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一夜明け、我が家には光と睦峰様、桃城くんそれから松宮様と赤城様がいらしています。断られるかと思ったんですけどね意外と皆さんお暇なんですね。
さて、突然の呼び出しにも快く我が家にお越しくださったご友人方と机を囲んでいるわけですが……何というか不思議空間が出来上がっておりますよ。
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私の友人がやってくると張りきった我が家のお兄さん方は今日も張り切ってお出迎えの体制に入りまして、テスト期間に我が家に通っていた二人は慣れた様子で今日も花道を抜けていましたが……後の三人は初めて見ましたもんねそりゃ引きますよね~桃城くんが異例だということを忘れていましたよ。
メイドさんのお出迎えが普通な松宮様や赤城様にはインパクトが強すぎたみたいで完全に硬直してましたし、睦峰様は花道にこそ反応は示さなかったものの婚約者であることに気付いたお兄さん方に絡まれかけ、私がそれを散らしつつ部屋まで向かう途中におじい様と遭遇して結局絡まれ……ここまでたどり着くのが大変だったんですよ。
私と睦峰様は疲れてぐったりだし、桃城くんはおやつを取りにいなくなり、松宮様は我が家の純和風庭園を眺めながら光とここ最近の世間話で盛り上がり、赤城様は未だ衝撃さめやらぬ様子でぼんやりと掛け軸の虎と見つめ合っている。
「モモーおばちゃん達がお菓子いっぱいくれたー」
「お姉さんたち最近は桃城くんのことお気に入りですもんね」
「大樹のコミュニケーション能力はほんとにすごいよね」
いつも通りお盆に乗せたおやつとは別に紙袋に入ったお菓子たちは桃城くん個人へのおやつですね。毎回大量に持ち帰らせてしまって申し訳ない。
私と睦峰様がお菓子を摂取して疲労から回復しまして赤城様が桃城くんにつつかれ意識を取り戻したところでお付きと共にお母様が見えました。
「あら~桃華のお友達はイケメン揃いねぇ」
「沙耶さんお久しぶりです」
「光くんも大きくなったわね~」
光からはじまりそれぞれが挨拶を交わしたところでお母様から〝我が家の夏の一大イベント”についてのお話がはじまった。
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「モモのお母さんすげー美人だな!」
「沙耶さん相変わらず若いよね」
「…水無月さんに似てる」
「高校生の子供がいるようには見えませんね」
「あぁ綺麗だな」
良かったですねお母様、赤城様まで素直に褒めてますよ流石です。
我が家のお仕事のお手伝いをすることになった皆さんに挨拶と説明の後お仕事に戻られたお母様に心の中で話しかけ、ワイワイと盛り上がる男士諸君を見つつお茶をする私はおやつタイムです。
「お嬢!あちらの準備が整いやした」
「ご友人方をご案内してもいいですかぃ?」
と、今日我が家に招いた二つ目の理由が果たされそうですね。
「皆さんをご案内してあげて?皆様うちの者が案内する部屋に移動していただけますか?」
「おー了解あ!鉄さーん今日もスーツが決まってますね!」
「大樹坊ちゃんこそ今日もイケメンっすよ!」
「「……?」」
キャッキャとじゃれながら桃城くんは先に行ってしまいましたね。
残りの皆さんが首を傾げてついて行けてないうえおいてかれてますし。
これは私が案内しましょうかね。
「別室に針子を呼んでいますのでお仕事の時に着ていただく着物を仕立てさせてほしいのです」
「だから水無月嬢は呼ばれなかったのですね」
「桃城は何なんだ犬か?」
「……龍雅…失礼」
「犬って…ふふふっ」
赤城様の発言が光のツボにはまったみたいで部屋につくまで光の肩が震えていたことをお知らせします。
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それから皆さんの採寸が終わるまで元の部屋で本を片手に時間をつぶし、桃城くん以外を置いていってしまったことを詫びに来た鉄さんを許し、ついでに私もと採寸を済ませた。
さて、皆さんに仕立てる衣装はどんなものになるのか楽しみですね。




