祭りが愛されていることがわかった。っと、あれは松宮様と睦峰様はっけん。
「お二方!お疲れ様ですお手伝いありがとうございます」
「お疲れ様です、浴衣姿もお美しいですね」
「………お疲れ様…浴衣……ありがと」
「お二人とも浴衣と半被素敵ですね、本部に来ていただけますかそれで本日のお仕事はおしまいです」
「わかったよでは本部に向かいましょうか」
二人を本部に案内しつつすれ違う人々と言葉を交わしつつ歩いていく。
「水無月嬢は人気者ですねぇ」
「幼いころから毎年来てますから皆さん親切にしてくださるんですよ」
「(それだけが理由ではないと思いますが…)いいですね、こんな風に地域のお祭りに参加するのは初めてですよ」
「……人がたくさん」
「よろしければこのまま楽しんでいってくださいね」
ここなら半被のお兄さんたちが警備もかねてくれますし何より悪いことをする人はさっさとつまみ出されますから治安は良いんですよ夜祭でも。
さて、本部につきましたね。




