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「で、大樹はどうして一問も課題に手を付けてないのかな?」

「うぐ……ごめんって光!!!部活があって!!!」

「……言い訳無用」

「ぐぅ」


「おー今日は賑やかやな~」


夏休みも半ば、場所は私たちの部活『緑化委員会(仮)』の部室。

ごきげんよう水無月桃華です。

夏目様のお家にお呼ばれされてからしばらく、あれ以来何もなく平和に過ごしております。

部屋の中には黄金先輩と光、桃城くん、それから睦峰様がいる。

なぜ桃城くんもここにいるのか、それは彼らの部活が午前練習だということを聞き昨日のうちにお昼を食べてから課題をする約束をしていたからだ。


だからそれぞれ課題を持ち寄って取り組んでいたのだけど、テキストの一ページ目を開いた桃城くんに光が待ったをかけたわけだ。


桃城くんが止める間もなく、彼の課題たちは全て光のチェックを受け、冒頭に戻る。


ちなみに私は絵や自由研究を除くテキストの課題は全て終わっている。

警備の面から易々外へ遊びに出るわけにもいかず、送迎の車やお付きを伴って何度も友人の家に行くのも億劫になる。

各家が子息の友人や親を招いてのパーティーを催したりしているみたいだけど、我が家からはお母様かお兄様が出ているため私は基本的に参加していないのもあってとにかく暇だった。

もちろん私個人に招待状が届くこともある。

それらに関しては(学校での騒動もあり)名前はもちろん顔も知っていて何度か会話を交わしたことのある人に限って参加するようにしている。

前回の『夏目クルス』嬢のような場合は別として、だけど。

ま、そんなことはともかくだ。


私は敷物の上に直接腰をおろして画板を抱えつつ床に画材を広げて美術の課題を片づけている真っ最中なのだ。

床に座ることに関しては各所からぶつくさ言われたけど机の上に広げては邪魔だろうし何より狭い。

ここでやらなければいいことだろうけどそれはそれで本人たちから許可が下りなかった。

と、いうわけで敷物を用いることで折れてもらい今に至る。


まったく、本人が気にしないと言っているのだから床に座るくらい良いでしょう?

流石に人目のあるところではやらないし。

そもそも床と言っても敷物がひいてあるのだから。


「モモーへるぷー」

「無理です、すみません」

「即答!!まぁそうだよなー…」


桃城くんの反応としてはがっくり、という表現がぴったりでしょう。


「大樹、まだ数学と理科と英語もあるんだからね?」

「はーい」


向こうも大変そうだ。

光は初日に課題を終わらせてしまっているけど、

睦峰様は自分の課題と並行して桃城くんのテキストの答え合わせをしているみたいだし。


黄金先輩は勉強は一人で行う派らしい。

部室にいたのは一瞬でじょうろ片手に校内を周りに行った。

(ちなみに最近はマンボウのような生物(?)を模したじょうろを使っている。)



それからしばらく。

黙々ととは言えないもののそれぞれに課題を進ませる時間が続きまして。


一足早く課題が終わった睦峰様は私の横に座り込んでいる。

色付けのすすむ美術課題を横から観察されているのは少々やりづらいけど静かに見ているだけなのでそのままにしている。


「……それは…庭の?」

「はい、動物たちの絵です」


美術の課題は風景画を描くというもの。

私が選んだのは最近の癒しスポットガゼボのあるあのお庭ですね。


「…………きれいな絵」

「あ…………ありがとうございます」


睦峰様が絵の具の乾いていた羊の部分を撫でながらほほ笑んだ。

お綺麗な顔だこと……。


「……夜会、水無月さん…どうするの?」


突然の話題提供に心の中のみで驚いた。

顔を合わせた時から何やら言いたげな視線を感じていたけど、てっきり真っ黒に日焼けした桃城くんに引いているんだと思っていたよ。


夜会といえばアレの事だろう。


この学園の行事の一つ『月の宴』中高大全ての生徒が参加する疑似お夜会イベントだ。

ゲーム上では『主人公』が物語の中間でエンドを向かえる相手を決定するイベントだったりする。

こつこつ上げた好感度によって夜会のパートナーとして参加することを申し込まれるのだ。

何人も同時に好感度を上げていけたら複数人からのお誘いになるし、狙いすぎて程々の好感度しかなかった場合は誰からも誘われないという結果になる。

その場合は一人で夜会に参加することになり、『赤城龍雅』にべったりな『水無月桃華』に「庶民が場違いなところに出てくるからよ壁の花にもなれない雑草さん?」と散々に言われることになる。

この場合は最後まで進めても誰とも結ばれない普通に卒業エンドになる。


高等部ともなれば夜会に男女のペアで行くことはお貴族家系の女子としては当然の事。

むしろ連れの男がいないということはどの家からも婚約の申し込みがない売れ残り扱いになる。

今後の学園生活にダイレクトアタックになるわけだ。



と、そんなことはさておき。

私と睦峰様は婚約関係にあるわけだし、夜会に参加するのなら2人揃っていくことになるからどうするのかってことを聞きたいのだろうね。



「体育とマナーの実習点になると聞きました、睦峰様がよろしければ参加したいです」


私、体育の実技はあまり得意ではないので稼げるところで稼ぎたいです。











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